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山椒の実

Category: SF

マジック・キングダムで落ちぶれて (コリィ・ドクトロウ)

不老不死の世の中におけるホーンテッドマンションの話…どうなんだこれは。技術によって人間が変わるところと、変わらないところがあるんだという感じなんだろうけど、不老不死でそれ気にする? とも思うし、気にする人もいるんだろう、とも思う。

自分はあっさり描かれた前妻のパーソナリティの方がスッキリと納得行くものに思えたなー。やっぱ不老不死ってのはああいう、超越感がないとね! と。

宇宙へ (メアリ・ロビネット・コワル)

歴史改変SF。第2次大戦直後の米国近海に巨大隕石が落ちたと。爆発と津波の被害の末に大量に海水が蒸発し、気候変動により、いずれ地球には人類が住めなくなると判明、必死の宇宙開発が始まる。

女性/人種差別、ナチスに協力していた科学者とユダヤ人…といった、我々が経験してきた過去と、隕石や宇宙開発といった架空が入り混じり、物語が進む。まあちょっと途中からダレた感があるなー。レディ・アストロノートというシリーズものの前日譚(?)のような位置付けの小説だったらしい。地球脱出後の移住先については特に触れられていないが、火星だよね? 違うのかな?? この本自体は月面基地を作り始めるところまでで終わったが。

チェコSF短編小説集 (ヤロスラフ オルシャ Jr. 編)

チェコSFという、日本では珍種に属するジャンルの短編集。よく出版したなこんなの…

いきなりショートショートみたいな感じのもので、これが11本だけ? 解説ばっかだったらどうしよう…という不安感も持ちつつ読み進めることに。いわゆる政治寓話みたいなのが多いですね。P.K.ディックで言えば「まだ人間じゃない」みたいなノリね。現在と地続き感をつけたディストピアSF? 好きでSF書いてるんじゃないのかもしれないな、と謎の感想を持った。

諸葛孔明対卑弥呼 (町井登志夫)

例の「爆撃聖徳太子」の人の出世作(?)。同時代人が戦う。日本人にとっては夢の対決。躍動感がすごい。SF要素が強いかな。SF的な考証がなかなか楽しい。なるほどー、そういう解釈ならありうるなー! みたいな。

というわけで、かなりスペクタクルに楽しめた本だった。こういう趣の物語って、いろいろあるよね。源義経=ジンギスカン説とかさ。そういや長嶋茂雄=源義経=ジンギスカンだったという時代考証放棄の凄いやつも、若い頃に読んだことがあったなー。歴史SFはこういうのだから。

われらはレギオン (デニス・E・テイラー)

スタートレックのファンが宇宙を駆ける機械人(フォン・ノイマン探査機)になって増殖したらどうなるか? それがこの三部作のボブだ。

短い文章で各々の活躍を表現していく。凶悪な地球由来のレプリカントとの戦い、地球人の生き残りとのやり合い、異星人との出会い、アザーズとの決戦…息をつかせぬテンポでさまざまな物語が続いた。詰め込みがすごいね。ともあれ、楽しめたよ。

ただ私はスタートレックの知識が皆無なんで、その点は残念な読者ではあったなあ。

流れよわが涙、と孔明は言った (三方行成)

なんて言うのかな、SFというジャンルでいいんだろうか。SFベースの、ふざけた文章。人気あるんだろうか。

短編集だけど、この中では『闇』が良かったかな。まあ謎という謎が何も解き明かされずに雰囲気だけで終わるんだけど。ただまあ、この路線で長続きすることはないような気も…軽い気持ちでサクッと文章を読みたい時にはいいかもしれない。

余談になってしまうがタイトルの元ネタはディックの小説で、私は若かりし頃P.K.ディックが好きだった。ディックの小説に出てきたフレーズを長めのパスフレーズとして使っていた時期もある。そこでディックがよく扱ったテーマがベースにあるのかも、と思ってこの本を読み始めたわけだが、全くそんなことはなかった。

アルテミス (アンディ・ウィアー)

あの名作『火星の人』のアンディウィアーの第二作。それだけで読まずにはいられない。出来はどうか。

月面基地観光都市での大立ち回り劇…という表現が適当だろうか? 映像化を意識しすぎかなーと思った。説明が多いのも気になった。まあ説明は必要だよ? だけど、分量が。あとは現実感が少ないかな。

最後あの状況で誰も死なないなんてことがあるんだろうか? 子供や病気持ちだっているだろうし。

ワイルドサイド (スティーブン・グールド)

ゲートの向こうに、人類の発生しなかった別の地球が広がり、少年たちの冒険が始まる。

いやー著者の名前から、あのワンダフルライフのグールドだと思って図書館で借りてみたんだよね。途中まで読んで生物相の話に近いものがあったりしたんで、こういうのも書いてたのかーとも思いつつ、でも少年少女向けの本だし…と調べてみたら別人だった。普通に読めたから、まあいいや。

ちょっと全体の構成がわかりづらいところはあった。一体何が目的なの…というね。40も半ばを過ぎたオッサンが読むような話でもなかった気がするけど、暇な夏休みの読書としては、これでいいかと。

星系出雲の兵站 (林譲治)

ハードなSF。人類は地球とは異なる複数の星系にまたがる存在になっていたところ、敵対的な異星人が…の、第1部(4巻セット)。なかなか読ませる。最初はあまり期待していなかったが、割と夢中で読むことになった。第2部も読みたいねえ。

息詰まる展開、相手への理解の進め方、勝利と敗北、エピローグの後味。いやーそれにしても1巻のエピローグはすごかったなー。

しかしこれ、宇宙戦と考えると移動も生産も補給も、スピード感が早すぎるよね。現実的には。