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山椒の実

Category: SF

カムパネルラ (山田正紀)

宮沢賢治のアレを下敷きにしたSF長編。ジョバンニが最強の格闘家となって巨悪と戦う。鬼神・カムパネルラの運命はいかに? 果たしてラスボス・宮沢賢治を倒せるのか、それとも??

又三郎の登場エフェクトはあたかもキングエンジンの様相。彼もまた、強者なのだった。ブルカニロ博士…あんた一体!?

そんなわけあるか。そう言いたくなる展開が続いた。

デス・レター (山田正紀)

不思議な人探しの物語。連作短編。第1話のインタビューのところがなかなかいい出来で、グッと引きつけられる。

問題はだ、手紙で、フリガナがあることだよ。青いインクの手書きの手紙。そこにフリガナふる? 人と書いてラヴ…この不自然さ。縦書きなの? 横書きなの? 気になってしょうがないよ。

転機になる、ヘミングウェイのやつが良かったな。あと高校生のやつもかなり良かった。

読んで思ったのは、無理にオチをつけなくてもいいのに。だった。どうしたって無理があるよねえ。まあ、これがストーリー的にメタな話になるのは、妥当なんだろうけど。

暗闇にレンズ (高山羽根子)

動画を映すレンズと、それにまつわる一族の物語を軸にして、Side AとSide Bの落差と、つながっていく過程が楽しめる小説。特に、Side Bのリアリティがいいね。まるで学術記事さながらだ。ちょっとした表現へのあこがれで「さながら」言いたいだけだが。文章はまさにプロだねえ。上手い。相当な達者と言えるだろう。

途中から様子がおかしくなっていくのがこういう、優秀なSFだよね。ABそれぞれで動く物語。ラストも淡々として、それでいてすごい。余韻がある。

動乱星系 (アン・レッキー)

ラドチ世界の別物語。前三部作の後くらいの時系列で、かなり遠方という設定で起きた出来事について。この世界ってどこも血族のつながりを大事にするという設定なんだな。

殺人事件は起きるけど、推理小説成分は少なかったな。まあ、ブレクの物語とはだいぶ離れていて、設定だけそのまま使った別の物語だ。これはこういうものだと思えば、十分楽しめる内容ではある。

共通する登場人物の一人や二人、出て来てもいいと思ったんだけどなー。前作で旅の人みたいな扱いの人物がいなかったから、無理か。

叛逆航路/亡霊星域/星群艦隊 (アン・レッキー)

三部作。設定が生きる独特な描写。秩序から混沌へ。人称もそうだし、複数の視点がスムーズにつながっていく。最初のうちは読んでいてかなり混乱したけど、慣れてくると癖になる?

かなり広範囲にまたがり、文化的にも多種多様な人間という設定だけども、細かい仕草や礼節の扱い方、声色の違いで感情を伝えたり推測することができるという点は自然ではないんだよな。自然ではないんだけど、自然に感じるように文章が構成されている。そのへんも上手いんだろうな。

巨神計画/巨神覚醒/巨神降臨 (シルヴァン・ヌーヴェル)

いいSF。逆関節ロボ。ロマンの塊のような存在。その逆関節の問題を物理で解決するやつがいるとは思わなかったな。構造上は、つま先立ちの長さ調節で解決できると思うんだけどな。人類の適応能力は凄まじい。SFだけど。

衝撃の展開が続き、続編への期待を持たせる部ごとのラスト、適切な分量の3部作。

インタビュー記録という構成も凝っていて、謎も作り込まれている感じ。退場すべきでない人が思いがけず退場していき、しかし物語は動いていく。一気に読めて、良い週末を過ごせた。

華氏451度 新訳版 (レイ・ブラッドベリ)

本に関する名作SFですね。新訳はどうなのか…まあ、詩のような感じで読みにくいのは間違いないな。現代の作家はこうは書かないだろう。読み手がついていけない。今となっては、自分もあんまり好きじゃない話では、あると思った。

現代のスマートフォン社会と分断インターネット・エコーチェンバー世界を予見していた? とも言える記述も流れている。

燃えない家、は良いなあと思った。火事というのは最も身近で、最も恐るべき脅威だ。地震雷火事親父のうち、地震は稀に起きる大災害、雷は室内なら怖くない、火事はとにかくやばい、親父(=自分)はクソ扱い…というね。

血を分けた子ども (オクテイヴィア・E・バトラー)

SF短編集とエッセイ。全体的には、人間の体がテーマかな。なかなか良かった。とは言え、気持ち悪さはすごくある。昔読んだ、樹上生活するSFを思い出した。なんと言ったか…

途中に挟まれたエッセイを読んで意識したけど、黒人女性なんですね。SF作家は白人男性が圧倒的に多く、今でも非常に珍しいらしい。けど。実際SFには和モノ洋モノの区別はあるし、それこそチェコSF集なんかにも手を出したこともあったけど、性別や人種はあんまり気にしないで読みたいものだな。特にSFというジャンルはそうなんじゃないかと思う。地球の人類は種族としては1つで、人種という区別はそれ自体が科学的なものではないわけだし。その外側に意識を向けるような内容のSFであれば、なおさら。

火星の虹 (ロバート・L・フォワード)

ハードSF。火星と地球を舞台にした、対照的な双子の兄弟の話。都合の良すぎる設定もあったが、なかなか良かった。30年前にこれが書かれているとは、すごいな。

ちょっとキャラクターが一方的に過ぎないかな、というのはあったが、ハードなSFとしてはかなり出来が良かった。しかし、この本が書かれた頃も私はSFは少し嗜んでいたはずで…若い頃に読みたかったな。

大日本帝国の銀河 (林譲治)

第2次世界大戦の直前に宇宙人がやってきたら? というSF。あの「星系出雲」を書いた人だから、凝った設定、手探りの理解、本格的な考察が続く。これも全5巻と長いが、飽きずに読める。

しかし5巻は急転直下だったな。宇宙という設定上、時間軸はバグっているが。

ただこれ、登場人物がちょっと覚えるのが難しいよね。シンプルに数と役割が多いのと、久しぶりの登場が多いので。