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山椒の実

Category: SF

グッドラック 戦闘妖精・雪風 (神林長平)

アイスキュロスだ、とりあえずは。アイスキュロスの逸話を適切なタイミングで話せる大人になりたい。そう強く感じた。とんでもないやつもいたものだ。恐るべし、だ。まさに。

これ、だいぶ昔に読んだはずなんだけどな。内容を完全に忘れていた。つまり楽しく読めた。しかし、こんなダイナミックな展開だったかなー。死にそうで死なない奴が登場してまあまあ活躍した記憶はあるから、読んだのは間違いないのだが。後半はワールド全開な感じがして良かった。

ウォー・ゲーム (P.K.ディック)

ディックの短編集。らしさがあってワリと良かった。気軽にこういうのを読めると楽しい人生になりそうだ。だけどそれぞれ、あんまり印象には残らなかったなあ。後半のオモチャのやつとか、タイムマシンのやつはちょっとは残るけど、結末はもう忘れてしまった。そのくらいな感じで、どんでん返しも大団円もないし、どっぷり引き込まれる前に終わってしまうんだよな。

ディックと言えばどうしても、セルフイメージと現実とのギャップ…みたいなテーマを期待してしまうので、期待が高いと外れたと思うかもしれない。自分が通勤電車で読むにはちょうど良かった。

戦闘妖精・雪風 (神林長平)

昔読んでいた本。物理本で、まだ持ってるんだよね。シリーズに最近新しいのが出たということで、通しで読もうと思った。深井零、懐かしいなあ。相変わらず、お元気そうですねえ。まるで実家のような緊張感だ。剣呑。共感できそうでできない、人間らしくもあり人間らしくもない主人公。どこか現実感のない、まるで地球からフェアリィを見ているかのような雰囲気で物語が進むんだよな。

改めて、これが1980年代に書かれたことを思う。このあと実際に無人機が地上の人間を殺戮して回る世界が来て、今はもっと安価なドローンも主役級に躍り出ている。この40年。

フランケンシュタイン (メアリー・シェリー)

これ青空文庫にあるんすね。それもそうか。派生物も多く、その後の人類に多大な影響を与えたホラーSF長編。

物語のスジはもともとは知らなかったのだが、そしてSF超入門を読んであらすじを知ったのだが、なかなかの良さがあった。鳥山明が同じ物語を書けばそれは人造人間とドクター・ゲロになったんだろうし、仮面ライダーとかもその系譜かな。

創造主と創造物。それぞれの苦悩、というテーマは十分に深いから、その大きな流れを伝える一作、という評価になるんだろうねえ。後世の作品はそれなりに縒れるけど、このフランケンシュタインと怪物はどうか。

普通に出来が良くて、現代人が読んでも充分に楽しめる内容だった。読んで良かった。身勝手な天才にふりまさわれた犠牲者と、犠牲者の犠牲者を思うと、悲しくてしょうがなかった。つまりこれ、主人公だけが群を抜いてクソ。

ブラッドベリは歌う (レイ・ブラッドベリ)

SF系の文章家、ブラッドベリの短編集。中村保男訳の版。

フワッとした、結末にインパクトを置かないものがほとんどだが、中ではリンカーンを暗殺するやつが良かったかなー。SFらしさもあり、SFらしくなさもある。

ディケンズのやつもそうだけど、なんか狂った人が出てくる話ばかりだな。小説は少なからず、みなそうか。

ヘリコプターが頻繁に出てくる。当時はもっと一般人が使う乗り物になると思われていたんだろうか。

あとは、ディケンズをなにか読まなければならなくなった。なんという誤算。そういうことするから信用できないんだよ、昔の作家ってのは。ブラッドベリにとっては別に誰だって良かったんだろうけど、ディケンズかー

SF超入門 (冬木糸一)

基本読書の人が書いた、SFを使って現代や将来を見ていく本。書評だけど、テーマが良くて面白かった。文章も読みやすく、次々に興味をかきたててくれる。すでに現代は総SF時代。現実になったものも多いし、これから現実になるものも多い。横浜駅SF(全国版も)なんかももう、ほぼほぼ現実だからな。

なんて思いながら読み進めた。この分野は全く、飽きることがない。あとがきを見ると、私の読書の傾向は著者とだいぶ似てるなあ。質と量はだいぶ違うけど、傾向が。時代小説、古代中国、ミステリ、SF…私も流れはほぼ同じだ。神林長平、ハマるとヤバいっすよね。わかります。

暗黒星雲のかなたに (アイザック・アシモフ)

駄作と言われているらしいが、どんなものか。

まあ普通に楽しく読めたよ。昔のSFベースの推理小説としてはいい方と言えるのではないか。大作家は水準が高すぎるんじゃないのかな。絶賛すべき傑作かと問われるとちょっと推しにくいものはあるが。深みとか凄みとかは、ないからなー。

夜来たる (アイザック・アシモフ)

古典SFの短編集。名作と言われている。実際凄いな。今読んでも、普通に優秀なSFとして読める。これが1941年に書かれたという事実。戦前!? かろうじて江戸時代ではない…それは言い過ぎとしても、真珠湾攻撃の年だよねえ。なんとも驚異的だ。

今宵は百万年に一度おお、と歌い出すあの曲も、この古典名作がベースにあるんだねえ。

この作品は名作だけあっていろんな短編集に含まれていたり長編に書き直されたりしているようだが、私が読んだのはグーテンベルク21のやつで、クリスマスとタイムマシンの短編も含まれていた。タイムマシンのやつ(赤い女王のレース)はかなり良かった。王道叙述トリックホラー的な。

司政官 全短編 (眉村卓)

短編集ですよ。時系列で並んでいる感じで、作中世界の変遷が感じられる。楽しくも、物悲しい。それぞれの話の長さが、ちょうどいいように思った。

最初の方の話が良かったな。後半はだんだんキツくなってくので。

無理を押し通して、それを続けることはできないんだよねぇ。

消滅の光輪 (眉村卓)

司政官シリーズの長編。少ないイベント、長い独白、限られた人々との会話。

このシリーズ初めて読みましたが、面白さはありました。設定も魅力がある。ただ、思考をたどる文体がどうも気にかかるという面があるかな。短編の方が楽しめるんじゃないかと思う。