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山椒の実

Category: Novel

スティル・ライフ (池澤直樹)

小説。まあ小説らしい小説、だね。30年くらい前の小説かな。あまり好きなタイプの小説ではなくて、なんでこの本を読もうと思ったのか、思い出せない。子供の国語の問題に出てきた文章、だったかも。

読んだ、というだけで何の感想もなかったんだけど、まあ好きなジャンルじゃないってのはそういうことなんだろうなー

袋小路の男 (絲山秋子)

実りのない壮大? な片想いの物語。男子には共感不能では? この不毛さはひどすぎた。人権問題ですよこれは。男も女もデッドエンドに入り込んで抜け出せない。そんなのってありです?

なんとなく佐藤正午の『月の満ち欠け』を思い出した。男子が同じことを書くとああなるんだろうか? いやステレオタイプ丸出しな感想ですみませんけども。

同じ事実を別の描き方をしたアンサー版? もあるので、二度楽しめるのは美味しい。この手法はいろんな小説で使えますね。むしろ小説のみならず。例えばゲームならタワーディフェンスに対するタワーオフェンス、みたいな話。

幼な子の聖戦 (木村友祐)

中編2本の本。

1本目は田舎の選挙の話で、2本目はガラス屋(ビルの窓拭き)の話。どちらもなかなか印象的な物語だった。

選挙の話は、構図としては善と悪をはっきりさせた上で、主人公をうまい場所に立たせて語らせ、動かした感じ。唐突とも思える終わり方の余韻もじっくり味わえるよね。

ガラス屋の話は、死亡フラグの回収がどうもね、引っかかるんだよね。ただ描写がすごく良かった。自分が通っている会社のビルにも窓拭きの人が来ることがあるんだけど、自分がやることを想像すると足が震えるところではあるよね。俺としては、中から拭かせてもらいたい。あるいはロボットで拭けるようになるといいのかも。自分の家の近所に高所作業の会社の事務所があった。普通のアパートの一室に看板立ててたなー。今は移転したみたいだけど、あるイベントでそこの会社のブースで高所作業体験みたいなのをさせてもらったことを、今でも覚えている。あそこは巨大建造物の検査とかの会社だったから、窓拭きはやってないのかもしれないね。

王国 (中村文則)

前作「掏摸」の兄妹作。前作の登場人物も出てくる。相変わらずの不気味さと、夢見がちな犯罪者主人公。

なかなか楽しめた。のはいいんだけど、こういう小説は感想を書きにくいね。ネタバレとかにつながると野暮だし。

唐突に本名を知られる衝撃や、主要人物が偽名なので呼び名が変わるのでぼんやりしてると混乱する傾向がある…のは前作と同じような展開かな。

神楽坂 (矢田津世子)

神楽坂のケチな金貸し。奥さんの死に関連するあれこれを描いた小説。青空文庫で読めます。

彼の人生の意味って何なんだろうね。充分なカネを稼いだのなら、引退して南の島でのんびり暮らせばいいのに。…と、自分が同じ立場になることはなさそうなので適当なことを言いだしてますが、特に感動があるわけでもなく、大きな驚きがあるわけでもない物語が淡々と続くこの感じね。好きな人は好きなんだろうな。この小説を読んで、時刻表のトリックくらいは使っても良かったんじゃないかなんて思ってしまう自分の人生は一体なんなんだ??

ムーンナイト・ダイバー (天童 荒太)

まず立ち上がりの書き込みの量・質を見て、こいつは本格的なやつだったか、と気づいてしまうよね。軽い気持ちで図書館で借りた本。そして最初の印象のまま、このハードボイルド小説はラストまで続くのだ。すげーな。まさしく著者の力量ですね。話の中身はともかく、まず最初に思うのは、こういう文章が書ける人はどういう頭の中身をしてるんだろうね、というところ。それほど良かった。

で、中身か。中身としてはシンプルな話でもあって、天災以外に誰一人として悪人は出てこないし、それでいて悲しさや優しさが絶妙な配分で詰まっていて、ラストへの展開もスッキリして、いろいろなことを考えさせられながらも読後感は良かったです。

桐島、部活やめるってよ (朝井リョウ)

途中で読むのやめようかと思ったんだけど、結局最後まで読んだ。オッサンには辛いんだよこういうのは。よく書けてるだけにね。映画のほうもかなり話題になっていたけど、なるほどと思わせる。

まあ人名が多くて覚えきれないのは、それはそれで。でも凄く良く書けてるんだよねこれ。高校生の内容のなさとか、内容ってやつへのあこがれみたいなものとか。私は男子校で病気をしつつも最後まで部活はやりましたけど…おまけに不本意なことに大学に入っても同じ競技を続けてしまった…それも不真面目に!

ボクはファミコンが欲しかったのに (岐部 昌幸)

おっさんホイホイ小説かな。昭和の小学生の日常を描く。まあ好き嫌いは別れるかもしれない。私はちょっと居心地が悪いというかなんというか…まあ我々はなんだかんだでファミコン世代だからね。いいよね8ビット時代。著者はこれ、セガ派か。セガ派ってのは曲者が多くてね。大学の同期にもセガが好きなゲーマーで、そのままセガに就職した奴もいたなぁ。いまどうしてんだろ。

今の子はDSか。スマホか。うちはまだ買い与えてません。ゲームやるなら同じゲームをおれもやりたいと思っている。軽くひねってコテンパンにしてやるってんだよ。

孤児列車(クリスティナ・ベイカー・クライン)

その昔、アメリカで孤児を集めて里親を探しに走った孤児列車というものがあったらしい。確かに慈善事業なんだけど、家畜の品評会のようなものを受けさせられる子供には残酷でもある。その歴史的事実を元に記された小説。売れて評判が良いらしいということから、恐らくハッピーエンドになってみんな救われるんだろうなと思って読むことにした。やはりバッドエンドで終わる後味の悪い小説は読みたくないもので。

その地獄から地獄へと向かう旅路。受け入れる里親は里親としての責務を果たさず、単に無償の労働力として扱い、孤児の人生をすり減らしていく。そして行き着く先で出会った救い。人生と人生の交錯。いろいろと考えさせられた。ヘビーではあるが割と安心して読めるところもいい。