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山椒の実

Category: Mystery

むかしむかしあるところに、死体がありました (青柳碧人)

昔話をベースにしたミステリ。まさかあいつがあんなに悪いやつだったなんて! 短編集みたいになってるけど、よく語られる昔話、よくある本格推理のアングルで、一通りのバリエーションはやった感じかな。

まあこれ叙述トリックはどうかと思った。しかしこのフォーマットはいろんなことに応用できるよね。と思ったら続編も出ていた。続編も読みたいなー。別に昔話じゃなくてもよくて、よく知られている物語をベースに推理小説にすればいいんで、範囲は広いよね。

IQ (ジョー・イデ)

雰囲気のあるハードボイルド系の推理小説。登場人物が多くてついていけないやつだな。もうちょっと減らしてほしい。

まあ、人物の描写も深いし、エピローグもなかなかの切れ味があって、なんかシリーズになるような感じですね。状況よりもキャラクターの描き込みに寄っていて、その種のことが好きな人には、このほうが良いんだろうな。計算されている。まー終盤の相方に関しては少しガッカリしたけど。そういうキャラじゃなくなかった? っていう。

第八の探偵 (アレックス・パヴェージ)

あのグラント・マカリスターをめぐる推理小説。罪深い男よ。「あの」って誰だよ…

それはともかく、かなり楽しめたね。非常にこう、工夫が凝らされていて。劇中劇、そして著者グラントへの尋問が連続して。とにかく最後まで目が離せない。読ませる。いやー、いい本を読んだね。どういう頭してたらこういう本を書けるんだろうね。

中相撲殺人事件 (小森健太朗)

ふざけた推理小説の短編シリーズ集? なんでこれ読もうと思った…

のっけから親方の娘のツインテール女子高生とか言い出してたので「こいつやべーな」と思ったが、まあ途中からは外見描写が皆無になりつつ、割とまともではある状態に。推理小説をたくさん読みすぎてしまった人向けの、ライトな推理風小説、といったところか。ギュイーン! 最初の雷電の話とか料理回なんかは推理小説とは言えないと、思うが。ギュイーン!

1作目の『大相撲殺人事件』のほうを読むかどうかは、ちょっと迷っている。もうちょっと名作推理小説を嗜んでからのほうがいいような気がするね。私はまだ「読みすぎた」とは言えない状態なのでね。

九尾の猫 (エラリイ・クイーン)

高校の頃、推理小説が好きな同級生が語ってくれた、この作家のやつを読んどけば間違いないという扱いの著者を示すリストの筆頭にエラリイ・クイーンがいた。当時すでに古典。それから20年以上の時を経た今、読んで、どう感じるのか。

まあその20年以上の間、私はあまり網羅的には読まずにつまみ食いで推理小説の読書を嗜んでいたわけだが、エラリイ・クイーンのこの本の新訳版が出てた。ので、興味を引いて読むことに。

謎に迫る手がかりに全く手がかからず、全く進展のない展開がひたすら進み、読者も登場人物もフラストレーションを溜めていく。ジリジリしつつ、最後はうまいこと収めた? いやオレは収まってないと思うけどね。

アンダークラス (相場英雄)

外国人実習生の問題とか、戦後の貧困とか、いろいろな世代が絡みつつ、人が死んで、事件を解決していく。かなり読み応えがある展開にはなったが、一気に読めた。

ジャンル的には社会派ミステリっていうのかな? まあパッと分かるモデル企業はいいとして、そのリアリティがなかなか凄い。実際にそういう世界があるっていう現実の怖さがある。人間の尊厳とは。

殺人都市川崎 (浦賀和宏)

川崎を舞台にしたミステリ。この本だけは絶対に許さん!!

違和感だらけのパートと、少し現実っぽいパートが織り交ぜられて物語は進む…んだけど、やっぱりこの本はどうしても許せないw 『ルポ川崎』の時は現実だから良かったけど、これはさすがに、ないなと思った。

どう収拾つけるのか不安を感じながらの読書だったけど、このオチもどうなんだ…よく出版したなこんなの。

月の満ち欠け (佐藤正午)

オカルト話に終始した…という見方もあるんだろうが、私は楽しめたよ。

セレクテッド・リザレクション現象? まー書く人が書けばそれはニンジャソウルの憑依となるし、佐藤正午が書けばこの小説のようになる。個性! いずれも達人ではあるが。

推理小説でもないのに人が死にすぎな点はどうだろう。しかも殺人が一件もなく、不注意が過ぎるのでは。子供じゃない。千年の時を生きるヤツにしてはリスク管理がなっとらんよ。

あとは…登場人物の名前で、北斗の拳のミスミの爺さんを思わせる人物がいたなと。そのミスミの爺さんも、出生の話からしてソウルの憑依のかのうせいが…のうりょくがはつげんしてないだけなのかも!? まあミスミの爺さんを憑依者にしなかったのは、それをしないことでいわゆる女の情念的な感じを出すという狙いがあるのかもしれないねえ。

美濃牛 (殊能 将之)

鏡の中は日曜日ハサミ男に続いて、同作家の長編を。まあ楽しい。雰囲気も記述の重厚さも良く、登場人物も多いけど個性的で、非常に快適に読めた。

内容に比べて文章が長い、という批判はあったらしい。殺人事件が起きるはずなのに、なかなか一人目が死なないというのはその通りだけど、自分は気にならなかったな。それだけの内容もあったと思うし。