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山椒の実

Category: Mystery

あなたに謎と幸福を ハートフル・ミステリー傑作選

後味の良さ優先のミステリのアンソロジー本。まあ短編だし割と出来の良いものが多い。謎は暴かれる。人は死なない。

まあちょっと軽すぎたかなー。後味がいいと言っても、大きな印象も残らない。死なないミステリ、しかも悪意が少なめ、なんて。この本の中の一番の悪人はあいつだろうけど、ちゃんと報いを受けて、捕まってるしねー。

姉妹本で、後味が悪いのだけを集めたやつがあるらしい。むしろそっちが先だったとか。ちょっと興味を引かれた。

楽園とは探偵の不在なり (斜線堂有紀)

特殊な舞台設定で探偵が舞う。舞台設定はある種のグロテスクなもので、天使と称される不気味な存在が飛び回り、2人以上殺した人物を地獄の業火で焼き殺すというもの。そこで揺れ動く人々の心理と、起きるはずのない連続殺人事件。探偵が解決に走る。

なかなか良かった。ハードボイルド風に寄ることもありつつ、そこに青臭い正義感も絡んでいく。

紅蓮館の殺人 (阿津川辰海)

不自然な設定、張り巡らされた謎、名探偵、そして一筋縄では行かない謎めいた登場人物たち、最後のどんでん返し。これだよね。絵に描いたような現代日本の推理小説。楽しかったです。

まあ、それ以上語ることはあんまり、ないかなー。推理小説においては感想をネタバレなしで書くのが難しいわけよ。

赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。 (青柳碧人)

「オズの魔法使い」の物語をベースに、紅の探偵が事件を鮮やかに解決していく復讐の旅物語。全てを統べるひとつのクッキーを火口に投げ込んで滅ぼさなければ! そのために遠くカンザスの地にビンテージワインを届ける! そのウサギの足のお守りの謎とは…なんか混ざりすぎてねえか? 「ごんぎつね」まで混ざってた気が。おまえだったのか!!

決め台詞を持つ探偵のキャラクターも悪くないしストーリーの繋がりもあって、童話風の急展開の空気感。なかなかいい出来だった。

むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました (青柳碧人)

人気昔話ミステリの第3弾。とりあえずサルがやばいということはわかった。南天丸、死すべし!

なかなか楽しめたよ。誰でも知ってる話だけど、なんとなくバリエーションがあって変化があるのが昔話。それがベースだから、というのもあるだろうな。

むかしむかしあるところに、死体がありました (青柳碧人)

昔話をベースにしたミステリ。まさかあいつがあんなに悪いやつだったなんて! 短編集みたいになってるけど、よく語られる昔話、よくある本格推理のアングルで、一通りのバリエーションはやった感じかな。

まあこれ叙述トリックはどうかと思った。しかしこのフォーマットはいろんなことに応用できるよね。と思ったら続編も出ていた。続編も読みたいなー。別に昔話じゃなくてもよくて、よく知られている物語をベースに推理小説にすればいいんで、範囲は広いよね。

IQ (ジョー・イデ)

雰囲気のあるハードボイルド系の推理小説。登場人物が多くてついていけないやつだな。もうちょっと減らしてほしい。

まあ、人物の描写も深いし、エピローグもなかなかの切れ味があって、なんかシリーズになるような感じですね。状況よりもキャラクターの描き込みに寄っていて、その種のことが好きな人には、このほうが良いんだろうな。計算されている。まー終盤の相方に関しては少しガッカリしたけど。そういうキャラじゃなくなかった? っていう。

第八の探偵 (アレックス・パヴェージ)

あのグラント・マカリスターをめぐる推理小説。罪深い男よ。「あの」って誰だよ…

それはともかく、かなり楽しめたね。非常にこう、工夫が凝らされていて。劇中劇、そして著者グラントへの尋問が連続して。とにかく最後まで目が離せない。読ませる。いやー、いい本を読んだね。どういう頭してたらこういう本を書けるんだろうね。