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山椒の実

Category: Mystery

テロリストのパラソル (藤原伊織)

割と傑作寄り? 良い出来のハードボイルド長編。このくらい文章が上手い人がしっかり書いてくれると、締まるね。かなり引き込まれて一気に読んでしまった。これなら今季のマイベストを狙える。

まー気になる点といえば、ちょっと偶然が過ぎる面があるのと、主要登場人物が全員頭がキレすぎるところくらいかな。あーでも凡人もいるのか。

神様からの手紙 喫茶ポスト (新津きよみ)

途中から「あれ? これシリーズものになるの??」って感じになったミステリ。そんないきなり次回作への準備みたいなモードになっちゃったら、本編に集中できないじゃん。どうなのかと思った。雰囲気はあるし文章力が高いのは分かったけどさ。

メインの謎自体はそもそも論理で解き明かした感じではなくて、まあその辺の問題は抱えている作品だと思った。外見に関する描写が多いのは、映像化を意識してるのかもしれない。そうなるとシリーズ化への意識も、そういうものなのか…とも。

虚像の道化師 (東野圭吾)

物理学者ミステリシリーズ。やったー短編集だー。待望の短編集、安定の出来。長編で練り上げられた完全犯罪を暴くというよりも、こういう咄嗟のトリックをサクッと見つけてくれた方が、私は好きだな。

主人公も、人柄がずいぶん丸くなりましたね。最初の頃はこんな奴じゃなかったのに…まあ、それも成長という意味があるんだろうな。学者の成長物語? と表現してしまったら、このシリーズのイメージが変わってしまうよ。

禁断の魔術 (東野圭吾)

物理学者ミステリのアレ。また長編でした。アクション映画に出てくる米軍の秘密兵器のような機器が、まさかの登場。それでもこのシリーズらしく、割と現実的な設定だった。

今回は、若者の狂気という感じ。まあでもこれまでの長編と比べると、だいぶ正気寄りか。ラストのクライマックスは、映像映えしそうないい出来でした。

真夏の方程式 (東野圭吾)

物理学者シリーズの長編。まるで孤島ミステリかよ…それでも、物理学者シリーズらしさをしっかり出せているのはさすがだなあ。

ただ、これまでの人物像と比べると、「らしからなさ」があって、意外性を重視したのか? 度重なる事件への取り組みを経て、丸くなったという…それで納得できるのかどうか。

聖女の救済 (東野圭吾)

物理学者シリーズの長編。このシリーズ、良いよね。

今回のトリックはかなり無茶ではあるが、説得力を持たせるには長編にするくらいの文章量が必要だったのかなあ。長編なのに、息をつかせぬ展開。何を疑い、何を信じるのか。楽しめた。しかし弁護士は何なんだ。顧問弁護士だと思ったら共同経営者だった、しかも…という。

(追記)

これ自分には通用しないトリックだよなあと思った。私はああするし、こうされる人生は歩めないし…思わずその辺のことを考えてしまった。それを「そんなアホなことする奴がいるはずがない」みたいに片付けられてしまうとねえ。

ガリレオの苦悩 (東野圭吾)

また短編集に戻った。まあ実際は中編くらいの長さだけど、このくらいが安定すると思いました。こないだの長編は妙に趣向が変わりすぎて。

志向としては不可思議現象と人間心理戦の間の、ちょうどいいところを模索する感じ? この中では第4章の「指標す」が良かったかな。ダウジングのやつね。結末もキレイ。いろんな方面で、ちょっと可哀想なところはあったものの。

飛騨高山からくり人形殺人事件 (和久峻三)

赤かぶ検事シリーズ。懐かしいなあ。中学生の頃にいくつか読んだ記憶がある。

今読むと、アクションシーンもないのに、ちょっと人が死にすぎるよね。トリックも無理があるのでは? と思った。さすがにねえ、柳の枝のトリックは、やりすぎだろうよと。

この作品自体は、時間関係が分かりづらい。辻褄合ってんのかなこれ。ちょっと不安になる。

小道具が古い(携帯電話がない)のはそれほど気にならなかった。オレも昭和の人間だからね。

容疑者xの献身 (東野圭吾)

容疑者が健診? それで、どんな生活習慣病が見つかったの?? 再検査の結果は???

という話ではない。物理学者探偵シリーズの長編。これまでとは打って変わってオカルト要素なし、本物のサスペンス劇場。

数学者と物理学者。怪獣同士の、とんでもない決戦。好敵手とのミラーゲームみたいな? 一歩、若かりし頃の偶然の選択を間違えば湯川と石神の立場は逆だったかもしれず、そこに悲しさがある。

しっかし、オカルトないのかー。残念だなあ。まー、長編をオカルトのみで押し通すのは無理だと思うけどね。