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山椒の実

Category: Mystery

紙魚家崩壊 九つの謎 (北村薫)

ちょっとひねって不気味な風味をつけている推理小説の短編集。

何らかの後味が残る感じではなかったし、全体的には、まあまあかな。中ではおにぎりのやつと「俺の席」の2つが良かったか。良かったってほどでもないか。

表題だけど、家で崩壊となるとアッシャー家とか芦屋家だろうと思ってしまう。で、紙魚なんて苗字あるのかな、と思って検索したけど…以下略

空飛ぶ馬 (北村薫)

北村薫のデビュー作…らしい。若い頃に名前はよく見ていたが、読んだことなかったな。最近オムニバスのものを読んで、いい出来だったので他の作品も見てみよう…となったわけだ。

優れた小説家に特有の描写力がすごい。のどかで、リアル。適切なスピード感とのバランス。圧倒されつつ、どんどん続きを読みたくなっていく。昭和末期〜平成初期の風景。まあこういうのが苦手な人もいるんだろうなー。

1日1話で読む6つの深き謎

かなりバラエティに富んだミステリ選。選んだ時代が幅広いからかな。ちょっと無理がありすぎるやつもあるし、現代的観点から言うと問題が発生するようなものもあった。句読点の関係で文章が読みにくいやつも。元の短編は古いものも選ばれているものの、この本自体は最近出た本。ただ全体的には現代の人が読むレベルにはないものを選んじゃってるんじゃないかなあ。

この中では俳句のやつが飛び抜けてよかったな。これが事件ですらないけれども、なんとも綺麗な謎、そして綺麗な謎解き。こういうのがいいんだよな。

テロリストのパラソル (藤原伊織)

割と傑作寄り? 良い出来のハードボイルド長編。このくらい文章が上手い人がしっかり書いてくれると、締まるね。かなり引き込まれて一気に読んでしまった。これなら今季のマイベストを狙える。

まー気になる点といえば、ちょっと偶然が過ぎる面があるのと、主要登場人物が全員頭がキレすぎるところくらいかな。あーでも凡人もいるのか。

神様からの手紙 喫茶ポスト (新津きよみ)

途中から「あれ? これシリーズものになるの??」って感じになったミステリ。そんないきなり次回作への準備みたいなモードになっちゃったら、本編に集中できないじゃん。どうなのかと思った。雰囲気はあるし文章力が高いのは分かったけどさ。

メインの謎自体はそもそも論理で解き明かした感じではなくて、まあその辺の問題は抱えている作品だと思った。外見に関する描写が多いのは、映像化を意識してるのかもしれない。そうなるとシリーズ化への意識も、そういうものなのか…とも。

虚像の道化師 (東野圭吾)

物理学者ミステリシリーズ。やったー短編集だー。待望の短編集、安定の出来。長編で練り上げられた完全犯罪を暴くというよりも、こういう咄嗟のトリックをサクッと見つけてくれた方が、私は好きだな。

主人公も、人柄がずいぶん丸くなりましたね。最初の頃はこんな奴じゃなかったのに…まあ、それも成長という意味があるんだろうな。学者の成長物語? と表現してしまったら、このシリーズのイメージが変わってしまうよ。

禁断の魔術 (東野圭吾)

物理学者ミステリのアレ。また長編でした。アクション映画に出てくる米軍の秘密兵器のような機器が、まさかの登場。それでもこのシリーズらしく、割と現実的な設定だった。

今回は、若者の狂気という感じ。まあでもこれまでの長編と比べると、だいぶ正気寄りか。ラストのクライマックスは、映像映えしそうないい出来でした。

真夏の方程式 (東野圭吾)

物理学者シリーズの長編。まるで孤島ミステリかよ…それでも、物理学者シリーズらしさをしっかり出せているのはさすがだなあ。

ただ、これまでの人物像と比べると、「らしからなさ」があって、意外性を重視したのか? 度重なる事件への取り組みを経て、丸くなったという…それで納得できるのかどうか。

聖女の救済 (東野圭吾)

物理学者シリーズの長編。このシリーズ、良いよね。

今回のトリックはかなり無茶ではあるが、説得力を持たせるには長編にするくらいの文章量が必要だったのかなあ。長編なのに、息をつかせぬ展開。何を疑い、何を信じるのか。楽しめた。しかし弁護士は何なんだ。顧問弁護士だと思ったら共同経営者だった、しかも…という。

(追記)

これ自分には通用しないトリックだよなあと思った。私はああするし、こうされる人生は歩めないし…思わずその辺のことを考えてしまった。それを「そんなアホなことする奴がいるはずがない」みたいに片付けられてしまうとねえ。