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山椒の実

Category: Mystery

寂しい狩人 (宮部みゆき)

下町の古本屋を舞台にした連作短編推理小説集。昭和末期くらいかな、文章の空気感がいい味を出す、この著者が好きそうな舞台設計。私も嫌いではない。

犯罪起こりすぎだけどね。推理小説だからしょうがないけど。短編集だからミスリーディングとかはあんまりなくて、少しひねるだけで、ほぼストレートで解決に向かっていく。そこに一家の問題が絡むところで統一感が出ているというか。その問題は、殺人とかと比べると他愛のない話ではあるんだが、当事者にとっては重大。

優等生は探偵に向かない (ホリー・ジャクソン)

ピップの話の続き。連続性には苦心していたけど、あんまりそこはいいんじゃないかな、と思ったな。

900ポンド返すとこまでが結末だと思ったが、そこは省略された。今のレートなら日本円で16万てとこか。そんなもんか。高校生でも、このくらいのネット上のスター選手ならスポンサー案でなんとかなる範囲だろう。

そしてこの後味の悪さよね。現代社会の闇か。関わった人のほとんどが不幸になる。前作もそうだったっけ。作者、ずいぶんやらかしたな~と思ってしまったくらい。推理小説ってどうしてもそうなるけど、ハッピーエンドを志向しても、いいんじゃないかなあと思った。特にこういう青少年向けのやつはさ。

自由研究には向かない殺人 (ホリー・ジャクソン)

女子高生探偵が颯爽と殺人事件を解決だ。と書くとふざけた内容だと思ってしまうのだけど、真面目に若者向けミステリだった。しっかり書かれていて、かなり面白かった。若い頃に読みたかったな。

色々と悲しいことが起きるのはちょっときつい部分もあるな。犬が死ぬのは受け入れられない。死ななくても物語は成立したはずだ。

街への鍵 (ルース・レンデル)

最初の公園のやたらにねちっこい描写を読んでってゲンナリしそうになり、多様な登場人物を覚えるのに苦労しつつ、群像劇のような形で物語が進む。だんだん視点となる主要人物が分かってストーリーが動き出すと、楽しく読めていく。

なかなかこういうのもいいですね。ただ序盤で心が折れて読めなくなる恐れはある。恐れたものの、前の悲劇がなかなか良かったので、私は信頼して読み進めた。

ともかく、殺人犯が捕まってよかったな。死体の発見状況はそれぞれ巧妙なトリックかと思ったけど、最終系としては筋肉トリック(?)か。力づくか。

ドレスデン・ファイル 魔を呼ぶ嵐 (ジム・ブッチャー)

現代シカゴのハードボイルドで、アクションで、ファンタジー。家賃に悩まされ、警察に睨まれ、ヤクザに殴られながら謎を解く。これはいい話だなあと思って。

いきなりの魔法使いを自称してそのように振る舞う主人公だが、途中までなかなか魔法を使わない。これはラストで一発魔法を決めるだけで、その過程は普通に推理小説なんだと早合点していたんだけど、途中からバンバン魔術を決めるようになっていった。そうでしたか。

シリーズになって、続編も出ているらしいな。割と良かったけど、謎解き要素が薄れて魔法対決になってしまったのでちょっと趣向が変わったかなと思ったので、続きを読むかどうかは分からない。気が向いたら。

中途の家 (エラリー・クイーン)

国名シリーズにぶっ込んできた非国名ミステリ。著者が気に入っているベスト幾つかに入っていたので、読んでみた。

まあ描写されるアクションやらには不自然さはあるけど、アクション小説じゃないからいいや。のっけからすごい設定と偶然だったけど、なかなか読ませるミステリだった。悪くない。

まあこういうのネタバレしたくないんだけど、これを書かずにおくのは無理かもしれない…序盤の人称への違和感が難しさを増していたかな。犯人の性別がいつ確定したんだと。

消えた子供 トールオークスの秘密 (クリス・ウィタカー)

小さな街の神隠し事件、目撃されたピエロ、そして…ミステリですね。

あとは、あれだ。「ためつすがめつ」の用法をマスターしたいなと思った。序盤になかなかの頻度で出てきた「ためつすがめつ」。私はこれまで「ためすがめつ」だと思っていた。ググって意味を知る。なるほど…こういう小説でしか使わない表現で、自分がこの語を使うイメージは、ないんだが。英語だと「scrutinize(精査する)」? 初見の語だなあ。

内容は少しずつ読者に衝撃を与えていくスタイル。なかなか狂気的でもあり良かったが、人物の名前が覚えにくい。何度も登場人物リストを参照するはめになった。似た名前もいるし、性別とかも混雑している。だいたい皆さんおかしなことになってるし。