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山椒の実

Category: Mystery

大はずれ殺人事件 (クレイグ・ライス)

マローン弁護士のシリーズ。っつっても今まで読んだことがなかったのだが。酒ばかり飲んでいる、メチャクチャ感のある登場人物群。それなりに謎があって、マローンがしっかり謎を解いていくのだが、ひねりも効いていていい感じ。古典的な秀作と言えるだろう。というわけで割と楽しめた。

登場人物の名前が分かりにくいけどまあ、この種の推理小説として仕方ないのは常のことか。

しかし新婚の奥さんは運転しすぎだ。やめてあげて…

陸橋殺人事件 (ロナルド・A.ノックス)

「10戒」のノックスですね。古典的名作ということで、読んでみようと思った。今まで読んでこなかった、著名作家。読んでみると、割とふざけた話なんですね。ノックスってこういうのが好きなのか。とにかくセリフが長い。

冒険あり、勘違いあり、時刻表のトリックあり、暗黒日記あり、カーチェイスあり、ドロドロの愛憎劇あり、宗教論ありと多くの要素をはらんだ作品だった。登場人物も多すぎず、程よい謎、現代的でもあり、古典的でもある。改めて並べ上げていくと側面が多いな。

日本庭園殺人事件 (エラリー・クイーン)

異国情緒にあふれたニューヨークの日本で起きた事件を解決していく推理小説。日本っぽさがあらわれている。なかなかの解像度だ。途中で評価がガタ落ちする人物が悲しいな。途中まですごくいい人が…化け物扱いかよ。少ない手がかりであやふやな推理を当てていくクイーン氏。

ヒロインは幸せでありながら、かわいそうな感じになったよねえ。その辺の二面性も読む人と感傷的にさせてくれる。

刑事何森 孤高の相貌 (丸山正樹)

これはスピンオフなんですね。ワケアリげな背景が語られながら、ハードボイルドな刑事が事件を解決する。それぞれの事件では障碍を得た人が大きな役割を担う。

キャラクターの魅力とプロットがちゃんとしているから安心して読める推理小説になっている。質は高いし、空気感がいいよね。この人のシリーズ、これから読んでいこうかな。そう思った。

臨床探偵と消えた脳病変 (浅ノ宮遼)

医療ミステリ? という区分でいいのかな。診断をつけて事件を解決していく。主人公の視点がなくて、周囲の医師が謎を解こうとしていい線いくんだけど、最終的には主人公が解決してしまうという。

専門用語は分からないながらも、練られている感がしっかりあって、論理も理解できる。だから読む楽しさがある。かなりの良作だった。

世界でいちばん透きとおった物語 (杉井光)

いやーすごい本を読んだね。戦慄が走ったよマジで。目を疑うとはまさにこのことだ。何というか、とにかくすごい。他に言葉が出てこない。ウソでしょこれ。とんでもねえなこの作者。そして、どうすんのよこれ。大騒ぎだよ。前知識なしで、紙の本で読んだ自分を褒めてあげたい。偶然の神引きか? そうかもしれない。

世界は透きとおりすぎている。

帽子蒐集狂事件 (ディクスン・カー)

帽子をめぐる殺人事件。ウィリアム・アイリッシュのときも思ったが、外出に帽子が必須みたいな習慣が当たり前に描写されているんだな。オレもハットの習慣を持とうかな、と思わなくもなくもないね。オペラハット、鳥打帽…その違いが謎を作る?

残りページ数からして早く解決しすぎだとは思ったが、最後こうなるとは思わなかったな。わからないものだ。読んでよかった古典の名作、楽しめたよ。

影踏亭の怪談 (大島清昭)

怪談の短編集、呻木叫子シリーズ(?)。もうちょっとこう、夏に読んだ方が季節感が出たかな。まあそんなことはいい。

本格的な理論派のオカルト推理小説? って感じかな。この種の小説にあんまり手を出してこなかったから、どんな出来なのかはよく分からない。娯楽としては、なかなか悪くないと思う。推理小説だけに人は気軽に死んでいくのだが。

オカルトルポの原稿編と推理本編が散りばめられて、原稿では匿名、本編では実名という書き方の違いが文章のリズムになっていて云々…

寂しい狩人 (宮部みゆき)

下町の古本屋を舞台にした連作短編推理小説集。昭和末期くらいかな、文章の空気感がいい味を出す、この著者が好きそうな舞台設計。私も嫌いではない。

犯罪起こりすぎだけどね。推理小説だからしょうがないけど。短編集だからミスリーディングとかはあんまりなくて、少しひねるだけで、ほぼストレートで解決に向かっていく。そこに一家の問題が絡むところで統一感が出ているというか。その問題は、殺人とかと比べると他愛のない話ではあるんだが、当事者にとっては重大。