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山椒の実

Category: Mystery

日本庭園殺人事件 (エラリー・クイーン)

異国情緒にあふれたニューヨークの日本で起きた事件を解決していく推理小説。日本っぽさがあらわれている。なかなかの解像度だ。途中で評価がガタ落ちする人物が悲しいな。途中まですごくいい人が…化け物扱いかよ。少ない手がかりであやふやな推理を当てていくクイーン氏。

ヒロインは幸せでありながら、かわいそうな感じになったよねえ。その辺の二面性も読む人と感傷的にさせてくれる。

刑事何森 孤高の相貌 (丸山正樹)

これはスピンオフなんですね。ワケアリげな背景が語られながら、ハードボイルドな刑事が事件を解決する。それぞれの事件では障碍を得た人が大きな役割を担う。

キャラクターの魅力とプロットがちゃんとしているから安心して読める推理小説になっている。質は高いし、空気感がいいよね。この人のシリーズ、これから読んでいこうかな。そう思った。

臨床探偵と消えた脳病変 (浅ノ宮遼)

医療ミステリ? という区分でいいのかな。診断をつけて事件を解決していく。主人公の視点がなくて、周囲の医師が謎を解こうとしていい線いくんだけど、最終的には主人公が解決してしまうという。

専門用語は分からないながらも、練られている感がしっかりあって、論理も理解できる。だから読む楽しさがある。かなりの良作だった。

帽子蒐集狂事件 (ディクスン・カー)

帽子をめぐる殺人事件。ウィリアム・アイリッシュのときも思ったが、外出に帽子が必須みたいな習慣が当たり前に描写されているんだな。オレもハットの習慣を持とうかな、と思わなくもなくもないね。オペラハット、鳥打帽…その違いが謎を作る?

残りページ数からして早く解決しすぎだとは思ったが、最後こうなるとは思わなかったな。わからないものだ。読んでよかった古典の名作、楽しめたよ。

影踏亭の怪談 (大島清昭)

怪談の短編集、呻木叫子シリーズ(?)。もうちょっとこう、夏に読んだ方が季節感が出たかな。まあそんなことはいい。

本格的な理論派のオカルト推理小説? って感じかな。この種の小説にあんまり手を出してこなかったから、どんな出来なのかはよく分からない。娯楽としては、なかなか悪くないと思う。推理小説だけに人は気軽に死んでいくのだが。

オカルトルポの原稿編と推理本編が散りばめられて、原稿では匿名、本編では実名という書き方の違いが文章のリズムになっていて云々…

寂しい狩人 (宮部みゆき)

下町の古本屋を舞台にした連作短編推理小説集。昭和末期くらいかな、文章の空気感がいい味を出す、この著者が好きそうな舞台設計。私も嫌いではない。

犯罪起こりすぎだけどね。推理小説だからしょうがないけど。短編集だからミスリーディングとかはあんまりなくて、少しひねるだけで、ほぼストレートで解決に向かっていく。そこに一家の問題が絡むところで統一感が出ているというか。その問題は、殺人とかと比べると他愛のない話ではあるんだが、当事者にとっては重大。

優等生は探偵に向かない (ホリー・ジャクソン)

ピップの話の続き。連続性には苦心していたけど、あんまりそこはいいんじゃないかな、と思ったな。

900ポンド返すとこまでが結末だと思ったが、そこは省略された。今のレートなら日本円で16万てとこか。そんなもんか。高校生でも、このくらいのネット上のスター選手ならスポンサー案でなんとかなる範囲だろう。

そしてこの後味の悪さよね。現代社会の闇か。関わった人のほとんどが不幸になる。前作もそうだったっけ。作者、ずいぶんやらかしたな~と思ってしまったくらい。推理小説ってどうしてもそうなるけど、ハッピーエンドを志向しても、いいんじゃないかなあと思った。特にこういう青少年向けのやつはさ。

自由研究には向かない殺人 (ホリー・ジャクソン)

女子高生探偵が颯爽と殺人事件を解決だ。と書くとふざけた内容だと思ってしまうのだけど、真面目に若者向けミステリだった。しっかり書かれていて、かなり面白かった。若い頃に読みたかったな。

色々と悲しいことが起きるのはちょっときつい部分もあるな。犬が死ぬのは受け入れられない。死ななくても物語は成立したはずだ。

街への鍵 (ルース・レンデル)

最初の公園のやたらにねちっこい描写を読んでってゲンナリしそうになり、多様な登場人物を覚えるのに苦労しつつ、群像劇のような形で物語が進む。だんだん視点となる主要人物が分かってストーリーが動き出すと、楽しく読めていく。

なかなかこういうのもいいですね。ただ序盤で心が折れて読めなくなる恐れはある。恐れたものの、前の悲劇がなかなか良かったので、私は信頼して読み進めた。

ともかく、殺人犯が捕まってよかったな。死体の発見状況はそれぞれ巧妙なトリックかと思ったけど、最終系としては筋肉トリック(?)か。力づくか。