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山椒の実

Category: Mystery

未必のマクベス(早瀬耕)

東アジアで企業の犯罪のその他いろいろの小説。無理やりマクベス?

そうです、シェイクスピアのマクベスをベースにして無理に似たような展開に持ち込んでいく。この無理矢理感をしっくり来る言葉で書くと「未必」ということなのか…文章が良いのですらすら読んでいるうちに朝の4時半になってしまった、そんな感じ。翌日は仕事中にあくびが止まりませんでした。どうしてくれる。

まあ話の展開としてはいろいろと唐突感もある。ここまで普通にやってたのに、なんでこうことするの、という類のね。それもこれもマクベスに引っ張られてのこと。登場人物の人数が若干多めだったので採点はなし。

オルファクトグラム(井上夢人)

異常臭覚を手にした男が姉を殺した犯人を追う話。セリフが与えられなかったミッキーがかわいそう…まあそこはいいとして、この犬に勝てる異常臭覚ですよ。凄い話だね。しかもこれ実話なんだってね!(←嘘です)

それはそうと、これはかなり良い読書体験だった。設定ですでに勝っている上に、ストーリーや描写も設定負けしていない。

新堂冬樹「無間地獄」「鬼子」

エロ/グロ/バイオレンスの描写力でいけ好かない登場人物を地獄に落とす話。

立て続けに2作品を読んでみたが、どちらの作品も見事に誰も救われない。すべての登場人物が信じがたいほど呪われる。まあでも文章が良くて描写が凄いのでどうしても引き込まれる。

そしていけ好かない主人公的人物。これが凄くしょうもない奴らなんですよ。背中で語れない男たち。風間令也にしろ、玉城慎二にしろ、ほんと薄っぺらくて気取り屋でいけ好かない。しかし憎めないのですよね。風間はフランスかぶれの小市民で、ウェイターを呼ぶのに「ギャハッソ〜ン」ですからね。それで客から一目置かれたと思い込んで悦に入っているわけです。玉城もカモを引っ掛けて美容製品にカネをつぎ込ませるだけで、別に悪いことはしてないんですよね。1度ならず2度も金貸しに騙されて。自分のルックスやセンスに酔っている描写にしても、あくまで自称ってだけですからね。遠之山になってからでもそんなにひどくない顔なんじゃないかって気がしますよね。

犯罪小説家 (雫井 脩介)

この人の小説は終盤があまり上手くなくて100%の出来にはならないのは分かっていた。最初に読んだ「火の粉」はそれでもかなり良かったが「栄光一途」の終盤のとっ散らかりっぷりの後なので正直読むのをためらった。しかしこちらはだいぶ良かった。これなら次も読める。

中身はまさに多摩沢文学。なかなか凄いが、やはり終盤にはもうちょっと救いがある展開にしても良かったんじゃないかと思う。たぶん、そのへんを考慮しないから終盤が上手くないという印象を受けてしまうんだろうね。序盤から中盤はいつも他に類を見ないほど良いのに。