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山椒の実

Category: Mystery

パズル・パレス (ダン・ブラウン)

ダ・ヴィンチ・コードのダン・ブラウンのデビュー作。NSAが舞台ですね。

計算機やそれを取り巻く人々の描き方の不自然さは置いておくとして、まずはその…エンセイ・タンカドですよね。日本人。もしかしたら広島には多い苗字なのかもしれない、と思う気にもなれないこのネーミング。日本語に訳すときになんとかならなかったの、と思ったけど、読み進んでいくとそういうわけにもいかなかったことが分かるという…この名前じゃなければいけない理由があるのだ。日頃から忍殺に訓練されているから不自然とすら思わない?

ロスト・シンボル (ダン・ブラウン)

ラングドンシリーズの第3作かな。ラングドンシリーズ…言わずと知れた宗教ウンチク活劇。今回もアメリカ合衆国の首都ワシントンDCを舞台にウンチクまみれのアクションで暴れ続ける。絵になりますな。CERNのやつ(天使と悪魔)とダ・ヴィンチ・コードを読んだのは1年以上前かな。先日の死都日本で久々にウンチク活劇いいなぁと思って、残るラングドンシリーズを読もうと。これで残すはインフェルノだけか。まあインフェルノもいずれ読む。

今回はアメリカ建国の父とかフリーメイソンとかそういう話。フリーメイソンの暗号でシンボロンを云々…。まあまずはそのウンチクですよ。詰め込んでくるからね。油断できない。最後はまたもボロボロになりながら悪を倒してなおウンチクを続けるというね。様式美? なかなか素晴らしい。設定や展開に納得行かない部分もあるんだけど、そこは別にいいや。ウンチクだけではなくて、ストーリーもちゃんと作ってきてるし。

アンダーリポート (佐藤正午)

15年前の殺人事件を、記憶を頼りに解決しようとする話。さすが「身の上話」を書いた佐藤正午。図書館で借りて、返却期限が迫っているのにもう一度読もうとすらしてしまう。主人公はいったい何者なんだ、というのはあるし、この女は結局どうなるのか、というのはあるんだけど、それもまた趣がある。まあ普通の人なんだけどね。普通で終わっていいのか、というね。

15年前、というのがキーになるのかなと思って読んでいた。殺人事件の時効が15年というのは今はなくて、昔の制度ではあるのだが、そういう設定なのかと。で、時間差があるので片方が時効になってもう片方が…みたいな展開になるのかと思ったんだよ。

人間の顔は食べづらい (白井 智之)

タイトルのインパクトを導いた設定で押し切ったSF推理小説、と思いきや、ちゃんとまともな推理小説として成立しているところが秀逸。まあ登場人物がみんな探偵気取りで、誰が本当の探偵役なのかという話ですね。ライトノベルの系統か、角川っぽい書き方ではある。

けっこう楽しめたが、ちょっとこの設定がやっぱ受け付けないんだよね。もっと文字数を使って重厚な感じにしても良かったと思う。

ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士 (スティーグ・ラーソン)

2の続き。リスベットが入院中にいろいろな人が暗躍する。まあなんだかんだで良識が勝つ。ちょっと普通に勝ちすぎて気持ちが悪くなるほど。ただこういう展開のほうが読後のスッキリ感はあるだろうね。2はまあ明らかに続きがあったけど、3のラストはそれほど多くの謎が残ったわけではないし。

ただまあ、1や2に比べるとドキドキ感は薄いな。描写がいろいろあって勝つことが分かってしまっていた。1は呪われた一族による孤島ミステリで先の展開を読みにくかったし、2は狂人軍団との対決で、設定の無理さを脇に置いとけばこれはなかなかの強敵だった。そして3はスパイ小説。ジャンルを変えながらの3部作。次はSFか何かか? と思わせつつも、この著者は4を途中まで書いて永遠の眠りについたらしい。そして権利関係でモメて4の途中までの原稿も日の目を見る気配はなさそうだ。これ以上この著者の本を読めないのはちょっと残念に思う。

ミレニアム2 火と戯れる女 (スティーグ・ラーソン)

ミレニアム1の続き。前作でサブ主人公だったリスベットがほぼ主役になり、謎が解き明かされていく。まだ残っている気がするが、それは3に続くんだろう。やはり出来は良いしミカエルは見境がない。相変わらず変態率が高いが、若いカップルは正常だった。残念なことにはなるが、そこに良心を見た気がする。

これミステリとしては探偵コンビであるリスベットとミカエルが一度もまともに会わないまま終わるんだよね。そのへんも良くできてて面白かった。すれ違い的なところもあり。

あと金髪の巨人はちょっと現実感がないな。人物設定に無理があると思う。しかもこのラスト、これじゃ絶対終わらないよね。そこも3部に続くのか…

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (スティーグ・ラーソン)

スウェーデン発のベストセラー。人口900万人の国で300万部売ったという伝説の小説。字を読む大人全員が買ったレベルか。出来は良いが、正直そこまで売れるテーマではないな。

孤島ミステリ、と言ってしまえばその通りなのだが、それに留まらない良い出来の作品だった。これで三部作の1作目ですから、次も期待できるってもんです。スウェーデンの人名は複雑で、さらに富豪一族モノでもあって(姓が同じ重要人物が多い!)、ついていくのが大変だった。

空飛ぶタイヤ (池井戸潤)

三菱自動車のあの事件をベースにした小説。実際はだいぶフィクションが入ってますが、迫力もあるし、財閥系の描写はいかにもそれっぽい。「沈まぬ太陽」ほどではないかな。まあでもさすがに池井戸潤。何者か実は知らないですが、奥さんに聞いたら「半沢直樹」の原作者だそうです。なるほどそう来たか…。

物語としては、理想的な人格者の運送会社の社長が単身財閥に挑み、打ち倒す、という話。家庭の問題とかも解決しつつ。

ただ、悪役にあまり華がないよなー。もうちょっと悩みながら悪を為してもよかったんじゃないかなー、とは思った。悪役にも感情移入したいじゃないですか。でも、分かりやすすぎるんで。

身の上話 (佐藤 正午)

宝くじの当選金を横領した人物の、なぜかヤケに詳しい身の上話を謎の男が語る。テレビドラマにもなったらしい。いろいろ事件が起きる。

この種の小説の常として、途中からもともと怪しかった人物はますます怪しく、全体的に雲行きが怪しくなり、起承転結、最後まで目が離せない。宝くじなんて最初からいらんかったんや!

こういう小説を読みたかった。この著者の他の作品も読んでみたいと思えた。