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山椒の実

Category: History

九十三歳の関ヶ原 弓大将大島光義 (近衛 龍春)

老いてなお弓の技術を持って数多の戦功を上げて大名にまで上り詰めた実在の武将を描いた小説。関ヶ原に従軍した時は93歳だったらしい。武将としては無名の部類ですが、凄まじいですね。最後に1万石を子供4人に分割して大名やめて旗本になったという話。

クライマックスが爺さん時代ということから、子供時代の云々とかどうでもいい話は抜きで構成されている。美濃の斎藤氏に仕えていたらしいが、桶狭間の時点でもう60近いからな。Wikipediaで見ると新陰流を開いた上泉信綱と同い年か…

超能力のトリック (松田 道弘)

奇術をベースにしたトリックで人を騙す超能力の話。歴史を遡りつつ、色々なトリックを紹介していて、なかなか面白かった。僕は超能力と言えばエスパー伊東だなと思っていて、まあ彼は高能力ではあるんだけど、こないだ引退報道のガセネタで踊ったりもして。

いろんなトリックがあるもんだなぁと思った。そして、騙しのテクニックを考え続けてきた、これまでの人類の歴史について考えてしまう。すごいよね。こうやって人々は進歩してきたんだ。この本自体も初版1985年という、すごい古い本なんだけれども。

インテル 世界で最も重要な会社の産業史 (マイケル マローン)

インテルの歴史本。3人(2人+1人)の創業者の系譜をたどる。ショックレー、フェアチャイルドから始まって今に至るまで。

まずこの本は文章量が多い。内容量と比べると文章量が多すぎて、技術者が読むとストレスを感じると思う。たぶん一度に書かれたんじゃなくて、長期連載か別媒体で書かれたものをまとめた、みたいな本なのかもしれないな。何度も同じ話を蒸し返すし、名前の表記も一定していない。時系列も頻繁に前後するし。名前の表記については、グローブの生い立ちからの話で名前が変わるのはわかるんだけど、それ以外のところね。

Unix考古学 Truth of the Legend (藤田 昭人)

例の本。Unixの歴史と対立による停滞と…をなぞっていく。

読む人によってポイントが違うんだろうけど、mbufが出てきたところでぐっとこう、懐かしさがね。あったねmbuf。Linuxだとskbuffか。私はそのへんの世界はFreeBSDから入ったクチだけど、今はもうLinuxとMac以外に触ることは珍しい。もう基本ユーザランドだしね。Windowsにはほとんど触らないで生きてけるんだ。

以前に読んだPaul Allenの自伝を思い出したりもした。あとUSENIX FASTでKirk McKusickの受賞演説を聞いたことあるんだぜおれ、ということも思い出したり。いろいろあったんだな。

日本航空一期生 (中丸 美繪)

JALの元スッチーにして伝記作家(?)が描いた、日本航空の初代社長の一代記。…で、いいんだよねこれ?

最初のほうは初代のエアガールへのインタビューとかをもとにいろいろ書いていて、なるほどこういうのが続いて現代まで行くのかな、と思っていたら途中から松尾という初代社長が主人公になって、松尾が死んで本が終わったという…ちょっとあっけに取られてしまったのはボーッと読んでいたからかもしれない。

現代語古事記 決定版 (竹田 恒泰)

大和の成り立ちが書いてあるという古事記。神話の解説をしつつ、(当時の)現代の天皇の御世に至るまでを記す。まあ悪いけどロクでもない記述なんだろうな、という印象を持っていたけど、思った通りだった。「史記」や「ガリア戦記」を思うと、この書物の価値は低いと思う。

なんでかというと、単に神々と天皇家の婚姻や内輪喧嘩の記録で、名前が大量に出てくるけど実際名前を記録するだけのための記述にとどまっている。事蹟が記述されるケースが少ないのだ。倭建命の冒険とかは割と書いてある。まあただ、歌がたくさん出てくるので歌集のように使うことはできると思う。ひどいのは誰と結婚して誰を生んだ、そんで死んだ、みたいなだけの記述だったり。何をしたか、どんな人物であるかが大切な現代のような時代とは異なる価値観を持つ時代だったということなんだろう。誰と結婚して誰を産んだか、が重要視される世界。いやだねー。

ブッダは実在しない (島田 裕巳)

仏教の成立とかそういう歴史をなぞっていく本。こういう本って面白い率が低くてたいてい読めないんだけど、これは割と面白かった。なにせブッダが実在しないという結論に達するんだから。ブッダ…その謎めいた男。

まあ日本に入ってきてるのは大乗仏教という、かなりエンハンスされたブディズムだからオリジンがどうなっていようが正直どうでもいい話。ブッダそのものに光を当てるという作業がキリスト教徒が見たブディズム研究によるものというのは割と納得が行く話なんだ。キリスト教ってのはジーザスがいないと始まらないわけだし今でもジーザスの言葉や事蹟を大事にしているからね。だがブディズムは違う。

死刑執行人サンソン – 国王ルイ十六世の首を刎ねた男 (安達 正勝)

フランス革命期にムッシュー・ド・パリつまりパリの死刑執行人を務めた人物の伝記。いろいろあったみたいですね。以前にフランス革命の本を読んで、そこで紹介されていたので興味を惹かれて読むことにした。激動のフランス革命を象徴するような人物ではある。

医者も兼ねていたらしく裕福ではあったが蔑まれ続けてきた存在。長らく残虐な刑の執行に心を痛めて。それがギロチンの発明と革命期と恐怖政治の間の無秩序な大量の死刑に遭遇する。苦悩しつつも敬愛する国王や王妃すらもギロチンにかけ、職務を遂行していく。彼の願い…死刑廃止…が実現するのはだいぶ後の時代になってからのこと。

孤児列車(クリスティナ・ベイカー・クライン)

その昔、アメリカで孤児を集めて里親を探しに走った孤児列車というものがあったらしい。確かに慈善事業なんだけど、家畜の品評会のようなものを受けさせられる子供には残酷でもある。その歴史的事実を元に記された小説。売れて評判が良いらしいということから、恐らくハッピーエンドになってみんな救われるんだろうなと思って読むことにした。やはりバッドエンドで終わる後味の悪い小説は読みたくないもので。

その地獄から地獄へと向かう旅路。受け入れる里親は里親としての責務を果たさず、単に無償の労働力として扱い、孤児の人生をすり減らしていく。そして行き着く先で出会った救い。人生と人生の交錯。いろいろと考えさせられた。ヘビーではあるが割と安心して読めるところもいい。

東京スタジアムがあった (澤宮 優)

かつて南千住にあった東京スタジアム、そしてオリオンズ、オーナーの永田雅一の思い出を語った本。オリオンズは今の千葉ロッテマリーンズですね。映画人が私財を投じて下町に作った夢のスタジアムを舞台にしたあれやこれや。

最近の国立競技場の騒動とかを見ても、スタジアムという巨大建造物はロマンですからね。それをポケットマネーで作っちゃうなんて、マジで男の中の男ですな。それだけの人だからまあ、いろいろな話はある。ただパ・リーグがまともに人気を得たのはここ数年の出来事ですから、球場はたまにしか満員にはならなかったみたい。割とモダンな球場で、記述を見ると今あっても良い球場と評価を受けたかもしれないと思う。