Skip to main content

山椒の実

Category: History

ブッダは実在しない (島田 裕巳)

仏教の成立とかそういう歴史をなぞっていく本。こういう本って面白い率が低くてたいてい読めないんだけど、これは割と面白かった。なにせブッダが実在しないという結論に達するんだから。ブッダ…その謎めいた男。

まあ日本に入ってきてるのは大乗仏教という、かなりエンハンスされたブディズムだからオリジンがどうなっていようが正直どうでもいい話。ブッダそのものに光を当てるという作業がキリスト教徒が見たブディズム研究によるものというのは割と納得が行く話なんだ。キリスト教ってのはジーザスがいないと始まらないわけだし今でもジーザスの言葉や事蹟を大事にしているからね。だがブディズムは違う。

死刑執行人サンソン – 国王ルイ十六世の首を刎ねた男 (安達 正勝)

フランス革命期にムッシュー・ド・パリつまりパリの死刑執行人を務めた人物の伝記。いろいろあったみたいですね。以前にフランス革命の本を読んで、そこで紹介されていたので興味を惹かれて読むことにした。激動のフランス革命を象徴するような人物ではある。

医者も兼ねていたらしく裕福ではあったが蔑まれ続けてきた存在。長らく残虐な刑の執行に心を痛めて。それがギロチンの発明と革命期と恐怖政治の間の無秩序な大量の死刑に遭遇する。苦悩しつつも敬愛する国王や王妃すらもギロチンにかけ、職務を遂行していく。彼の願い…死刑廃止…が実現するのはだいぶ後の時代になってからのこと。

孤児列車(クリスティナ・ベイカー・クライン)

その昔、アメリカで孤児を集めて里親を探しに走った孤児列車というものがあったらしい。確かに慈善事業なんだけど、家畜の品評会のようなものを受けさせられる子供には残酷でもある。その歴史的事実を元に記された小説。売れて評判が良いらしいということから、恐らくハッピーエンドになってみんな救われるんだろうなと思って読むことにした。やはりバッドエンドで終わる後味の悪い小説は読みたくないもので。

その地獄から地獄へと向かう旅路。受け入れる里親は里親としての責務を果たさず、単に無償の労働力として扱い、孤児の人生をすり減らしていく。そして行き着く先で出会った救い。人生と人生の交錯。いろいろと考えさせられた。ヘビーではあるが割と安心して読めるところもいい。

東京スタジアムがあった (澤宮 優)

かつて南千住にあった東京スタジアム、そしてオリオンズ、オーナーの永田雅一の思い出を語った本。オリオンズは今の千葉ロッテマリーンズですね。映画人が私財を投じて下町に作った夢のスタジアムを舞台にしたあれやこれや。

最近の国立競技場の騒動とかを見ても、スタジアムという巨大建造物はロマンですからね。それをポケットマネーで作っちゃうなんて、マジで男の中の男ですな。それだけの人だからまあ、いろいろな話はある。ただパ・リーグがまともに人気を得たのはここ数年の出来事ですから、球場はたまにしか満員にはならなかったみたい。割とモダンな球場で、記述を見ると今あっても良い球場と評価を受けたかもしれないと思う。

しんがり 山一證券 最後の12人 (清武 英利)

巨人でコップの中の嵐を起こしてクビになった、あの清武さんが、山一證券の自主廃業と残務処理をした人たちを描いた本。さすがジャーナリスト、こういう本を書くこともできるんですね。

山一證券の廃業はまあ私にとっては歴史上の物語です。1997年に廃業ですから、まだ株式投資が私の身近に来るずっと前の話です。私はネットの時代になってから始めたクチですから。最初はDLJ Direct SFGだったかな。いったん足を洗ったあと、すぐに楽天証券になっちゃったけどね。楽天証券になってからはほとんど取引をしていなかった。口座残ってるのかな?? その後、最近になって現物株を再開して、あの証券会社とあの証券会社を併用する現在の体制に。

物語 フランス革命 バスチーユ陥落からナポレオン戴冠まで (安達正勝)

フランス革命を描いた本。私のこれまでの人生ではフランス革命についてはあまり興味を持たずに過ごしてきた。そんなこともあって、もともとの知識が歴史の授業と「スカラムーシュ(ラファエル・サバチニ)」を読んだ、くらいしかなかった。「ガリア戦記」を受けてガリア(フランス)のその後の激動と言えばフランス革命だろうということでこの本を読んでみた。

まず言えるのは、この本は退屈せずに読める。これは非常に重要なこと。

読み進むにつれて、それまで私はフランス革命というのは単に資本家が王から権力を奪った事件、という理解だったのだが、これが真に革命だったのだ、ということが分かる。フランス革命はナポレオンの登場で終わるけど、フランスの歴史はその後も続いていて、読後にいろいろ調べてみたらかなり面白い。フランス、完全に近代ヨーロッパの主役じゃないですか。思想的な部分も優れている。

ファーストペンギンの会社—デジタルガレージの20年とこれから

デジタルガレージの社史みたいな本、ということだが、インターネットビジネスにおける日本のエース、伊藤穰一(Joi)とその仲間たちの昔話や座談会記録みたいな本。前半部がデジタルガレージの社史っぽい文章で、後半部が座談会。

ファーストペンギンというのはよく言われる言葉で、海に飛び込む1羽目のペンギンの勇気を褒め称える言葉。餌を得るために恐怖を振り切る。ためらいなく先陣を切る勇敢さを評する表現。

前半部はさらっとしたものだったけど、それなりに楽しく読めた。IT業界らしく、めまぐるしい。栄枯盛衰。カカクコムや食べログは一線で続けてるけど、infoseekは楽天に移ってからはさっぱり? テクノラティは以前は私もよく使ってたけど(日本版は)今はサービスしてない。ブログ検索はGoogleのやつもほとんど死んだも同然になってるし、流行らないんだろうな。kakaku.comがビジネスになって買収された流れは当時けっこう衝撃あったよね。

カエサルを撃て (佐藤 賢一)

若くして全ガリアを糾合しカエサルと雌雄を決するに至ったガリア最後の英雄、ウェルキンゲトリクスを主人公に置いた話。

正直どうでもいい話が強調されていると感じる。あの凄惨な焦土作戦をどう表現するのか、アレシアの戦いやそれに至る闘争をどう捉えるのか、気になったので読んだが、ある程度の狂人として描いてはいた。

ただね、デカマッチョかハゲ中年かというのは別にどうでもいいんですよ。チンポのでかさなんて英雄としての器とあまり関係ないんじゃないの。大衆の前で野蛮なことに及んだりする、主人公側の行状でホントかどうか分からんことをわざわざ強調する意図はどこにあるのかな。だいたい、野蛮人の風習とは言え気軽に強姦しすぎで、読んでいて気分の良いものではない。

ウィキリークスの内幕 (ダニエル・ドムシャイト-ベルグ)

WikiLeaksのナンバー2で広報担当みたいなことをしていて、ジュリアン・アサンジと喧嘩別れした著者が書いた本。

まあ喧嘩別れした一方の主張だけだから、その辺の内容は差し引くとしても、WikiLeaksの内部事情を書いた読み物としては単純に面白かった。技術的にもある程度まともな状態だったみたいだ。まあ、最初と最後の方はムチャクチャだったみたいだけど。

著者はこの本を記述した時点ではオープンリークスを立ち上げたところみたい。オープンリークスはこの本で初めて聞いたくらいで、あまり存在感がないよね。ドイツ語サイトしかないのかな。

日本インターネット書紀 (鈴木幸一)

日本書紀っつったら国生みとかヤマトタケル、だよねー。

この本は日本の最古参インターネット企業、IIJの創業者がつづる、日本のインターネットの歴史。まあ謎の規制との戦いですよね。

IIJが今まで生き残ってこれたのは、当時(1992年)インターネットで食っていけるなんて思ってる人は日本に他に誰もいなかったわけで、そこに着眼した時点で勝ちなわけです。企業を起こすには見通す目が必要。あとはタイミング。タイミング的にもベストに近かったはずだが、やはり規制との戦いがね。