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山椒の実

Category: History

「日本の伝統」の正体 (藤井 青銅)

日本の伝統と言われるものは数多いが、それほど長く続いている伝統ばかりではない、という事例を次々に紹介する本。雑学として多くの事例を知ることができて役に立つ感じ。

自分は伝統が長ければ尊いという思想はなく、むしろ新しいものの方が良いはずでしょ、という思想に近い。だけど歴史的なものを無視するつもりはなく、平均的な人よりは歴史が好きっていうのもある。というわけで楽しく読むことができた。

なるほどと思ったのは正座の項。正座が発明されて丁寧なものとされたのは、普段思っているよりも最近というね。普段から実に馬鹿馬鹿しい座り方だとは思っていたが。和式便器の座り方は足首の柔らかさとか脚力全般を鍛えるには悪くないと思うけど、正座はメリットが何もないよね。←実際はウォシュレットなしで生きていけないし、和式便器を好んでいるわけではないですが。

ロビンソンの足あと 10年かけて漂流記の家を発見するまで (高橋 大輔)

ロビンソンクルーソーのモデルとなったセルカークの暮らした場所を探る冒険。前半のストーリーが期待を高め、後半の発掘作業が学問と歴史の奥深さを知らしめる。

いい本を読んだなー、という感想を持った。考古学は私が考えていたほどいい加減なものではなかった。ここまで探求した者だからこそ書ける、最後の描写の臨場感ね。

セルカークその人は気難しい船乗りで、乗ってたのは私掠船という公認海賊。あまり近くにいて欲しくない人物像ではある。

知られざる皇室外交 (西川 恵)

天皇が皇太子時代から含めて外国に赴いたり、あるいは客人をもてなしたりする。その中でどのように振る舞ってきたのか、ということを記した本。

まあこれ、すごい話ではあるよね。一人(皇后もだから二人か)の人間にそれをさせて、その上で成り立つものがある。常人にはとても真似できない。

あと、自分も節目節目で短歌でも作ろうって気になるよね。これからスポーツ観戦の感想とか本の感想を書くたびに短歌作るようにしようかな。

心ある人の心を知らぬまま これまで僕は生きてきた

上杉謙信 (吉川英治)

青空文庫シリーズ。吉川英治がラインナップに加わり、俄然強力になった青空文庫ね。三国志に行く前にいくつか読んどこうと思っている。

この本を読んでまず驚くのは読めない/意味の分からない熟語があることだ。最近だとこういう経験は少ない。日本語なら難しそうな熟語でもなんとなく意味が分かるものだが…「各二の字点」? 「かくにの…」? どーゆー意味なの?? ただしこれはビューワの問題だった。「二の字点」は「々」の旧字か何かかな。Unicodeにありそうだけど…「〻」これか?? 読み終わったあとまで分からなくて、乱されてしまった。各々(おのおの)と読むべきだったのだ。まさかね。

コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった (マルク・レビンソン)

あの、輸送に使うコンテナで世界に革命を起こしたマルコム・マクリーンの物語。…を中心に、コンテナ革命について述べた歴史書。著者は多くのことを調べ、多くの文字を費やしているので何度となく眠くなった。だが考えてみれば、これは確かに大きな革命だ。産業構造を大きく変えて、安いものを大量に使えるようになった。ユニクロの服を着ているのも、中国産の日用品が安く買えているのも、コンテナによる流通革命のおかげなんだよね。

平安京はいらなかった 古代の夢を喰らう中世 (桃崎 有一郎)

平安京というものに関する研究結果と考察。平安京なんて最初からいらんかったんや!

サイズもおかしいしデザインもおかしく使いにくい。フルに完成させることもできず捨てられて今に至る。いろいろとおかしなところはあるみたいですね。朱雀大路の話とか知らなかったな。何も考えずに模倣でデザインすると痛い目に遭うって話だよね。これはもしや、ソフトウェア開発のエンジニアにとっても耳に痛い話?

自分はあまり知識がないもので、二条城が昔は内裏だった土地ってことなのかな? 今の御所とか祇園とかはどういうところなんだ…

九十三歳の関ヶ原 弓大将大島光義 (近衛 龍春)

老いてなお弓の技術を持って数多の戦功を上げて大名にまで上り詰めた実在の武将を描いた小説。関ヶ原に従軍した時は93歳だったらしい。武将としては無名の部類ですが、凄まじいですね。最後に1万石を子供4人に分割して大名やめて旗本になったという話。

クライマックスが爺さん時代ということから、子供時代の云々とかどうでもいい話は抜きで構成されている。美濃の斎藤氏に仕えていたらしいが、桶狭間の時点でもう60近いからな。Wikipediaで見ると新陰流を開いた上泉信綱と同い年か…

超能力のトリック (松田 道弘)

奇術をベースにしたトリックで人を騙す超能力の話。歴史を遡りつつ、色々なトリックを紹介していて、なかなか面白かった。僕は超能力と言えばエスパー伊東だなと思っていて、まあ彼は高能力ではあるんだけど、こないだ引退報道のガセネタで踊ったりもして。

いろんなトリックがあるもんだなぁと思った。そして、騙しのテクニックを考え続けてきた、これまでの人類の歴史について考えてしまう。すごいよね。こうやって人々は進歩してきたんだ。この本自体も初版1985年という、すごい古い本なんだけれども。

インテル 世界で最も重要な会社の産業史 (マイケル マローン)

インテルの歴史本。3人(2人+1人)の創業者の系譜をたどる。ショックレー、フェアチャイルドから始まって今に至るまで。

まずこの本は文章量が多い。内容量と比べると文章量が多すぎて、技術者が読むとストレスを感じると思う。たぶん一度に書かれたんじゃなくて、長期連載か別媒体で書かれたものをまとめた、みたいな本なのかもしれないな。何度も同じ話を蒸し返すし、名前の表記も一定していない。時系列も頻繁に前後するし。名前の表記については、グローブの生い立ちからの話で名前が変わるのはわかるんだけど、それ以外のところね。

Unix考古学 Truth of the Legend (藤田 昭人)

例の本。Unixの歴史と対立による停滞と…をなぞっていく。

読む人によってポイントが違うんだろうけど、mbufが出てきたところでぐっとこう、懐かしさがね。あったねmbuf。Linuxだとskbuffか。私はそのへんの世界はFreeBSDから入ったクチだけど、今はもうLinuxとMac以外に触ることは珍しい。もう基本ユーザランドだしね。Windowsにはほとんど触らないで生きてけるんだ。

以前に読んだPaul Allenの自伝を思い出したりもした。あとUSENIX FASTでKirk McKusickの受賞演説を聞いたことあるんだぜおれ、ということも思い出したり。いろいろあったんだな。