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山椒の実

Category: History

心 (ラフカディオ・ハーン)

明治の頃の気風をよく伝えてくれる本。時期的には、日露戦争前って感じかな。示唆に富んでいると言える。ような気がする。私は懐古主義ではないし、昔のほうが良いとか、古きに戻るべきとか、そういう気持ちになることはないんだけど。興味本位?

まあ何かしらの教訓を受けて良い将来を作れればいいだろうし。世の中はガンガン良くなっているとはいえ、微調整も必要だろうよ。その学習データとして歴史は良いものだ。

最初の停車場が凄かった。全体の方向性を決める、その決め手になるような衝撃。その衝撃のまま、読み進めることになる。

銃・病原菌・鉄 (ジャレド・ダイアモンド)

人類史の概略を示して論考を加えていく。結局のところ、我々とは何なのか。再現性のない長い歴史から何がわかるのか?

人類到達の時期と大型動物の絶滅と家畜の存在、資源と軍事力の差、農業と定住による人口増加がつながっていく。あくまで一度しか起きない物語と、その捉え方が全編を貫く。

支配するものとされるもの、どうして差がついたか…慢心、環境の違い? 慢心ではない、環境だ。人類史における民族や地域の差は、環境からくる必然で説明できるのだ。

歴史の本棚 (加藤陽子)

新聞の連載で近現代史に関する名著を紹介したものを本にまとめたもの。のっけから全5巻だか6巻だかの長編従軍小説を出してくるのはもう、読ませる気ないだろこの人。そんな時間は残されていないなあ。いや、もっとヒマになればあるいは?

本体の論ではなく書評で、しかも新聞連載でおそらく字数も決まっていたんだろう。1つ1つの紹介は短くまとまっていて、すっきり頭に入ってくる。そこは良かった。

まあ、軽そうなやつはいくつか読んでみるよ。読みたいリストには、何冊か追加された。はける間もなく追加され続けてきた、長大なリストに。

これが本当の「忠臣蔵」赤穂浪士討ち入り事件の真相 (山本博文)

浪人繋がりということで、日本史上で最も有名な浪人たちの本も読んでおこうと。

資料をもとに、あの事件を解き明かす。私は昔住んでいた場所が大石の基地や吉良の領地に近かったりするんで、何かと気になる事件ではあった。創作が氾濫して久しい状況で、創作と史実を分類して評価を加える。

よくまとまっていたと思います。当時の武士の価値観も理解が進んだ。喧嘩両成敗。

やはりこれは浅野が悪いな。その短慮に加えて、斬りつけておいて殺害できない不始末。せめてもう一太刀! それで家来に命賭けさしてケツを拭いてもらうなんて。それはともかく、浪士の立場による考え方の違いとか、吉良の若旦那の評価とかね。立派なやつも報われない。そんな世の中。

吉原花魁日記 (森光子)

父親が早死し、借金のカタに吉原に売られた女性の日記。まあ周旋人や周りの人を恨んでどうなるもんでもなくて、どう考えても母親が悪いんだけど、そこはなかなか恨めないんだろうな。最後の方は気づいているようだったが。

生々しくもひどい話だった。随分キツイな。こんな人生もあるんだな。全ての人が幸せになる世界はかくも遠いものか。この日記の冒頭が大正時代、1924年。今からちょうど100年前。100年経過して、今はどうか。どうなのか。たとえば当時と比べて教育や経済は進んだわけだけど。

消された信仰 (広野真嗣)

世界遺産の長崎の隠れキリシタンに関するあれこれを扱った本。書物なしの口伝で伝わるその教えはどのようなものか。キリスト教の本流でも聖書やなんやらはありつつ、教えは変容しているわけで。書物なしで隠れて信仰を続けて歳月を重ね世代を超えると、どうなるか。

明治以降もいろんな歴史が積み重なって今の状態になっている。それを書き記した、貴重な一冊なんだろうと思う。なかなかに、深い。読んでよかった。

統合を図るカトリックとの緩やかな対立関係もある。日本の学者がカトリック側からの視点しか持っていないのは残念に思う。まあ、キリスト教のような攻撃的な宗教だと、どうしてもそうなるよな…

社史の図書館と司書の物語 (高田高史)

川崎にある県立図書館で社史を集めている。その話。どこで読んだんだったかな。まあ、場所は知ってるんだけど、県立図書館は収蔵する本が自分向けとは思えないラインナップなので貸出カードも作っていない。社史ねえ。これは面白くも役に立つ活動だと思った。こういうのが公立の施設のあるべき姿なんだよ。

社史編纂室なんて、左遷の代名詞? みたいな勝手な印象も受ける文字列ではある…んだけど、会社のことを歴史に残す活動には重要性もある。

東方見聞録 (マルコ・ポーロ/青木富太郎訳)

自宅の近所に「丸子」という地名があります。そんな奇縁から読むことになったこの有名な旅行記は獄中で作家に語った内容が書物になった…らしい(獄中と言っても犯罪を犯したわけではなく、敵対国の捕虜になった)。だから、現代に起きたことであれば、著者はその作家ということになるだろうか。あるいはスポーツ選手の自伝のようにライター(インタビュアー)の名前は著者としては扱われないのだろうか。まあそんなことはどうでもいい。

黄金の国ジパング伝説 (宮崎正勝)

ワクワク伝説ってのがあったんですね。楽しい語感だなずいぶん。日本と共にジャワ島にも黄金伝説があったとは知らなかったな。いろいろ楽しい歴史の本だった。奥州の金が尽きて銀山が発見され、黄金の国から銀の国になったとか。カネの匂いがする史実って、なかなかいいもんだなあ。

金銀島の探索あたりは資料も多く残っているみたいで臨場感がある内容だった。思いがけず北海道の話か続いたのも印象的。砂金でゴールドラッシュの頃があったんだな。

織田信忠 天下人の嫡男 (和田裕弘)

割と学術寄りの、織田信長の後継ぎの人物に関する本。若死にしたが、家督も受けているし、軍功も多い。この年でここまでの経験と実績を持つ武将もいねえな、という著者の感覚ももっとも、と思えた。

本能寺の変での死を避けられるルートが実際あったが、それを選べなかった…というのも事後諸葛亮と言うべき指摘。あの時点で味方の時は有能だったはずの明智が実は無能…というのは分からないよ。無理からぬことだし、その後の展開を知らずに低く評価することはできまい。