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山椒の実

Category: Classic

縛られたプロメテウス (アイスキュロス)

プロメテウスと言えば時系列DBで監視系のソフトウェアの名前ということになって久しいが、古くはギリシャ神話の登場人物で、人類に炎を渡したテクノロジーの化身と言える人物ですね。タイタン系なので、巨人なのかな。

著者は例の、アイスキュロスだよ。こういうのを読むのも良いだろうよ。ギリシャ好きにはたまらないんだろうな。

これは…劇の台本か。とにかく、、、

ゼウスはクソ! ゼウスはクソ!! ゼウスは、クッソ!!!

夜歩く (ディクスン・カー)

バンコランのシリーズ。ホラー味のある。ダメ、絶対。

この種の本では、言い回しがかっこいいことがあるんだよな。メモ帳を手に読みたくなる。序盤で早速、いつか言ってみたい言い回しを見つけた。

「ところで、この部屋は客を殺害する以外の何かの目的で使われているのかね?」

いつ使おうかな。ワクワクしてきたぜ。

しかし、フェンシングの達人が簡単に首チョンパされるとは信じがたい。最近では日本の選手も世界で活躍していて、ちょうど今やっているオリンピックでもすごいことになってますが。私の頃も日本代表に入るような選手は練習や試合で手合わせして、自分からするとすごい強かったですが、世界ではなかなか上には行けてなかったですね(一応経験者です…ガチ勢の底辺、くらいの)。その感覚でいえば、あの人たちが1回戦負けするような大会で優勝するのが世界チャンピオンだよ? そんなスキがあるとはとても、ねえ。

ウォー・ゲーム (P.K.ディック)

ディックの短編集。らしさがあってワリと良かった。気軽にこういうのを読めると楽しい人生になりそうだ。だけどそれぞれ、あんまり印象には残らなかったなあ。後半のオモチャのやつとか、タイムマシンのやつはちょっとは残るけど、結末はもう忘れてしまった。そのくらいな感じで、どんでん返しも大団円もないし、どっぷり引き込まれる前に終わってしまうんだよな。

ディックと言えばどうしても、セルフイメージと現実とのギャップ…みたいなテーマを期待してしまうので、期待が高いと外れたと思うかもしれない。自分が通勤電車で読むにはちょうど良かった。

戦闘妖精・雪風 (神林長平)

昔読んでいた本。物理本で、まだ持ってるんだよね。シリーズに最近新しいのが出たということで、通しで読もうと思った。深井零、懐かしいなあ。相変わらず、お元気そうですねえ。まるで実家のような緊張感だ。剣呑。共感できそうでできない、人間らしくもあり人間らしくもない主人公。どこか現実感のない、まるで地球からフェアリィを見ているかのような雰囲気で物語が進むんだよな。

改めて、これが1980年代に書かれたことを思う。このあと実際に無人機が地上の人間を殺戮して回る世界が来て、今はもっと安価なドローンも主役級に躍り出ている。この40年。

フランケンシュタイン (メアリー・シェリー)

これ青空文庫にあるんすね。それもそうか。派生物も多く、その後の人類に多大な影響を与えたホラーSF長編。

物語のスジはもともとは知らなかったのだが、そしてSF超入門を読んであらすじを知ったのだが、なかなかの良さがあった。鳥山明が同じ物語を書けばそれは人造人間とドクター・ゲロになったんだろうし、仮面ライダーとかもその系譜かな。

創造主と創造物。それぞれの苦悩、というテーマは十分に深いから、その大きな流れを伝える一作、という評価になるんだろうねえ。後世の作品はそれなりに縒れるけど、このフランケンシュタインと怪物はどうか。

普通に出来が良くて、現代人が読んでも充分に楽しめる内容だった。読んで良かった。身勝手な天才にふりまさわれた犠牲者と、犠牲者の犠牲者を思うと、悲しくてしょうがなかった。つまりこれ、主人公だけが群を抜いてクソ。

ブラッドベリは歌う (レイ・ブラッドベリ)

SF系の文章家、ブラッドベリの短編集。中村保男訳の版。

フワッとした、結末にインパクトを置かないものがほとんどだが、中ではリンカーンを暗殺するやつが良かったかなー。SFらしさもあり、SFらしくなさもある。

ディケンズのやつもそうだけど、なんか狂った人が出てくる話ばかりだな。小説は少なからず、みなそうか。

ヘリコプターが頻繁に出てくる。当時はもっと一般人が使う乗り物になると思われていたんだろうか。

あとは、ディケンズをなにか読まなければならなくなった。なんという誤算。そういうことするから信用できないんだよ、昔の作家ってのは。ブラッドベリにとっては別に誰だって良かったんだろうけど、ディケンズかー

暗黒星雲のかなたに (アイザック・アシモフ)

駄作と言われているらしいが、どんなものか。

まあ普通に楽しく読めたよ。昔のSFベースの推理小説としてはいい方と言えるのではないか。大作家は水準が高すぎるんじゃないのかな。絶賛すべき傑作かと問われるとちょっと推しにくいものはあるが。深みとか凄みとかは、ないからなー。

夜来たる (アイザック・アシモフ)

古典SFの短編集。名作と言われている。実際凄いな。今読んでも、普通に優秀なSFとして読める。これが1941年に書かれたという事実。戦前!? かろうじて江戸時代ではない…それは言い過ぎとしても、真珠湾攻撃の年だよねえ。なんとも驚異的だ。

今宵は百万年に一度おお、と歌い出すあの曲も、この古典名作がベースにあるんだねえ。

この作品は名作だけあっていろんな短編集に含まれていたり長編に書き直されたりしているようだが、私が読んだのはグーテンベルク21のやつで、クリスマスとタイムマシンの短編も含まれていた。タイムマシンのやつ(赤い女王のレース)はかなり良かった。王道叙述トリックホラー的な。

自分の中に毒を持て (岡本太郎)

言いたいことも言えないこんな…

川崎が誇る伝説の一人、岡本太郎。その代表著書の新装版の文庫を読んでみた。実績上、どうしてもアーティストという立場が強調されがちだが、彼に関しては思想家でもあるのだ。芸術ってこういうことなんだよなー。

なかなかいいことが書いてある。この人の文章は常に本気だし、小賢しくなくていいよ。芸術ってのはこうじゃなくちゃね。

こういうマジな本は知恵を持ち始めてひねくれたティーンエイジャーに読ませたいな。自分も読んで良かったと思う。そして真似して妙なことをし始めたら、その時は温かく見守りたい。

消え失せた密画 (エーリヒ・ケストナー)

ドイツの肉屋がデンマークで戦う。少年向けのような内容だが、主人公が間の抜けた肉屋のオヤジだからなあ。登場人物それぞれキャラは立っているし話は面白かったが、チグハグさは否めないな。ラストの展開も怒涛。

小道具の密画というのも良かった。高価っぽくて取り回しが良い。偽物の準備も万端で、物語もテンポが良くて引き込まれるし、電車の中の暇つぶしに読むのには手頃だった。

と言ったように、全体的には楽しく読めた、良い作品だった。