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山椒の実

Category: Books

太陽の簒奪者 (野尻 抱介)

ファーストコンタクトもののSFですね。割とハードなやつという感じ。非常によく書けてるということが伝わってくる。このリアル。

途中までは凄く良かった。まあこれコンタクトしたところで「うーん」となるんじゃないかというね。まあそうだよなぁ。実際コンタクトするまではかなりリアルに書けても、コンタクトしたところはリアルに書けないよね。

私としてはかなり好きな部類。この作者の本はもうちょっと他にも読んでみたいところ。

少年探偵団 (江戸川乱歩)

またも青空文庫で少年向け古典小説。

しかしまあ、子供向けとはわかっていてもグイグイ引き込まれるストーリーテリング、そのテクニック。凄い。今でも色褪せない。永遠とはこういうことを言うための表現なのかもしれないね。

まあ言葉狩りが進んで最近だと許されない表現もチラホラ。それも含めての古典、だよねー。まさかまさかで最後の爆発オチも今後に期待を持たせてくれて熱く、良い。やっぱ江戸川乱歩は凄かったんだな。

サポーターをめぐる冒険 Jリーグを初観戦した結果、思わぬことになった (中村 慎太郎)

作家志望の中途半端な青年がFC東京というどうでも良いJリーグクラブのサポになるまでを描いた本。文章はあまり上手くないけど、伝わってはくる。まあ私は現場を知ってるから言いたいことは分かるというね。ただ知らない人にこれが伝わるのかどうか、それはわからないな。東大の大学院まで出た文筆家にはFC東京はちょうどいいクラブだと思うよ。近いし、適度に強く、そして強すぎない。俺たちと同じ、マゾ体質? まあ、クラブ選びは成功してると思った。

日本航空一期生 (中丸 美繪)

JALの元スッチーにして伝記作家(?)が描いた、日本航空の初代社長の一代記。…で、いいんだよねこれ?

最初のほうは初代のエアガールへのインタビューとかをもとにいろいろ書いていて、なるほどこういうのが続いて現代まで行くのかな、と思っていたら途中から松尾という初代社長が主人公になって、松尾が死んで本が終わったという…ちょっとあっけに取られてしまったのはボーッと読んでいたからかもしれない。

現代語古事記 決定版 (竹田 恒泰)

大和の成り立ちが書いてあるという古事記。神話の解説をしつつ、(当時の)現代の天皇の御世に至るまでを記す。まあ悪いけどロクでもない記述なんだろうな、という印象を持っていたけど、思った通りだった。「史記」や「ガリア戦記」を思うと、この書物の価値は低いと思う。

なんでかというと、単に神々と天皇家の婚姻や内輪喧嘩の記録で、名前が大量に出てくるけど実際名前を記録するだけのための記述にとどまっている。事蹟が記述されるケースが少ないのだ。倭建命の冒険とかは割と書いてある。まあただ、歌がたくさん出てくるので歌集のように使うことはできると思う。ひどいのは誰と結婚して誰を生んだ、そんで死んだ、みたいなだけの記述だったり。何をしたか、どんな人物であるかが大切な現代のような時代とは異なる価値観を持つ時代だったということなんだろう。誰と結婚して誰を産んだか、が重要視される世界。いやだねー。

怪人二十面相 (江戸川乱歩)

言わずと知れた名作。少年探偵。小林くんだな。そして明智小五郎。懐かしいなぁおい。

最近青空文庫に入ったんだよなこれ。ということで早速ダウンロードして読んでみた。小学校時代に読んだんじゃないかという記憶があるけど、けっこう覚えてるもんだな。かなり思い出せる。時代的にはちょっと前の話にはなるものの、それなりに舞台がしっかりしていて描写もほどほどにリアリティがあって、けっこうちゃんと読ませるよね。子供でもここまでのものを読むんだな。情操教育的にも素晴らしいんじゃないか。

ねじれた絆-赤ちゃん取り違え事件の十七年- (奥野修司)

沖縄で起きた赤ちゃん取り違え事件を追う。看護師のミスで取り違えられて、幼稚園年長の6才で発覚し、交換で元に戻そうとしながらもなかなかうまく行かずに…文庫本の追加まで含めると最後は30才くらいまでなるから、17年どころの話ではない。

興味深い話ではあるんだけど、読むんじゃなかったと後悔した。いや、悪い本だと言っているわけではないです。このテーマでこの分量を読んでしっくり読み終われるほど成熟した人間になってないんだろうな、オレ。

だれの息子でもない (神林長平)

神林長平らしいSF。自分の人生を記憶し自分を模倣するようなネットアバターが普及しているという設定。いわゆる自我科案件(忍殺で言うところの)ですね。火星かなんかを舞台に似た設定のやつがあったなぁ。『帝王の殻』だったかな。最近は実際にスマートフォンが副脳みたいになってる世の中だし、この設定はいい線いってるんだよね。

そして長々しい考察の独白が続いて、ああこれが神林長平だよなぁと。昔ずいぶん好きだったんだよね。雪風とか、海賊課シリーズとか。若いころはこういうのを繰り返し読んだものだ。

月は無慈悲な夜の女王 (ロバート・A・ハインライン)

月が地球から独立して自由を勝ち取るまでを描いた名作SF。長い。

武器らしい武器を持たずにどうやって自由を勝ち取るか。いろいろあってまあ、当然勝つんだけど、いろいろある。名作だけあって凄く良く練られているし、徐々に明かされていく設定なんかも非常にそれっぽいリアルがある。これぞサイエンス・フィクション、と呼べるね。名作と呼ばれるのもうなずける。

もっと若いころに読んでおくべきだったな。この年齢になると、ここまでの大作はむしろ辛かったりするので。

無戸籍の日本人 (井戸 まさえ)

いろいろな理由で戸籍に登録されずに過ごすことになった人々が、どうにかして戸籍に登録したりする話。著者は元衆院議員で、自身の経験からずっと戸籍を得たい無戸籍の人の手続きを助けてきたらしい。戸籍がないと住民票やパスポートの発行も難しく銀行口座も開きにくく(不可能ではないみたい)、教育や就職にも不都合があるケースが多いらしい。義務教育すら受けられていないケースも多いとか。

まあ親にどんな事情があるとしても、無戸籍となった子供に責任があるはずもなく、責任のない人物が不利な扱いを受けるというのは正義に反する。そして親の事情というのもいろいろで、出生届を出せなかった親に責任を負わせるべきとは思えないケースも多い。