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山椒の実

Category: Books

空飛ぶタイヤ (池井戸潤)

三菱自動車のあの事件をベースにした小説。実際はだいぶフィクションが入ってますが、迫力もあるし、財閥系の描写はいかにもそれっぽい。「沈まぬ太陽」ほどではないかな。まあでもさすがに池井戸潤。何者か実は知らないですが、奥さんに聞いたら「半沢直樹」の原作者だそうです。なるほどそう来たか…。

物語としては、理想的な人格者の運送会社の社長が単身財閥に挑み、打ち倒す、という話。家庭の問題とかも解決しつつ。

ただ、悪役にあまり華がないよなー。もうちょっと悩みながら悪を為してもよかったんじゃないかなー、とは思った。悪役にも感情移入したいじゃないですか。でも、分かりやすすぎるんで。

日本インターネット書紀 (鈴木幸一)

日本書紀っつったら国生みとかヤマトタケル、だよねー。

この本は日本の最古参インターネット企業、IIJの創業者がつづる、日本のインターネットの歴史。まあ謎の規制との戦いですよね。

IIJが今まで生き残ってこれたのは、当時(1992年)インターネットで食っていけるなんて思ってる人は日本に他に誰もいなかったわけで、そこに着眼した時点で勝ちなわけです。企業を起こすには見通す目が必要。あとはタイミング。タイミング的にもベストに近かったはずだが、やはり規制との戦いがね。

身の上話 (佐藤 正午)

宝くじの当選金を横領した人物の、なぜかヤケに詳しい身の上話を謎の男が語る。テレビドラマにもなったらしい。いろいろ事件が起きる。

この種の小説の常として、途中からもともと怪しかった人物はますます怪しく、全体的に雲行きが怪しくなり、起承転結、最後まで目が離せない。宝くじなんて最初からいらんかったんや!

こういう小説を読みたかった。この著者の他の作品も読んでみたいと思えた。

フロンターレあるある (いしかわごう)

俺達のフロンターレに肩入れするスポーツライター、いしかわごうがフロンターレ公認の本を出した。それがこの「フロンターレあるある」。

私はこの本を市内のとある本屋で平積みされているのを見かけ、子供を横目でマークしつつぱらぱら立ち読み。ジュニーニョが不動産屋をやってると書いてあるのを確認して、即座に購入した。それだけで購入の価値があります。他にもいろいろ楽しいネタがたくさん。

思ってたよりもずっと、いい本じゃないですか。読んで楽しい。人生が充実する。私はこの本がきっかけでバラ色の人生を送ることに…

東大教授 (沖 大幹)

東大教授とはどのような職業であるのか、ということを論じた本。別に深い内容があるわけじゃない。ただ東大教授の生態を記した、それだけの著作。

とりあえず東大教授というのは悪くない職業であることは分かった。だけど、記述は退屈で、読む価値はなかったように思う。まあタイトルに偽りはない。おれは何を期待して読んだんだろう、って話でもあるんだが。

ピルグリム (テリー・ヘイズ)

図書館で借りるんじゃなくて買って読むのが正解だったな。私は図書館で借りたので、1巻を読んでからしばらくして2巻を読んで、3巻まではあまり空きはなかったんだけど、そういうわけで一気に読みたかったのに途切れ途切れになってしまったというのは後悔している。

中身は非常に面白い。この本はほぼ完璧な出来なんだけど、中盤の活劇の描写はそれほどうまくないようにも。そこ以外はまさにパーフェクトなスパイ小説。この著者は映画系の人で、小説は初めてらしい。無駄につなげちゃったな、と思うところもある。最後の武器はやっぱコレしかないよね、というのも。

内乱記 (ユリウス・カエサル)

名著「ガリア戦記」の続編。まあオマケみたいな扱いだが、ガリア戦記の素晴らしさと比べるとだいぶ落ちる。翻訳も「新訳 ガリア戦記」と比べると良くなかった。

なぜ落ちるかというと、内乱だけに激戦が少なく簡単に投降してきたり裏切りが多く、爽やかさが全くない。あと敵対勢力のほころびを大きく言い過ぎていて、有り体に言えばバカにしすぎていて、ガリア戦記で見せた冷静な目がなくなっている。ガリア戦記を読んだ後はこれ、後世の書物はいらないんじゃないかとさえ思えたけど、内乱記を読んだら、もうちょっとうまく書いた本がないとダメだよな、と思えてくる。カエサルも筆力が衰えたんだな。いろいろ都合もあるんだろうけどね。

教誨師 (堀川惠子)

浄土真宗の僧侶、渡邉さんの半生を描いた伝記。彼は広島で被曝、長じて東京で僧侶となってから長期間、死刑囚の教誨師として過ごした。途中アル中になったりして。

救いとは何か? という話ですよね。結局そこ。そこに、死刑囚であるが故に、という話がからむ。まあ、読んでみるといいですよ。

新訳 ガリア戦記 (ユリウス・カエサル)

あのカエサル本人が書いたベストセラー。ローマの英雄ね。淡々と平易な文章でガリア戦争の経緯を書いている。勝ち戦も負け戦も、感情や自慢をなるべく交えずに1段上から書いており、非常に良い。わかりにくいのは人名くらいで、臨場感があって読みやすいのもいい。カエサルがこんな本書いてたなんて。これからはシーザーサラダももっと味わって食おう。

司馬遷の「史記」もそうだけど、現代の小説や歴史書と読み比べても、読み物として優れており、俺達は一体2000年以上も何をやってたんだと思わなくもない。紀元前にこれをすでにやってたわけだ。ほんと、進歩してないよね。

ミレニアム(永井するみ)

2000年問題で大変だった当時のソフトウェア業界を舞台にした推理小説。

2000年になった日、私はまだ学生だった(2000年の4月に社会人になった)ので大した仕事はしてませんでしたが、バイト先で2000年問題対応のBIOS入れ替えとかの作業をして回った記憶があります。当時の社会人に聞くと「ありゃ大変だったよね」という話を聞きますが。

この小説もまあ当時の技術の話も出てきて、それなりにリアリティがあったんじゃないでしょうか。インドラツールがどうとか、あのへんは怪しさ全開でしたけどね。あれ系の人手でやってる知的作業を自動でやっちゃいます的なものは定期的に出ては消えていきますよね。まあ当時から比べて、ある程度は良くなってますけど、今でもコードは人が書いたり修正してます。論理の部分は現在でもマシンではうまく回らない。いつまで続くのやら…