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山椒の実

Category: Books

しんがり 山一證券 最後の12人 (清武 英利)

巨人でコップの中の嵐を起こしてクビになった、あの清武さんが、山一證券の自主廃業と残務処理をした人たちを描いた本。さすがジャーナリスト、こういう本を書くこともできるんですね。

山一證券の廃業はまあ私にとっては歴史上の物語です。1997年に廃業ですから、まだ株式投資が私の身近に来るずっと前の話です。私はネットの時代になってから始めたクチですから。最初はDLJ Direct SFGだったかな。いったん足を洗ったあと、すぐに楽天証券になっちゃったけどね。楽天証券になってからはほとんど取引をしていなかった。口座残ってるのかな?? その後、最近になって現物株を再開して、あの証券会社とあの証券会社を併用する現在の体制に。

青函トンネルから英仏海峡トンネルへ―地質・気質・文化の壁をこえて (持田 豊)

国鉄で青函トンネルを掘り、英仏海峡トンネルのアドバイザーも務めたトンネルの第一人者、持田さんが書いたトンネルの本。あまりに淡々と技術的な話を次々に書いていくのだが、それだけでも迫力はあるね。読ませる文章ではないが、中身が純粋に事実の積み重ねだからね。真実は伝説を超える。

前半は就職以来ずっと関わっていた青函トンネルの話。オヤジがお手製で作った潜水艦を使って調査する話とか、水平ボーリングの話とか、いろいろある。技術的な要素が次から次へと語られていくのは爽快感も感じる。値段が3倍になるセメントの話なんかはとても実感がこもっていた。まあ語り口はあまりにも淡々としすぎていて主張という部分に欠けるんだけどね。正直な感想を言えば…「無茶したね」という感じ。

賭博者 (ドストエフスキー)

文豪・ドストエフスキーの異色作。本人の体験を元に、バクチに狂った人々を描く。書いた経緯がいいよね。バクチ旅行ですってしまい、出版社に泣きついて速攻で書いた(口述筆記)とのこと。さすが俺達のドストエフスキーだよ。そう来なくちゃね。

バクチの描写が良かった。バクチの場面だけは生き生きとしている。それ以外の場面はまあ、普通にドストエフスキーだな。周囲の人物の怪しさもいい。どの人物を取ってみても、まんべんなくあやしすぎる。最後まで何一つ明らかになってないし(笑)。大した伏線が張り巡らされているわけじゃないし、物語とかそんなこんなには意識を向けることなく、賭けまくる。そしてラストもいいよね。やっぱそうでなきゃドストエフスキーじゃないよ。さすがだぜドストエフスキー。俺達のドストエフスキー。

賭けマージャンはいくらから捕まるのか? 賭博罪から見えてくる法の考え方と問題点 (津田 岳宏)

この直球タイトル。序盤でタイトルに対する回答がある。実際は検挙されることはほとんどないが、高レートでやると捕まることもある。私の場合はセットで低レート(テンゴのゴットーとか)でしかやったことがないので、捕まるケースではなかったようだな。まあやってた頃は捕まる危険性なんて全く感じていなかった。リャンピン東風戦で捕まった蛭子さんも略式起訴で罰金10万円という処分だったらしい。そもそも悪事じゃないんだよ。

突変 (森岡浩之)

突然、異世界に移ってしまうSF話。これがそういう説明では言い切れないほど書き込み量もあって、本としては分厚い。しかし読みやすくて内容もある。ストーリーの流れ方もスムーズかつドキドキ感を忘れさせない。これには思わず一気読みですよ。非常に良い読書体験だった。

まあ突然と言っても世界で見ればちょくちょく起きていて、人々の間にもある程度の備えがあるわけ。言わば裏側と入れ替わる形なんで、過去に裏返った地域の情報が出回っていたりする。日本でも、久米島が裏返り、次に大阪が丸ごと裏返ったりしている。その中で関東の狭い町内だけが裏返ってしまった…そこでどうする、という感じになる。物語としては表の日常や人生があって、徐々に裏返る設定が明らかにされつつ、それは起き、そして…

諦める力 〈勝てないのは努力が足りないからじゃない〉 (為末大)

ハードラーとして活躍した為末の本。100mを諦めてハードルに転向してトップアスリートになった経験をもとに、人生とは取捨選択であると説いた。頑固になるのではなく、自分に向いてることをする勇気を持てと。100mは彼にとって夢で、通用しないと悟って諦めたわけだ。で、高校時代の監督の助言を元にハードルをやってみたら、やっぱそっちのほうが向いていた。諦めずにやってたらやがて潰れて、何者にもなれなかったろう、という実感があるんだろうね。

ミトコンドリア・ミステリー 驚くべき細胞小器官の働き (林 純一)

代表的な細胞内小器官であるミトコンドリアに魅せられた研究者が、これまでの研究成果を一般向けにまとめた本。一線の研究者が研究内容について書いた本ですが、普通に書かれているので、あまり退屈せずに読めると思います。

10年以上前(2002年)に書かれた本なのでかなり古い話だろうと思うのだが、充分に興味深い内容。ミトコンドリアは酸素を使ってエネルギーを作り出してくれるのだが、元は現在の生物の祖先に取り込まれた生物だった、子供は母親のミトコンドリアを受け継ぐ、というくらいの知識はあった。ミトコンドリアはいろんな病気の原因という説をたびたび立てられていて、この著者はそれにまつわる様々な真実を明らかにしてきた。

物語 フランス革命 バスチーユ陥落からナポレオン戴冠まで (安達正勝)

フランス革命を描いた本。私のこれまでの人生ではフランス革命についてはあまり興味を持たずに過ごしてきた。そんなこともあって、もともとの知識が歴史の授業と「スカラムーシュ(ラファエル・サバチニ)」を読んだ、くらいしかなかった。「ガリア戦記」を受けてガリア(フランス)のその後の激動と言えばフランス革命だろうということでこの本を読んでみた。

まず言えるのは、この本は退屈せずに読める。これは非常に重要なこと。

読み進むにつれて、それまで私はフランス革命というのは単に資本家が王から権力を奪った事件、という理解だったのだが、これが真に革命だったのだ、ということが分かる。フランス革命はナポレオンの登場で終わるけど、フランスの歴史はその後も続いていて、読後にいろいろ調べてみたらかなり面白い。フランス、完全に近代ヨーロッパの主役じゃないですか。思想的な部分も優れている。

あの子が欲しい (朝比奈 あすか)

就職活動の採用側を描いた小説。ドライな描写、短めの文章、展開早めでエンタテインメント性を高めた感じ。なかなか楽しめた。

主人公が同棲相手を切ったときの嫌味な感じは著者の実体験か何かかな。あれはムカつくよねぇ。あんまり感情がない人が主人公なのだけど、時折見せる人間の感情、そして学生との勝負に負けて、ラストにつながる。

ラストの暗喩(?)もなかなかのもの。そう来たか。そういうテーマだったんだこれ、と最後に気付かされる。

ネットで人生、変わりましたか? (岡田有花, ITmedia News)

いわゆる「IT戦士」として人気を得ていたITmediaの(元)記者の記事を中心に2007年にまとめたもの。解説も2007年時点のものなので、古臭さは否めないところ。2つの時代(元記事の時点と解説の時点)の当時を交互に思い出しながら読むしかない。はてな押しが激しいがまあ、当時はそういう感じでしたしね。

おおまかには、ネットに救われた個人を描くシリーズ、と言えばいいのかな。クリエイターとかブロガーとかビジネスが不得手な起業家とか。