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山椒の実

Category: Books

通訳日記 ザックジャパン1397日の記録 (矢野大輔)

日本代表監督・ザッケローニの通訳を務めた矢野さんの日記を書籍化したもの。良い本だった。長谷部への言葉とかは泣けるね。サッカーの監督ってのはこう、情熱的なものであるべきなんだ。

まず、この本は誰のことも悪く書いてない。そのへんの人柄があります。選手やスタッフとの距離感も凄く良く書けていると思う。そして監督の情熱。名監督ってのはこういうことなんだよね。本気なんですよ。チャレンジとしてはワールドカップのグループリーグ1分2敗での敗退。確かにひとつ前の南アフリカと比べて成功とは言えないんだけど、いろんなものを残したよね。代表が前に進むに当たって大きな4年間ではあったろう。

100万回生きたねこ (佐野洋子)

日本を代表する絵本。ねこの話で、意味がわからなくても感動するという不思議な絵本。

これいろいろな考えを持つ人がいるんだろうけど、結局「生きてない奴は死ねもしねえんだよ!」ってことなんじゃないかと思った。こいつやっと生きることができた、だから死ねたんだと。

このねこ、100万回飼われて…まあ100万は比喩だと思いますけど…全部の飼い主を嫌いだったんですね。でも飼い主は全部このねこを好きだったんです。で、死ぬと泣くんです。そして(恐らくは丁寧に)埋葬する。でもねこは飼い主が嫌いだった。

ブッダは実在しない (島田 裕巳)

仏教の成立とかそういう歴史をなぞっていく本。こういう本って面白い率が低くてたいてい読めないんだけど、これは割と面白かった。なにせブッダが実在しないという結論に達するんだから。ブッダ…その謎めいた男。

まあ日本に入ってきてるのは大乗仏教という、かなりエンハンスされたブディズムだからオリジンがどうなっていようが正直どうでもいい話。ブッダそのものに光を当てるという作業がキリスト教徒が見たブディズム研究によるものというのは割と納得が行く話なんだ。キリスト教ってのはジーザスがいないと始まらないわけだし今でもジーザスの言葉や事蹟を大事にしているからね。だがブディズムは違う。

パズル・パレス (ダン・ブラウン)

ダ・ヴィンチ・コードのダン・ブラウンのデビュー作。NSAが舞台ですね。

計算機やそれを取り巻く人々の描き方の不自然さは置いておくとして、まずはその…エンセイ・タンカドですよね。日本人。もしかしたら広島には多い苗字なのかもしれない、と思う気にもなれないこのネーミング。日本語に訳すときになんとかならなかったの、と思ったけど、読み進んでいくとそういうわけにもいかなかったことが分かるという…この名前じゃなければいけない理由があるのだ。日頃から忍殺に訓練されているから不自然とすら思わない?

最期まで自分らしく生きるためにできること (ホスピスケア研究会)

ガンで死ぬにあたって何をすべきかを記した本。まあこういう本を読もうというのは健康診断で引っかかって厄介なことになる可能性がそこそこ出てきたため。まあそりゃそうですよね。死神がまた俺を捕らえに来たのか、それとも。まだそれ以上の悪い結果は出ていないので、今後どうなるか分かりませんが、私もたいがい腫瘍体質なもんで、いずれそうなるだろうという予感はあるんだよね。遅かれ早かれ。

自分のことで言うと、子供の教育費。これが3人いるから、だいたい1人1500万と言われてますから4500万。まだほとんど消化できてません。これをどうにかしなきゃ3人を大学までやれないのよね。それに加えて生活費も当然必要になる。奥さんを含めた4人が年間300万で生活するとして下の子が大学卒業の22才までだと…割とでかい。うーむ300万は使えんなー200万で生活してもらうか。さらにあれをああして、これをこうするとどうにかなるか、ならないか。いろいろ計算してますが…なかなかね。そううまく行くわけでもなくて。とにかく計算だ。計算せよ。

ロスト・シンボル (ダン・ブラウン)

ラングドンシリーズの第3作かな。ラングドンシリーズ…言わずと知れた宗教ウンチク活劇。今回もアメリカ合衆国の首都ワシントンDCを舞台にウンチクまみれのアクションで暴れ続ける。絵になりますな。CERNのやつ(天使と悪魔)とダ・ヴィンチ・コードを読んだのは1年以上前かな。先日の死都日本で久々にウンチク活劇いいなぁと思って、残るラングドンシリーズを読もうと。これで残すはインフェルノだけか。まあインフェルノもいずれ読む。

今回はアメリカ建国の父とかフリーメイソンとかそういう話。フリーメイソンの暗号でシンボロンを云々…。まあまずはそのウンチクですよ。詰め込んでくるからね。油断できない。最後はまたもボロボロになりながら悪を倒してなおウンチクを続けるというね。様式美? なかなか素晴らしい。設定や展開に納得行かない部分もあるんだけど、そこは別にいいや。ウンチクだけではなくて、ストーリーもちゃんと作ってきてるし。

死刑執行人サンソン – 国王ルイ十六世の首を刎ねた男 (安達 正勝)

フランス革命期にムッシュー・ド・パリつまりパリの死刑執行人を務めた人物の伝記。いろいろあったみたいですね。以前にフランス革命の本を読んで、そこで紹介されていたので興味を惹かれて読むことにした。激動のフランス革命を象徴するような人物ではある。

医者も兼ねていたらしく裕福ではあったが蔑まれ続けてきた存在。長らく残虐な刑の執行に心を痛めて。それがギロチンの発明と革命期と恐怖政治の間の無秩序な大量の死刑に遭遇する。苦悩しつつも敬愛する国王や王妃すらもギロチンにかけ、職務を遂行していく。彼の願い…死刑廃止…が実現するのはだいぶ後の時代になってからのこと。

死都日本 (石黒耀)

クライシス系の本。火山の破局噴火を扱ったもので、割と話題になっていたと思う。いろいろな部分で示唆的ではある。決してスカッとする話ではないが。

神話の解釈とか国民性みたいなものはうまく書けているし、突拍子もないような内容の部分もすんなり読めた。

実際にこの本では日本がほぼ滅亡する。それどころか北半球が壊滅みたいなレベルで。その中でも主人公(?)が奥さんを助けに行くところなんかもリアルに書いていて、なかなか良かった。しかも時間軸で見るとこれ発生から24時間だもんな。かなり詰め込んだ。がんばった。

延長50回の絆 中京vs崇徳 球史に刻まれた死闘の全貌 (中 大輔)

高校軟式野球で早くも伝説となっている2014年の準決勝、延長50回までやった試合とそれにまつわる何やかやを描いたノンフィクション。高校野球で軟式というのがまあちょっとマイナー感がありますが、まあどんなマイナーなスポーツでもそうなんだけど、トップの高校は相当真剣に取り組んでいるものです。

この本はまず「延長50回」という言葉の神秘さですよね。次に全貌を知っていくとこれどうなのよ、となる。私としては、そこで野球人生が終わるんであれば最後までやったほうがいいと思うけど、まあいろいろしっくりこないところはあります。

火星の人 (アンディ・ウィアー)

SFの傑作。あの映画ゼロ・グラビティにも似た。単純に、火星に単独で置いてかれた青年がサバイブする。余計なものを一切省き、それでいて描ききる。すげー。おれは前からこういう話を読みたかったんだよ。これだよコレコレ。非常にリアルなSFね。ホンモノの。まじで最高だわ。

まず主人公のキャラクターだ。いかにもNASAにいそうなのエンジニア。共感が持てる。こうありたい。そして環境。あとクルーとか地球にもいろいろあるんだけど、やはり火星という環境のリアルと主人公のリアル。これがしっかりしているから安心して読めるんだ。奇想天外な話や展開なんて必要ない。SF小説家というのは魅力的なキャラクターをただその環境と法則に置いて、みんなが自然に行動する。サイエンスだ。それがSFの真髄なんですよ。