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山椒の実

Category: Books

私がベアリングス銀行をつぶした (ニック・リーソン)

デリバティブ取引に莫大な額を突っ込んだ不死身のギャンブラー、あの伝説のニック・リーソンがその一部始終を書いた本。たった一人で200年以上続いた名門銀行を潰す! この人はシンガポールから日経平均に突っ込んだという変わり種? 途中からは市場規模に対してポジションが大きくなりすぎて破綻。大和銀行でやっぱり同じようなことに陥った人もいましたね。

しかしこの銀行には無責任の塊のような奴らが集まっていたんですねー。この人自身も相当なものだ。なんせ、願望だけで莫大な資金を賭け続けるんだから。しかも酔っ払いながらね。そこはもうちょっと勉強しようよ。最初は部下の失敗を誤魔化してあげていたという事情らしいが。

コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった (マルク・レビンソン)

あの、輸送に使うコンテナで世界に革命を起こしたマルコム・マクリーンの物語。…を中心に、コンテナ革命について述べた歴史書。著者は多くのことを調べ、多くの文字を費やしているので何度となく眠くなった。だが考えてみれば、これは確かに大きな革命だ。産業構造を大きく変えて、安いものを大量に使えるようになった。ユニクロの服を着ているのも、中国産の日用品が安く買えているのも、コンテナによる流通革命のおかげなんだよね。

小説家の四季 (佐藤正午)

先日大きな賞を受賞した、佐藤正午のエッセーをまとめた本。これで作者の狂気が感じられるだろうか。自分はそれを感じたが。一般的に見て、さすがにあまり常識人とは思えない。読んでる自分もそれほどの常識人ではないのですがね。

サイン会のくだりが抜群に良かったな。ボルのくだりはしつこすぎる。しかもこれ、元は3ヶ月に1回の連載ものでしょう? ボルの話を1年以上してたのか…マジでか。さすがに最後にオチをつけるのは作家ならでは、かもしれない。しかし私はエッセーよりも小説を読みたいな、と思った。あとは、「小説の読み書き」の方が面白いのかもしれないというのは思った。

技術は戦略をくつがえす (藤田元信)

近代の戦史において、技術の向上が戦略の上を行くようになったという事実を元に教訓を得ていく話。割と興味深いと思った。自分は技術にばかり目を向けていたんだけど、戦略との対比という考え方は思っていなかったので。

ちょいちょい良い感じの雑学を絡めていくのも好感が。「タンク(戦車)」の語源とかね。ちょうど今の仮面ライダーで「ラビット」「タンク」「ベストマッチ」というのがあるらしくて、「ラビット」はウサギだよ、「タンク」は水槽とか戦車…どっちなの、みたいな話をしていて、私はさっそく、戦車の「タンク」の語源について子供に語って聞かせてあげました。まあ信じたかどうかは不明ですね。普段、よく真面目にデタラメを教えてたりするんで。

三流 (長嶋一茂)

言わずと知れた長嶋茂雄、その人の息子である一茂へのインタビューを本にしたもの。こういうのの著者を一茂の名前にしてしまうのはちょっとどうかと思うよ。まあスポーツ選手の本は多くがそうなんだけどね。

で、一茂だ。親があの人で、恵まれた体格と筋力。イージーモード設定の人生なんだけど、彼は親父を目指してしまった。本人がいみじくも言うように、父親のようになりたい、という平凡な夢はまるで太陽に挑むようなものだったワケで、これは流石にハードモードでしょう。どんな神がかった素質があったところで、長嶋茂雄を超えられるなんてことは…

ウォッチメイカー (ジェフリー・ディーヴァー)

シリーズものなんですねこれ。どういう経緯で読むことにしたのか思い出せないんだけど、とにかく読んだ。

途中までは良かった。途中からはちょっと都合の良すぎる展開かと。しかもあんまり事件が解決している気がしないので後味もそれほど良くないんだが。まあ続編があるということなんだろうね。しかも最後の方の「セミコロン」関連の推理なんて日本語訳では通用してない気がする…これは仕方ないか。序盤から中盤までは非常に読ませるし、変態クズ野郎物語の最後のあたりなんてかなりいい感じだった。

東芝 原子力敗戦 (大西 康之)

江戸時代のからくり人形師から始まった、140年の歴史を持つ東芝。まあご存知の通り潰れようとしていますけども、何が起きたのか。

WHの買収で下手を打ってそれを誤魔化そうと奮闘してたんだろう、という話なんだけど、自分としては売上高5-6兆円の企業が6000億? くらいの買い物をして潰れるほどの問題になるというのがちょっと納得いってないんですよね。値段の問題ではなく、つけていた条件がおかしかったという話なんだろうなぁ。

誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち (スティーヴン ウィット)

現代のデジタルミュージック時代をもたらした人々について綴った力作。かなりの力作ですよこれは。5年かかったらしいですが、それだけのことはある。歴史に残る著作かもしれないね。

その、それぞれの立ち位置ね。3つの視点がある。それぞれ大物で、

  • 表の音楽界の大物
  • 技術者の大物
  • アングラの海賊の大物

という3人の人物。音楽ビジネスを壊し、再生させるのに必要だった3人。前者2人は金持ちになったけど、最後の海賊の人達は大して儲かってないね。みんなほぼ無罪で、有罪になったやつも数ヶ月で出てきて普通に暮らしているらしい。なるほど。

宇宙のランデブー (A.C.クラーク)

名作SF。古典だけどかなりの迫力があり、今でも通用するだろう。あと100年程度で他の惑星に大量の人間が住んでいるとは思えないけど、時代設定は割とどうでもいいので。

実際に恒星間航行することを考えると、そこには人工生物を載せる以外には考えられないと思うんだよね。今の人間のような生物を乗せていくにはエネルギー消費や重量も問題になる。というか惑星間ですらそう思う。いわゆる「シンギュラリティ」がその前に来るんだろうから、それは必然とも言えるだろうね。

勝負論 ウメハラの流儀 (梅原大吾)

数々の伝説に彩られた格ゲーの主人公、先駆者であり思想家でもあるプロゲーマーのウメハラ(Daigo)が世に問う。「勝つこと」とは? そして「勝ち続けること」とは?

もし今、就職活動をしていて面接で聞かれたら尊敬する人は「ウメハラ」これ一択ですね。そのくらい、ここ数年で最大の名著でした。スゴい。第1章からすっと腹に落ちてくる。あなたに子供や後輩がいたらこの本を読んでもらいたいと思うでしょう。

やっぱ本物の男が紡ぎだす文章ってのは、普通のそこらの自己啓発本なんかとは違う。これは永遠に成長をやめない本物の先駆者・トップ選手であり続けた男が書いた論理的な本なんだよ。二流のスポーツ選手が自伝をゴーストライターに書いてもらってなぜか著者に名前が入っているようなクソ本とかとは重みが違うんだよ! これだけの人生を送っても醒めている。夢を追いながら、覚醒している。覚醒してなお、夢のようなことをやってのける。