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山椒の実

Category: Books

シンギュラリティ 人工知能から超知能へ (マレー・シャナハン)

シンギュラリティ(技術的特異点)と呼ばれるものに関する本。AIが人間の脳を越えるという話で、まあ確実に来るであろうし、自分が生きている間に見てみたい、そしてそいつを欺いてみたいものではある。実際のところはどうなのか。まだまだいくつもブレイクスルーが必要。

この本で参照されていた、Googleの人が書いた論文(100万の整然としたデータよりも100億の雑然としたデータの方が良いとかいうもの)を会社でチラッと読んだりもしてみたけど、今の技術ではやはり遠いな、という感じがする。畳み込みニューラルネットワークの全盛期もそう長くは続くまい。実際の人間は100億はおろか100万もの言葉のデータが整理されていなくても、会話に不自由なく詩すら奏でられるわけだし…

東大卒プロゲーマー (ときど)

格ゲーの達人・プロであるときどがその半生をつづる。先日劇的な優勝を飾ったらしく、話題にもなりました。私は格ゲーは嗜まないんですけど、読んでみた。

なかなか良かった。情熱ね。自分に情熱は足りているか、子供たちはどうだ、と思いを馳せる。ウメハラの本も読みたくなったよ。まあ本人が言うように周りの人に恵まれたというのもあるんだろうけど、この人は能力が高いんだよね。

ある事件で研究者に情熱を持てなくなって大学院を去るところは残念に思った。それなりに優秀で情熱を持って成果を上げたが、研究ではなく試験で蹴落とされたっていうね。院試ってのがあるんですね。私は早稲田ですが同じ研究室に上がるときは試験というのはなくて、学部の成績で落とされたり、合わなくて移籍することはあったかもしれないけど、普通はフリーパスでした。東大は確かに院試があるって話は聞きましたね。

横浜駅SF (柞刈湯葉)

横浜駅を舞台としたSF。横浜駅とは言ってもここで言う横浜駅は本州全土を覆う構造物だ。何を言っているのか分からないが、実際にそうなんだから。

かなり楽しく読めたよ。そのうち来るであろうシンギュラリティの先にある物語、かな。

書籍化に当たってだいぶ加筆されているらしいけど、元の物語はネットでも読めるみたい。

平安京はいらなかった 古代の夢を喰らう中世 (桃崎 有一郎)

平安京というものに関する研究結果と考察。平安京なんて最初からいらんかったんや!

サイズもおかしいしデザインもおかしく使いにくい。フルに完成させることもできず捨てられて今に至る。いろいろとおかしなところはあるみたいですね。朱雀大路の話とか知らなかったな。何も考えずに模倣でデザインすると痛い目に遭うって話だよね。これはもしや、ソフトウェア開発のエンジニアにとっても耳に痛い話?

自分はあまり知識がないもので、二条城が昔は内裏だった土地ってことなのかな? 今の御所とか祇園とかはどういうところなんだ…

ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か (エリヤフ・ゴールドラット)

小説じたての教科書、みたいなものか。工場の最適化問題を解く話。長いけど、一気に読めた。かなり面白い。

全体的に見て非常によく考えられているし理論が練られていると感じる。ボトルネックを探す。ボトルネック以外はゴミなので暇になったらちゃんと休ませる。ボトルネック部分は必ずフル稼働。なるほどね。

問題解決が一本道なのは教科書だからか。現実は失敗も多いと思うし、そう都合よくボーイスカウトで事件が起きたりはしない。夫が息子のボーイスカウトに付き合って出かけている間に妻が幼い子を捨てて出て行ってしまうなんてことも、たぶん多くないだろう。子供連れて出てっちゃう、ならあるのかもしれないね。

東大助手物語 (中島 義道)

随分昔に東大助手だった人物が、当時の変な教授にいじめられたことを記した自伝。

うーん、この著者も相当な変人なんだというのは伝わってきたけど、教授も変人。まあ東大の教官なんて変人でなければ務まらないよね。結局教授の理不尽な要求に耐えかねて上の人に直訴して決着をつけるんだけど、学者の喧嘩ってのは学術的にどういう位置にいるかによるんだよね。この著者はカントの研究でそれなりに実績を積んだ優秀な学者という感じの立ち位置で、対する教授は大した実績がなく、地位はあるけども研究している風でもない。

ハダカデバネズミ - 女王・兵隊・ふとん係 (吉田重人, 岡ノ谷一夫)

奇妙なネズミを研究対象に選んだ物語。魅力に溢れている? まあ女王とオスと兵隊と労働者…ハチやアリのような集団生活をする哺乳類…ネズミで、土の中に暮らす。17種類の言葉を使い分けてコミュニケーションを取り、変温動物で、このサイズの動物としては異常な長寿…まあそりゃ奇妙ですよね。著者らが興味を持つのもうなずける。

読み物としての分量も適切で、イラストも良かった。

止まった時計 麻原彰晃の三女・アーチャリーの手記 (松本 麗華)

あのアーチャリーの半生をつづった自伝。この人の人生もかなりのハードモードですね。本自体はなかなか良かった。当事者の文章から、真実をどう読み取るか。

まーどうしてもこの人に何らかの責を負わせたい人がいるってことは知っているが、理性で考えてみようよ。当時年端もゆかぬいたずら少女に何ができたのか。そして、この人にしか見えなかった景色がこの自伝によって明らかになる。

度重なる入学拒否にめげず、裁判を起こして大学卒業までこぎつけた根性には恐れ入るよね。そして母親はクソだな。

刑事ファビアン・リスク 顔のない男 (ステファン アーンヘム)

北欧系のミステリ。まあちょっと後味も良くなかったし、中身もちょっと緻密さに欠ける部分があったように思う。そしてこの無意味な設定はなんなんだ。その設定いる? みたいなのが目立つんだよね。

まあでも文章量も多く、しっかり書き込まれているし、雑さも気にならないレベルなのかも。シリーズ物っぽくもある書き方だけど、これがデビュー作なんだってね。まあ今後に期待できるかもしれないが…読まないだろうね次は。