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山椒の実

Category: Books

イップス 魔病を乗り越えたアスリートたち (澤宮 優)

スポーツ選手を襲う魔病。医学用語ではなくゴルフ用語らしいね。思ってたよりも広くある症状だと。原因もはっきりしているわけではないし、治療法も確立されていない。

興味深かったのは、最後のあたりに出てきた1万時間理論のあたりか。どんなものでも上達するのは練習時間にして1万時間くらいで、それ以上はやっても効果がない。それで練習は上達のためでなくコンディション調整に徹することでイップスのようなものを避けると。

ゲーマーとかもイップスなるのかな? マリカーでドリフトできなくなるとか…スプラでハイプレ打てなくなるとか。私もコード書きイップスになっても不思議はないな。突然printf書けなくなるの。まじで恐怖でしかない。防ぐには、いろんな環境、いろんな言語でコードを書くと。あーでも、コードよりも、こういう駄文を書けなくなるのが一番つらいかも。

期待の科学 悪い予感はなぜ当たるのか (クリス・バーディック)

プラシーボみたいな現象を説明する書。心理の生み出す魔をどう使えば人類の幸福につながるのかな?

サッカーのPK戦やバスケのFTから始まって、様々な実験、検証について紹介しながら話は進む。こないだの幻肢の話も出てくる。なかなか興味深い話だ。なかなかの力作と感じられる。

現在華やかなりしAI分野も、こういった心理の魔といった類の分野に手を出すようになるまであと何年かかるかな? 現実の脳の働きというのは思ったよりも複雑だな、という印象は強くなった。

動物になって生きてみた (チャールズ・フォスター)

イグノーベル賞受賞。奇書の一つだろうなこれは。動物になって生きてみた、タイトルそのまんまの話。のっけからアナグマになってミミズ食べてるし。

比喩的な叙述が多すぎて読むのが疲れたよ。こんな話、ここまで字数を稼ぐ必要があるんだろうか。外国文学に特有のアレですね。あっちでは単語数でギャラが決まるため、良い作家は無駄に多くの単語を費やす傾向がある、とかいう与太話だか本当の話なんだか分からない説もあるよね。

とりあえず、キツネの「もしもし」の話が印象に残った。日本人が電話で「もしもし」と発声するのは、キツネは「もしもし」とは発音できないため、キツネに騙されないようにしている…という話ね。なるほど! そうだったのか。

組長の妻、はじめます。女ギャング亜弓姐さんの超ワル人生懺悔録 (廣末 登)

関西の女ギャングの半生をつづった本。まあテンポも良くて読みやすい本だったと思うよ。なんというか…GTAな人生って言えばいいのかな。

組長の妻、を前面に押し出したタイトルは内容とは乖離がある。これは組長の妻の話などではない。確かに最終的には旦那が組長になったんだけど、一人の女ギャングの話。悪事としては覚醒剤と車泥棒がメインで、多くの手下を使って手広くやっていたような記述。社会にとっては迷惑な話ではあるが、それなりに、一定の役割があったんではないだろうか。

上杉謙信 (吉川英治)

青空文庫シリーズ。吉川英治がラインナップに加わり、俄然強力になった青空文庫ね。三国志に行く前にいくつか読んどこうと思っている。

この本を読んでまず驚くのは読めない/意味の分からない熟語があることだ。最近だとこういう経験は少ない。日本語なら難しそうな熟語でもなんとなく意味が分かるものだが…「各二の字点」? 「かくにの…」? どーゆー意味なの?? ただしこれはビューワの問題だった。「二の字点」は「々」の旧字か何かかな。Unicodeにありそうだけど…「〻」これか?? 読み終わったあとまで分からなくて、乱されてしまった。各々(おのおの)と読むべきだったのだ。まさかね。

神楽坂 (矢田津世子)

神楽坂のケチな金貸し。奥さんの死に関連するあれこれを描いた小説。青空文庫で読めます。

彼の人生の意味って何なんだろうね。充分なカネを稼いだのなら、引退して南の島でのんびり暮らせばいいのに。…と、自分が同じ立場になることはなさそうなので適当なことを言いだしてますが、特に感動があるわけでもなく、大きな驚きがあるわけでもない物語が淡々と続くこの感じね。好きな人は好きなんだろうな。この小説を読んで、時刻表のトリックくらいは使っても良かったんじゃないかなんて思ってしまう自分の人生は一体なんなんだ??

東芝 粉飾の原点 内部告発が暴いた闇 (小笠原 啓)

東芝の没落を日経ビジネスが記録していく。WHの赤字のスクープを出したのが日経ビジネスで、当時内部告発の窓口を作って、色々情報を集めたようだ。かなり臨場感のある書籍になっている。なかなか興味深かった。無論こんな本だから、読後感は良くないよ。

東芝問題の戦犯はまあWH買った奴なんだろうけど、そのあとは色々あって、それぞれの人物の動機は割と納得の行く合理的なものなんだな、というのは感じたね。

東芝没落の経緯というのは学習しがいがあると思う。ビジネススクールとかではこういう本を元にロールプレイして味わい尽くしてるんだろうなぁ。WHを買った後に社長に就任したとして、会社を潰さないためにどういう決断をして行くか、みたいな。

私がベアリングス銀行をつぶした (ニック・リーソン)

デリバティブ取引に莫大な額を突っ込んだ不死身のギャンブラー、あの伝説のニック・リーソンがその一部始終を書いた本。たった一人で200年以上続いた名門銀行を潰す! この人はシンガポールから日経平均に突っ込んだという変わり種? 途中からは市場規模に対してポジションが大きくなりすぎて破綻。大和銀行でやっぱり同じようなことに陥った人もいましたね。

しかしこの銀行には無責任の塊のような奴らが集まっていたんですねー。この人自身も相当なものだ。なんせ、願望だけで莫大な資金を賭け続けるんだから。しかも酔っ払いながらね。そこはもうちょっと勉強しようよ。最初は部下の失敗を誤魔化してあげていたという事情らしいが。

コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった (マルク・レビンソン)

あの、輸送に使うコンテナで世界に革命を起こしたマルコム・マクリーンの物語。…を中心に、コンテナ革命について述べた歴史書。著者は多くのことを調べ、多くの文字を費やしているので何度となく眠くなった。だが考えてみれば、これは確かに大きな革命だ。産業構造を大きく変えて、安いものを大量に使えるようになった。ユニクロの服を着ているのも、中国産の日用品が安く買えているのも、コンテナによる流通革命のおかげなんだよね。

小説家の四季 (佐藤正午)

先日大きな賞を受賞した、佐藤正午のエッセーをまとめた本。これで作者の狂気が感じられるだろうか。自分はそれを感じたが。一般的に見て、さすがにあまり常識人とは思えない。読んでる自分もそれほどの常識人ではないのですがね。

サイン会のくだりが抜群に良かったな。ボルのくだりはしつこすぎる。しかもこれ、元は3ヶ月に1回の連載ものでしょう? ボルの話を1年以上してたのか…マジでか。さすがに最後にオチをつけるのは作家ならでは、かもしれない。しかし私はエッセーよりも小説を読みたいな、と思った。あとは、「小説の読み書き」の方が面白いのかもしれないというのは思った。