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山椒の実

Category: Books

宇宙ビジネスの衝撃–21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ (大貫美鈴)

ライトな読み物として最近の宇宙のトレンドを紹介。要はアメリカの億万長者が次々に参戦し、アメリカ流にビジネスが入り込んでくることで発展が見込めるって話。次々に宇宙トレンド話をなぞって出して勢いよく見せている。いろんな話をバラ色っぽく書いているんだけど、記述内容は本当なのだろうか?

用語でいうとコンステレーションのところはついていけずググって理解しなければならなかった。多数の小さな人工衛星を使って人工衛星クラスタを組むって話ね。ホールスラスタの説明(推進剤を使わずに電気だけで推力を得る?)は疑わしいなと思ってググったら、やっぱ違うじゃん。物理法則ナメんな? こういう、表面だけなぞってポンポン出してくる話は疑ってかからなきゃいかんよね。表面はいいんだけど、この本は表面すぎた感じ? この本を元に知ったかぶりをしたら恥をかくだろうな。だが勢いだけは本物だぜ。

DEEP THINKING ディープ・シンキング 人工知能の思考を読む (ガルリ・カスパロフ)

あのカスパロフが書いた、AIの本。最近になってAlphaGo事件もあったから、再び脚光を浴びる。幅広く活躍されてますね。私も何となく思っていたことが言語化された面もあり、ディープブルーとの試合やそこに至るまでの道のりが、一方のプレイヤー側の視点で語られる。あまり知られてないよな、この話。単に専用ハードをガリゴリやってパワー勝負でチャンピオンに勝ち、人類が機械に破れた…という物語ではない。我々はそういう印象を持たされてはいるけれども、実は違うんだ。だいたい1年越しの1勝1敗の時点で、IBMが勝ち逃げするために機械をブッ壊してしまったという、割と情けない結末。しかもカスパロフは不利な条件で戦った上に凡ミスで負けてるんで。会話を盗み聞いたり、スパイ的な手段も使ったらしい。

消された一家―北九州・連続監禁殺人事件 (豊田 正義)

日本の犯罪史において最大級の犯罪となった、北九州での虐待からの族殺事件を描いたノンフィクション。しかも自分は殺害行為には手を下さず、家族同士で殺させて死体の解体もやらせたっていうね。信じがたい悪。凄惨な虐待。何だこれ。ここまで胸糞悪いのは久々…いや初めてか?

うーん…

私もこういう、精神攻撃による状態異常…デバフって言うんですかねRPGとかだと。そういうものへの耐性は強くないので、どうやったら犠牲にならないかの対策を考えておく必要があるのかもね。こいつのターゲットの選び方を見ると、自分に当てはまる条件も割とあったりするんでね。即逃げ安定だろうけど、状況もある。それができるだろうか。正常性バイアスっつーか…待ってれば良くなるなんて思ったり、家族が人質になったりして、どんどん逃げられなくなっていく可能性。

AI vs. 教科書が読めない子どもたち (新井 紀子)

東ロボくんを作っていた数学者が、その狙いとこれから必要になる教育を語る。かなり話題になった本。

まあシンギュラリティは当分来ないよ、というのは実感としてあるんだろう。実際今のニューラルネットワーク系の技術だけで行けると思っている人は少ないとは思うんだよね。シンギュラリティに至るまでにあといくつかのブレイクスルーが必要というのは感覚としてはあり、ただしそのブレイクスルーの数はそろそろ指で数えられるくらいなんじゃないの、という感じでしょ。

ルポ 川崎 (磯部涼)

川崎南部の音楽シーン、特にBAD HOPていうヒップホップクルーを中心に、音楽ライターが描く川崎。川崎南部独特の空気ね。産業道路の向こう側とか…それで通じますか。まーそれでも川崎のほんの一部でしかないんだけどね。

確かに、北部だとオザケンだからなぁ。まー南部でも東山さん(ジャニーズ!)とかだっていたんだがぁ?

私の住む中原区は南部(危ないほう)に属する。南部の前線として、隣の高津区と抗争を繰り広げてきた歴史がある…んだが、今はどちらも中部として括られているという認識が一般的かな。

ルポ 父親たちの葛藤 仕事と家庭の両立は夢なのか (おおたとしまさ)

男性の子育てに関するケースを紹介したり、統計データを紹介したり。結論は…ケースバイケースです。家庭の形というのは一通りではないので、それもそうなんだけどね。

世帯年収と幸福度の話は印象的だったな。内閣府かどこかの調査で、世帯年収が増えると女性は幸福を感じる率が上がるが、男性は減っていくっていうね。ホントかな。以前に見た話では、1000万だか2000万だかが境で、それ以上稼いでも幸福にはならないとかいうネット記事だったんだが。あのグラフ、端っこ1000万も行ってない…日本特有? それとも男女別だとこうなるって話なのか?

ロング・グッドバイ (レイモンド・チャンドラー)

言わずと知れたハードボイルドの古典的名作を村上春樹というハードボイルドファンの著名作家が翻訳し直した。元の翻訳をほとんどの読者が知っているだけに、どういう変化があるのか、その変化には必然性があるのか否かというのがどうしても気になってしまい、ストーリーに入って行けるのか自信がない…というのが読む前の心配事。

強引に例えれば…今の「君が代」を現代語っぽい「てにをは」の歌詞に微妙に変更して、それが新しい国歌だと教えられている気分?

札幌刑務所4泊5日 (東直己)

交通違反で罰金を払わずにいると、何度もやり取りをした挙句に刑務所に入ることができるらしい。そのルポ。割と参考になることも多い?

私は割とこのジャンル(?)の、刑務所ものを読むこともあるんだが、この人の場合は期間も非常に短いし、独居房で土日を挟んでいるので…要するに大したことは何も起きない。ただ一般人の目線で刑務所の生活を見ることができているという点ではなかなか悪くないんじゃないかと思った。

解説のダンカンに全て持って行かれた感じはあるね。

われらの子ども 米国における機会格差の拡大 (ロバート・D・パットナム)

副題の通り、米国の機会格差がどのように拡大しているのかということを記した本。日本は良きにつけ悪しきにつけアメリカの後を追っている面があるので、こういう本を参考にしてどういう社会にすべきか、すべきでないかを考えたりするのも悪くないんじゃないか。

家庭環境、教育環境、コミュニティ…色々な要素について深く掘り下げながら考察を加えている。子どもというのはやはり周囲の大人の影響をどうしても強く受けるわけで、どういう大人と接して過ごすかというのは人生にとって大きい。そこは世界共通のものだろうね。そこが一つの大きなチャンスの格差になりうる。そうやって接する隣人が麻薬の売人か大学教授か…その違いは大きいだろう?

ロビンソンの足あと 10年かけて漂流記の家を発見するまで (高橋 大輔)

ロビンソンクルーソーのモデルとなったセルカークの暮らした場所を探る冒険。前半のストーリーが期待を高め、後半の発掘作業が学問と歴史の奥深さを知らしめる。

いい本を読んだなー、という感想を持った。考古学は私が考えていたほどいい加減なものではなかった。ここまで探求した者だからこそ書ける、最後の描写の臨場感ね。

セルカークその人は気難しい船乗りで、乗ってたのは私掠船という公認海賊。あまり近くにいて欲しくない人物像ではある。