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山椒の実

Category: Books

ファクトフルネス (ハンス・ロスリング他)

間違った入力からは間違った出力しか生まれない。…つまり事実を正しく認識することが行動を正しくするための第一歩なんだよね。

私も世界の現状を理解したいと思っているのだが、多くの人は間違った認識を持って話している。どうやって事実にたどり着くのか。それが大きな問題の一つ。そしてバイアスがかかっている情報に接している自分自身によるバイアス。インターネット以前は他者のバイアスに重きがあったが、インターネット以後は自分のバイアスが大きな場所を占めるようになる傾向があるように思います。←これ自体も事実かどうかと言われると心もとないものがありますが。

許せないを許してみる 籠池のおかん「300日」本音獄中記 (籠池諄子)

こういう本好きなんすよねー私。世間を大いに騒がせた、大したことのない事件。何かの間違いで政局になり、異常に長い拘留期間…理不尽の塊のような扱いを投げつけられた夫婦。その夫人の方の手記。形式を見ると、拘置所で書いていた手紙を活字化したみたいですね。なんというか…とにかく素晴らしい出来だった。1月からこいつを読めるとは、今年の読書体験もなかなかのクオリティを保てそうで嬉しいよ。

あー自分としては夫の証人喚問の答弁が立派だった、というあたりで興味を持っただけで、この事件の情報を追いかけていたわけではないです。そんで大枠だけ知って「しょーもない事件の処理を間違えて大騒ぎしてんだな」くらいの感想を持った状態ね。あと帰宅ルートで徒歩で国会前を通った時にデモ隊が大きな音を出していたこと、警備の人に「違うんです! 僕は怪しい者ではないんです!!」と必死で訴えたことを思い出す(←表現に誇張が含まれています)。

二軍監督の仕事 育てるためなら負けてもいい (高津臣吾)

ヤクルト史上最大級のレジェンド、高津臣吾の著書。いまヤクルトの二軍監督をやっている。知らんかった…そしてこの本で二軍監督としてのあり方、考え方を述べている。

正直なところ、心に残るようなものはなかったのだが、安心感は感じた。自分の子供が野球の天才だとして、こういう指導者に預けとけば問題なさそう、といった種類の安心のことね。

大成した選手の育て方の研究なんかもしっかりやっていたりね。育成の失敗例なんかも研究してるんだろうな。傷つけかねないから書かないだけで。それとも失敗例は多すぎていかんか??

ネット狂詩曲 (劉 震雲)

中国というちょっと特殊なネット環境にある国家の中で、ネット上で話題になった事件を集めてつなげた小説。割と楽しめた。

まあ現代にもなってすごい世界もあったもんだね、という気持ちになる。序盤は翻訳の問題か著者の問題か、説明的な文章が並んでいて文章力に不安を感じてしまったが、後半はかなり良くなった。

中国語と日本語で共通の言葉があるんだけど、言葉のニュアンスはかなり違うものがあるんだね、とも。「矛盾」とかね。

たぶん中国本土では「あーあの事件か」ってなって楽しめるものなんだろうと思うけど、日本人にとっては共通の話題ではない。そこに寂しさも感じる。まあ日本でもネット上で話題になった事件って色々あるから、こんな感じでまとめて小説にしてしまう作家が出てくるんじゃないかと思うね。そういうのって割とウケるんじゃないか? しかも新しいネタは次々に出てくるわけで、シリーズものにして楽しんだりさ。

父の詫び状 (向田 邦子)

日本三大邦子の一人、向田邦子の代表作ともなったエッセイ集。文章の達人が、自分の子供時代を振り返る。昭和だよね。平成が終わりに近づいて、昭和を思う。そしてこの本を読めばそこに昭和がある。

昭和から平成にかけての時代は人類史にとっても激動の時代だと認識しているんだけど、どう捉えたら正しいのかまだ戸惑っている部分が自分にはある。昭和という時代を認識するにあたって読んでおきたい本ではあった。

暴力が終わる時代? という捉え方ができるかなと思った。今時はこんな風に子供に暴力を振るったら捕まるわけだよ。

堪忍箱 (宮部みゆき)

宮部みゆきの短編時代小説集。この人の時代小説は読んだことはなかったのだが、ひょんなことから(?)読むことに。テーマは推理小説作家らしく「秘密の暴露」かな。自分としてはこういう一般人の話は割と好きな方で、山本周五郎とか池波正太郎とか、昔よく読んでたなぁと思い出してしまった。

こういう小説を書く生きている人がいると分かってホッとしたという感じ。

そしてぼくは銃口を向けた (飯塚 真紀子)

アメリカの病んだスクールカースト下位者が銃火器武装し、学校で乱射する。ハイスクールシューティング。それを丹念に取材してまとめた本。

中にはまさに中二病としか思えない奴もいたり、クソ女に騙されて二股相手を殺したという趣の異なる事件もあり。それぞれ、いくつかの条件が重なって、学校で発砲するに及んだ。

平時に住人が銃を持てるのが悪い、という結論は簡単に出せていると思うのだが。まーアメリカも荒野部が多いからね、土地の広さに対して保安官が足りてないという事情もあるだろう。しかし都市部でも荒野と同じ制度でやることに合理性があるのかな? ないよねバーカ、と思ってしまう。どうしても。

Hit Refresh マイクロソフト再興とテクノロジーの未来 (サティア・ナデラ)

マイクロソフトの3代目CEO、ナデラによる本。当然忙しかろうから、共著の形。文章はライターが書いたんだろう。いいライターを雇ったね。とても良い読書体験(リーディングエクスペリエンス)だったと思う。

MSは彼の就任以降、技術的な対外姿勢においてかなりの改善を見せていて、カルチャーが良い方に振れたという印象がある。だからこの本にも説得力がある。自分の存在理由は何か。なんのために生まれ、生きるのか?

MSは「すべての人、すべてのデスクにパソコンを」という設立理念を早々と達成してしまった会社。我々計算機エンジニアにとってすでに自然物のような扱いになっている。では現在のMSの存在理由は? それをナデラは君に語りかける。ナデラの人生と、社員や顧客の人生。マインドセット。何が大切なことなのか。

「日本の伝統」の正体 (藤井 青銅)

日本の伝統と言われるものは数多いが、それほど長く続いている伝統ばかりではない、という事例を次々に紹介する本。雑学として多くの事例を知ることができて役に立つ感じ。

自分は伝統が長ければ尊いという思想はなく、むしろ新しいものの方が良いはずでしょ、という思想に近い。だけど歴史的なものを無視するつもりはなく、平均的な人よりは歴史が好きっていうのもある。というわけで楽しく読むことができた。

なるほどと思ったのは正座の項。正座が発明されて丁寧なものとされたのは、普段思っているよりも最近というね。普段から実に馬鹿馬鹿しい座り方だとは思っていたが。和式便器の座り方は足首の柔らかさとか脚力全般を鍛えるには悪くないと思うけど、正座はメリットが何もないよね。←実際はウォシュレットなしで生きていけないし、和式便器を好んでいるわけではないですが。

清原和博への告白 甲子園13本塁打の真実 (鈴木 忠平)

甲子園で清原が放った13本のホームラン。それを食らった投手へのインタビューを元に、それぞれの、そして著者の清原への思いを描写していく。清原ファンにとっては必読の書。純粋に、良い本だと思います。

大学や社会人野球に進んだ選手もいるし、野球を辞めた選手もいる。中にはプロになった選手も。その後の清原の30年はいろんな描写がされてきたけど、打たれた者にとっても30年の歳月が過ぎたわけだ。それぞれの30年が熱い。