Skip to main content

山椒の実

Category: Books

沈黙の殺人者(サイレント・キラー)・C型肝炎 250万人の日本人に巣喰う「発がんウイルス」の恐怖 (伊藤精介)

日本に静かに蔓延するC型肝炎。その感染経路は?

第5福竜丸で放射性物質を浴びた船員はその治療過程で大量に輸血を受けたが、当時の輸血用血液に問題があり、生き残ったほぼ全員がC型肝炎のウィルスを保有することになった。輸血、予防接種の注射針や管の使い回し。技術的な欠陥があった鉄砲注射。ありふれたインフルの注射で感染した人も多いようだ。どの程度広まっているのか、その実態は分かっていない。

私も子供の頃に鉄砲注射を受けたことがあります。流れ作業でザクザク注射が進んでいたが、あれは痛かったな。確かに今思えば不気味でもあった。そして、いつの間にか、なくなっていた。実際には前の人の血液とかが混入しやすかったらしく、C型肝炎の蔓延の一因になったようだ。そして記録にも残っていないとか。まるでなかったかのように誤魔化していて、被害も有耶無耶に。うん、ありえんな。

開業から3年以内に8割が潰れるラーメン屋を失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える「してはいけない」逆説ビジネス学 (川田利明)

タイトルなげーな。伝説のプロレスラー川田利明が郊外のラーメン屋を10年続けて、俺たち後輩にその経験を語る。

うーん、まあ、俺はラーメン屋やる気なかったけど、今後も思わないようにしとこう。文章はすごく面白かった。庶民向けの飲食業って、全般的に茨の道ですよね。単価が安すぎて割に合わないんだろう。コロナがない頃でも厳しかった。コロナで持ち帰り専門の業態にしたら逆に楽になったとか、あるのかな。ラーメンみたいな食品だと持ち帰りも対応しづらいだろうけど。

ホームレス中学生 (田村裕)

以前にかなり話題になっていた芸人本。家族解散後の少年の成長を記述する自伝。テンポも良くて、楽しめた。苦労した人は多い業界だと思うけど、その中でもかなりのレベル。いい奴だったんだろうね。助けを受けて生き続けた先に、ブレイクした後のことは読者の知識と想像に任せて…周囲の人への感謝がほとばしる。芸人本の中ではいい本の部類に入るんじゃないかな。純粋に文学としての評価は別になるだろう。

いい話にまとめようとしすぎてねーか? とか、もっとねっとりじっくり書けたんじゃないのか? とかあるけど、タレント本としてはダイレクトな言葉の流れがあってちょうどいいのかも。専業作家が書いてたら、凄い気持ち悪いことになってたかもしれない。飾らずに、事実を曲げずに書いてるんだろうと想像できる。

ソードアートオンライン3-4 フェアリィ・ダンス (川原礫)

終わってなかった、というところから始まる、続編。まーこれ、どーかなー?

内容はまあ、悪くはないかもしれんが、早くもこのシリーズを読み進めるのはやめようかと思い始めている。「通して読んでみようとは思った」なんて書いといたそばからいきなりゴメンだけど。なんつーか、まともな新キャラが美少女だけ、しかも全員主人公に恋心を抱くっていうのがついていけねえなと。そういうのじゃねーんだよな、と。ニーズの違い。シンプルに、ハードボイルド路線に行けばいいのに…。現実とその裏返しである仮想、それぞれの人間関係というアングルはいいんだけどさ。主人公も雑に初期能力が高すぎてどうかと思うところではある。

ソードアートオンライン1-2 アインクラッド (川原礫)

自分が好む犯罪者ドキュメンタリー系の本を小学生の目に触れさせないようにと思って借りた次の本は、ラノベの金字塔。

オンラインゲームの世界に閉じ込められた人々が、脱出を目指して長い戦いを続けるのだが…まあ、これがラノベなんだろうな。1巻は割と楽しめた。設定に引っ張られてたのかな。2巻はちょっとどうかと思えたが、設定の回収で物語を伸ばしたって感じ?

それで、戦いを終えた主人公が現実世界に戻ってくる描写があるんだけど、私は実生活で気づいたことがある。それは、2年間頭髪をカットせずにいると、どのくらい伸びるのかという話。私がアタッチメントなしのバリカンで削った五厘刈りの状態からクッソロン毛になるまでにかかった時間が、まさに2年だ。一度も断髪せずに。今となってはヘアゴムなしでは過ごせない。現実世界に戻った瞬間の人物に関して、筋力の衰えなどは描写があったが、頭髪やヒゲだって気になるどころの話じゃなくなってると思うんだ。

花も刀も (山本周五郎)

幸薄い剣士の話。

こういうのを書かせるとうまいんだな、という典型的な。割と好きだった分野。青空文庫で公開されていたのでiPadで読んだ。こういう休日も悪くないね。

これは天保水滸伝という古典(講談?)がベースになっているらしい。検索したら、この主人公は天保水滸伝で人気を得ていろんな小説や映画などに出てくるような、割と有名な人物だったのね。そういう教養があれば、さらに楽しめたんだろうなー。そりゃアナザーストーリーものを読むのに本ストーリーを知ってた方が面白いはず。

袋小路の男 (絲山秋子)

実りのない壮大? な片想いの物語。男子には共感不能では? この不毛さはひどすぎた。人権問題ですよこれは。男も女もデッドエンドに入り込んで抜け出せない。そんなのってありです?

なんとなく佐藤正午の『月の満ち欠け』を思い出した。男子が同じことを書くとああなるんだろうか? いやステレオタイプ丸出しな感想ですみませんけども。

同じ事実を別の描き方をしたアンサー版? もあるので、二度楽しめるのは美味しい。この手法はいろんな小説で使えますね。むしろ小説のみならず。例えばゲームならタワーディフェンスに対するタワーオフェンス、みたいな話。

小僧の神様 他十篇 (志賀直哉)

古典的文学作品を読んでみようと。この本は短編集ということもあって読みやすいし、名の知れた代表作が複数入っているので、古典的名作の入り口にオススメかな。現代人が読んでも文章がキレイで内容も深みがある。

異常なくらいの文章力の高さと、家族内の関係からの影響の強さ。あるいはスケールの小ささとのアンバランス? が凄いと思ったねえ。

『流行感冒』は現代に通じるテーマだが、いくつかのファインプレーがあって、いい話になった。表題作『小僧の神様』のオチ(突然作者が出てきて解説)は正直良いと思えなかった。

開けられたパンドラの箱 (月刊『創』編集部)

相模原市の障害者施設で重度の障害者19人を殺害した、その犯人についての本。日本にとっては津山事件(30人)以来の大人数かな。京アニの事件で大幅に更新したのは記憶に新しい。まあ人数多いのって火災とか毒殺みたいに事前に被害規模を予見できないやつが多い中、19人を刺殺というのは常識を超えている。日本の犯罪史に残された巨大なトピックになった。犯人はその後、死刑が確定している(この本の時点ではまだ裁判が終わっていない)。

ザ・ヘイト・ユー・ギヴ あなたがくれた憎しみ (アンジー・トーマス)

高校生? か何かの課題図書だったのかな。図書館とか本屋に並んでいたのを見て、しばらく気になっていた。大人が改まって読むのは気恥ずかしさを感じたけど、侮れないんだよなという思いもあり、どうしても気になって読んでみたら…

なかなか激しい話だった。長いけど、かなりしっかりじっくり読ませる。名作だと思ったよ。まあストーリーの移り変わりに関しては若者向けっぽさはあるので、我々オッサンが読むとどうしても、もうちょっと若い頃に読みたかったな…という感想になってしまう。