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山椒の実

Category: Books

王国 (中村文則)

前作「掏摸」の兄妹作。前作の登場人物も出てくる。相変わらずの不気味さと、夢見がちな犯罪者主人公。

なかなか楽しめた。のはいいんだけど、こういう小説は感想を書きにくいね。ネタバレとかにつながると野暮だし。

唐突に本名を知られる衝撃や、主要人物が偽名なので呼び名が変わるのでぼんやりしてると混乱する傾向がある…のは前作と同じような展開かな。

掏摸 (中村文則)

ハードボイルドな犯罪小説。主人公が優秀なスリ。これ、誰も幸せにならない話ではあるけどね。主人公の内面をぼんやりと、しかし詳細に描きながら、淡々と綴られる離れ業の連続。そして悪役。これが表現できるのが小説なんだよな。

かなり楽しめたので、続編みたいなものが出ていると知り、そちらも読むことにしたよ。

つけびの村 (高橋ユキ)

「つけび」川柳で有名になった山口の限界集落の5人殺し事件、そしてその舞台となった限界集落を追った暗いトーンのルポ。その真相に迫る。噂話と悪口ばかりの世界…まあ狭い世界ではありがちの話ではあるよね。田舎か都会かっていうよりも、小さなコミュニティではそうなりがちだ。なんでそうなるんだろうね。私はそういうの嫌いで、すごく嫌な気持ちになるんですよ。学生時代の部活で、そういう方向に行きかけたことがあって…(略)

ふるさとって呼んでもいいですか:6歳で「移民」になった私の物語 (ナディ)

イランからビザなしで移ってきた一家。超過滞在の果てに、特別在留許可をもらって日本で無事に暮らせるようになり、そして…学校にもちゃんと通って大学まで出てる。本人も親も、頑張ったよね。この人はもともと頭が良かった、という部分も大きいと思ったけど。

文化と、国と…いろいろなことを考えさせられる本ですね。

現実として、私は千代田区にある会社で働いていますけど、会社周辺のコンビニとかチェーン店の店員はほとんど外国人です。県境をまたいで田舎にある自宅付近はまだ地元のおばちゃんや学生さんが主力だったりしますけど、田舎が都心の10年後を追いかけているとすれば、まあ全国そうなるのも時間の問題です。固有の文化の継承ってのも大事ですけれども、日本は古来より渡来の文化を融合させるみたいなところに心を見いだすのが好きだったりするんで、それがいい方向に転んで欲しいものですね。だから文化を持ち込んだ人々にはその文化を大事に伝えて欲しいなーなんて思っている。

「学力」の経済学 (中室牧子)

人文系の学問の中で最も信頼できる経済学。経済学って「応用数学」みたいな感じですからねー。その経済学の先生が教育部門を経済学の手法で研究する。アメリカではもう一般的な手法らしい。日本はこの分野で大幅に出遅れている。

かなりの説得力を持っているね。効果のある教育手法を導き出すにはどのように実験し、どのように分析すれば良いのか。ただアメリカの後追いでしかないんだよね。追わないよりはマシだが。日本ってこういう実験をしづらい事情があるんだろうなー。後追いなりに、追いかけて紹介してくれる本って感じかな。

南雄太 型やぶりなゴールキーパー (野上伸悟)

あの南雄太のキャリア序盤までの軌跡をたどった書。子供向けですね。桁外れな身体能力、並外れた強心臓。どうしても我々はキャリア中盤のあの事件を知っているから、それを意識して読まざるをえないっていうね。田代まさしがもう薬やらないって本を書いたのを、そのあとまた捕まった事実を知りつつ読むのと似ている? ただ好GKだったのは間違いないよねえ。

「かたやぶり」というと最近ではドリュウズかな。ポケモンの。あと私は最近iriっていう女性シンガーの曲を盛んに聞いてるんだけど、この人がよく「かたやぶり」という単語を歌詞に使う。まあ、単なる余談ですが。

楽天が英語を変えた (セダール・ニーリー)

楽天の英語公用語化の影響を分析した話。言語的疎外者、文化的疎外者、二重疎外者、そしてバイリンガルと分類して、それぞれの適応について述べている。まあ調査の結果というか結論は割と単純なもので、最初に述べられている通りで、記述は長いんだけどずーっと同じことを言っているようにも思えてしまう。

  • 言語的疎外者→大変だけどがんばる
  • 文化的疎外者→楽勝だと思ったけど文化が侵略される
  • 二重疎外者→最もスムーズに適応する
  • バイリンガル→死滅する

言語と文化は可分なもので、英語化したから欧米の文化になるかというとそうでもなく、日本文化が輸出されることになる。楽天は日本企業だからね。企業の中ではコミュニケーションが活発になった効果が大きくて、メリットは絶大だったろう。しかし楽天は朝礼があって毎週CEOが演説を打つとか…すげーな。日本企業でもいまどき普通やらないよそこまで。

不格好経営 (南場智子)

DeNAの創業者が語る。まー創業者の言葉ってのはだいたい面白いよね。DeNAといえばビッダーズやモガべーならぬモバゲーです。私はソシャゲもやらないしDeNAの顧客ではなかったんだけど、今や彼らはブレイブサンダースのオーナーですからまあ、今は私も顧客なのか?

この本は失敗談を赤裸々に笑い語ったという形式ではあるが、成功した企業なので最後はまあ…そうなるよね。悔しくて今でも根に持っている…みたいな話はないし、失敗談もありがちな話が多いかな。結局は人が頑張ってどうにかするしかない。頑張ったんだねぇ。

申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。 (カレン・フェラン)

メソッド全盛のコンサル業界で対人オバケ最強説を唱える。なるほど。

そもそもメソッドが生み出されたのは、対人スキルは育てることが難しいということから来ていたのではないのかな、と思ったが。この本では対人スキルが天与のものであり、まるで対人スキルを鍛えるメソッドがないかのような言いようであって、そこはちょっと引っかかったね。

実は私も対人スキルはゼロに等しい。まあ管理職をやるつもりがないのでどうでもいいこと? そんなことはないけど、そこはストロングポイントではないと認識しつつ前に進むことでどうにか誤魔化しているわけだが。ただメソッドも信用してなかったりする。結局優秀な奴が集まったらメチャクチャやってもどうにでもなるし、ダメな奴を集めたらどんなメソッドも効かない。ミもフタもない話。

風をつかまえた少年 (ウィリアム・カムクワンバ)

一気に読み終わってまずすることは、世界地図か地球儀を引っ張り出して「マラウイ」を探すこと。どこなんだ…アフリカの下の方の内陸で、大きな湖がある国ですね。なるほど。

この本は、そのマラウイで起こった壮絶な飢饉、その影響で中学校を中退することになった少年が小学校に作られた図書室に通って独学で物理を学習し、廃品を集めて風車を作って電気をもたらした物語だ。マラウイでは電気は万人のものではない。国営(?)の水力発電はあるが品質は悪く高価なんで、ほとんどの家には電気が来てない。しかし少年は電気でやりたいことがあったのだ。まあ、闇に生まれた…天才ですね。メイカームーブメント!