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山椒の実

Category: Books

PIXAR 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話 (ローレンス・レビー)

ピクサーの最高財務責任者から見た、ピクサーの魔法の物語。なかなかすごい話で、非常に面白かった。読んでよかった本の一つ。

子持ちにはお馴染みのピクサーのアニメーション映画ね。トイストーリー、ニモ、カーズ。この本で語られるのは主に最初のトイストーリーの頃の話がメインになっている。

ピクサーはジョブズの会社ではあるんだけど、ジョブズが60億もの私財をぶっ込んでなお、芽が出ない。しかも従業員に嫌われていたり…そこをどうにか財務的に綱渡りを繰り返してヒットを飛ばす。すかさず上場を果たしてジョブズをビリオネアにし、一線に返り咲くきっかけとなった。この著者がピクサーで奮闘してくれていなければジョブズがアップルに戻ることもなく、今私が使っているMacBookProもiPadも世に出ていなかったのかと思うと、感慨深いものがあるね。

殺人都市川崎 (浦賀和宏)

川崎を舞台にしたミステリ。この本だけは絶対に許さん!!

違和感だらけのパートと、少し現実っぽいパートが織り交ぜられて物語は進む…んだけど、やっぱりこの本はどうしても許せないw 『ルポ川崎』の時は現実だから良かったけど、これはさすがに、ないなと思った。

どう収拾つけるのか不安を感じながらの読書だったけど、このオチもどうなんだ…よく出版したなこんなの。

紙の動物園 (ケン・リュウ)

教育とかの話で辻褄が…というのが気になってしまう。SFなんですけどね。表題作に関しては、あんな立派な文章を書ける人が貧農で一族全滅した生い立ちで、長年母国語を日常で使う環境にない…というのは不自然に過ぎる。手紙オチのルートが間違いの元? それでも、しっかり読ませるのは凄いが。折り紙のメカニズムの説明があるとよりSFになると思った。でもそれすると純粋な物語としては蛇足になるか。悩ましいところ?

短編集だけど共通するのは、極東アジアなオリエンタルな世界で、現実とは異なる歴史を紡いだ上での寓話…といったところか。莊子の頃からの伝統だからな。諷して曰く…年季が違う。莊子は割と特徴的な言葉遣いで、昔読んだときは印象的だったなあ。思い出すけど、残ってないな。読書体験の蓄積とはそんな程度だ。

ゲーム・ネットの世界から離れられない子どもたち (吉川徹)

児童精神科医による現代の病? についての解説。あまり知見も確立していない分野であることもあり、いろいろなことが羅列されてとっ散らかった印象。つまみ食いして読むことを前提としているのかも?

それでも、大事なことは見えてくる。自分を省みて、考え直させてくれる内容もあった。

最近書かれた本なので、最近の話題にも触れられている。COVID-19の影響であつ森が流行ったとか、そういうの。

自分の子供もゲームは大好きだし、親としてはやりすぎは気になるところ。そもそも子供は約束を守れないものであるという話には感銘を受けた。実際うちでも守れていないが、それに対する怒りは感じる必要のないものだった。男子なら約束したことは実行されたも同然、という感覚があるんだけど、それは大人の男に限定の話だった。…男だの女だの言うと最近は良くないのかな?

会計の世界史 (田中靖浩)

会社の会計の歴史を物語を交えて総覧する本。割といい本を読んだなというのが感想。感動とは遠いが、十分重厚なテーマを十分ライトに語る。そのギャップもいい。

読みやすい文章で世界の経済と文化の歴史が語られていて、まあ単純化されすぎている面はあるのだろうけど、記憶に残りやすいし、悪くないと感じた。ダ・ヴィンチからビートルズまで。技術の進歩、文化の進歩、会計技術の進歩。その全てが人類の歩みを助けたワケだよ。時代と、地理ね。それが世界観というか、世界を認識させてくれるというか。大袈裟に言えば、「目が開いた」って感じがする。それが読書の快感というものだよね。

インタビューズ (堂場瞬一)

平成元年から終わりまで、1つの時代を通じて渋谷のスクランブル交差点で大晦日に行われたインタビューを並べた本。

…というテイのフィクションの小説。

着眼点はすごいし時代を映す鏡みたいな感じで、懐かしいと思われる出来事や何やらを感じさせてくれた。ただ出会い系で会った人に本を勧め続けたあの人ほどの狂気は感じなかったなー。平成ってこういう時代だったよな、というのを感じさせてくれたのはそうだが、良くも悪くも、平成が終わった時点での著者の興味の範囲の中に収まっているよね。言語表現としても著者の能力の範囲を超えられない。つまり意外性が欠けていて、そこはフィクションの限界かと思う。真実っていうのはもっと、意外なものなんだ。

そして平成が終わり、令和は令和ですごい過激なことが起きてる現実を知ってるからね。明らかに激しい事象もあれば、なんとなく生きづらい世の中になったなと思う出来事もあり。昭和を振り返るために向田邦子のエッセイを読んだ、それと同じ位置付けで平成を振り返る目的では読めないかなあ。

スティル・ライフ (池澤直樹)

小説。まあ小説らしい小説、だね。30年くらい前の小説かな。あまり好きなタイプの小説ではなくて、なんでこの本を読もうと思ったのか、思い出せない。子供の国語の問題に出てきた文章、だったかも。

読んだ、というだけで何の感想もなかったんだけど、まあ好きなジャンルじゃないってのはそういうことなんだろうなー

レンタルチャイルド (石井光太)

インドの貧民の話。実際この本を読むのは2度目でしたが、相変わらず圧倒されました。目まぐるしく発展していくインドのムンバイを舞台に底辺の人々が、生きるために戦う。乞食、売春婦、ギャング、青年ギャング、ヒジュラ…全員が弱者で、それぞれ憎しみ、争い、食い合う。誰も得しないよこれ…

表主人公の少年乞食のリーダー、裏主人公のガイド。少年はリーダーとして慕われていたがギャングになったり、また仲間のために乞食リーダーに戻ったりしてムンバイでもがき続ける。ガイドは乞食にも見下される底辺中の底辺の立場から、自分の力で、自分だけで這い上がっていく。救いのないリアルな話の連続の中で、このガイドの這い上がりだけが希望か。

ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論 (デヴィッド・グレーバー)

何の役にも立たない、害悪にもなるような仕事の話。かなり話題になった本。シット・ジョブではなく、ブルシット・ジョブ。シットの方は単にやりがい搾取みたいなきつい仕事で、ブルシットの方は無意味な役に立たない仕事。むしろちゃんとした仕事よりも楽で、給料はいい。著者が大事にしているのは、本人の認識。やってる本人がブルシット・ジョブだと思うのは正確性があるし、メンタルの問題になる。印象的なのは、銀行家がストをやっても影響はほとんどなかったけど、ゴミ収集の労働者がストをやったら街が居住不能になったという話とか。当然だが銀行家の給料の方が何倍も高い。社会に対する仕事の重要性とは。

一発屋芸人列伝 (山田ルイ53世)

雑誌の連載かなんかで話題を呼んでいた、一発屋芸人のその後をつづった本。

自分がテレビをあまり見なくなって、そういう話題についていけなくなった時期があって、その頃に活躍した芸人の情報が得られたという予想外のメリットがあった。引きこもり本の時にも思ったけど、文章は上手い。一発当てるにはある種の必然があり、その後の人生にも味わいがある。著者自身も一発屋だけど、多才な人ですし。

ムーディ勝山と先輩芸人によるバスジャック事件のエピソードがすごく良かった。その場の空気感というか臨場感というか。そういうのが伝わってくる。