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山椒の実

Category: Books

ワイルドサイド (スティーブン・グールド)

ゲートの向こうに、人類の発生しなかった別の地球が広がり、少年たちの冒険が始まる。

いやー著者の名前から、あのワンダフルライフのグールドだと思って図書館で借りてみたんだよね。途中まで読んで生物相の話に近いものがあったりしたんで、こういうのも書いてたのかーとも思いつつ、でも少年少女向けの本だし…と調べてみたら別人だった。普通に読めたから、まあいいや。

ちょっと全体の構成がわかりづらいところはあった。一体何が目的なの…というね。40も半ばを過ぎたオッサンが読むような話でもなかった気がするけど、暇な夏休みの読書としては、これでいいかと。

アンダークラス (相場英雄)

外国人実習生の問題とか、戦後の貧困とか、いろいろな世代が絡みつつ、人が死んで、事件を解決していく。かなり読み応えがある展開にはなったが、一気に読めた。

ジャンル的には社会派ミステリっていうのかな? まあパッと分かるモデル企業はいいとして、そのリアリティがなかなか凄い。実際にそういう世界があるっていう現実の怖さがある。人間の尊厳とは。

吠えない犬 (マーティン・ファクラー)

日本にジャーナリズムがどのように政治に打ち負けるようになったのかを記した本。著者はニューヨークタイムズの記者の人。ジャーナリズムを殺しにかかったというのは安倍政権の一番暗黒な面では。トランプの戦略もメチャクチャではありつつ狡猾だったようで、まあ対比させて論じられてしまうのは妥当なのかもしれない。

それでだ。ジャーナリスト世界がこんなに脆弱なものだったとは。まあ思ってはいたけど、こうやって突きつけられるとやはり改めて感じるよね。自分の感覚ではネット世界の言論の歪みに関しては電通の仕事が大きいんじゃないかなと。ジャーナリズム世界ではどうなんだろう。確かに誤報があったりはするけど、偉い人の失言なんかとの頻度の違いで言えば、新聞の方がまだヒット率は高いでしょうよ、と思っているけれども。

星系出雲の兵站 (林譲治)

ハードなSF。人類は地球とは異なる複数の星系にまたがる存在になっていたところ、敵対的な異星人が…の、第1部(4巻セット)。なかなか読ませる。最初はあまり期待していなかったが、割と夢中で読むことになった。第2部も読みたいねえ。

息詰まる展開、相手への理解の進め方、勝利と敗北、エピローグの後味。いやーそれにしても1巻のエピローグはすごかったなー。

しかしこれ、宇宙戦と考えると移動も生産も補給も、スピード感が早すぎるよね。現実的には。

PIXAR 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話 (ローレンス・レビー)

ピクサーの最高財務責任者から見た、ピクサーの魔法の物語。なかなかすごい話で、非常に面白かった。読んでよかった本の一つ。

子持ちにはお馴染みのピクサーのアニメーション映画ね。トイストーリー、ニモ、カーズ。この本で語られるのは主に最初のトイストーリーの頃の話がメインになっている。

ピクサーはジョブズの会社ではあるんだけど、ジョブズが60億もの私財をぶっ込んでなお、芽が出ない。しかも従業員に嫌われていたり…そこをどうにか財務的に綱渡りを繰り返してヒットを飛ばす。すかさず上場を果たしてジョブズをビリオネアにし、一線に返り咲くきっかけとなった。この著者がピクサーで奮闘してくれていなければジョブズがアップルに戻ることもなく、今私が使っているMacBookProもiPadも世に出ていなかったのかと思うと、感慨深いものがあるね。

殺人都市川崎 (浦賀和宏)

川崎を舞台にしたミステリ。この本だけは絶対に許さん!!

違和感だらけのパートと、少し現実っぽいパートが織り交ぜられて物語は進む…んだけど、やっぱりこの本はどうしても許せないw 『ルポ川崎』の時は現実だから良かったけど、これはさすがに、ないなと思った。

どう収拾つけるのか不安を感じながらの読書だったけど、このオチもどうなんだ…よく出版したなこんなの。

紙の動物園 (ケン・リュウ)

教育とかの話で辻褄が…というのが気になってしまう。SFなんですけどね。表題作に関しては、あんな立派な文章を書ける人が貧農で一族全滅した生い立ちで、長年母国語を日常で使う環境にない…というのは不自然に過ぎる。手紙オチのルートが間違いの元? それでも、しっかり読ませるのは凄いが。折り紙のメカニズムの説明があるとよりSFになると思った。でもそれすると純粋な物語としては蛇足になるか。悩ましいところ?

短編集だけど共通するのは、極東アジアなオリエンタルな世界で、現実とは異なる歴史を紡いだ上での寓話…といったところか。莊子の頃からの伝統だからな。諷して曰く…年季が違う。莊子は割と特徴的な言葉遣いで、昔読んだときは印象的だったなあ。思い出すけど、残ってないな。読書体験の蓄積とはそんな程度だ。

ゲーム・ネットの世界から離れられない子どもたち (吉川徹)

児童精神科医による現代の病? についての解説。あまり知見も確立していない分野であることもあり、いろいろなことが羅列されてとっ散らかった印象。つまみ食いして読むことを前提としているのかも?

それでも、大事なことは見えてくる。自分を省みて、考え直させてくれる内容もあった。

最近書かれた本なので、最近の話題にも触れられている。COVID-19の影響であつ森が流行ったとか、そういうの。

自分の子供もゲームは大好きだし、親としてはやりすぎは気になるところ。そもそも子供は約束を守れないものであるという話には感銘を受けた。実際うちでも守れていないが、それに対する怒りは感じる必要のないものだった。男子なら約束したことは実行されたも同然、という感覚があるんだけど、それは大人の男に限定の話だった。…男だの女だの言うと最近は良くないのかな?

会計の世界史 (田中靖浩)

会社の会計の歴史を物語を交えて総覧する本。割といい本を読んだなというのが感想。感動とは遠いが、十分重厚なテーマを十分ライトに語る。そのギャップもいい。

読みやすい文章で世界の経済と文化の歴史が語られていて、まあ単純化されすぎている面はあるのだろうけど、記憶に残りやすいし、悪くないと感じた。ダ・ヴィンチからビートルズまで。技術の進歩、文化の進歩、会計技術の進歩。その全てが人類の歩みを助けたワケだよ。時代と、地理ね。それが世界観というか、世界を認識させてくれるというか。大袈裟に言えば、「目が開いた」って感じがする。それが読書の快感というものだよね。