Skip to main content

山椒の実

Category: Books

自閉症の僕が跳びはねる理由 (東田直樹)

自閉症の子が書いた本。いろんな質問に答えたり、短編小説みたいなものも。文章も綺麗だし、素直に思いを書いたって感じがしますね。

小学生の頃の友達に、こういう子がいたなあ。一緒に遊んだことをなぜか覚えている。向こうが引っ越した後に1回か2回か、遊びに行ったり。こういう世界で暮らしてたんだなぁ。今頃どうしてるだろうか。

なかなか、会社で仕事してるとこういう人と関わることは少ないが、リモートになると自閉症の人も今より活躍しやすいようになるのかもしれないですね。コロナ生活の副作用。

むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました (青柳碧人)

人気昔話ミステリの第3弾。とりあえずサルがやばいということはわかった。南天丸、死すべし!

なかなか楽しめたよ。誰でも知ってる話だけど、なんとなくバリエーションがあって変化があるのが昔話。それがベースだから、というのもあるだろうな。

子育て罰 「親子に冷たい日本」を変えるには (末富芳, 桜井啓太)

子供や、子育てをする親に対して、まるで罰を与えるかのような対応をする社会について述べた本。私も実感を持つ分野の話ですね。

いろんな実感がありますね。例えば、実際手当や補助の類は安定的に運用されておらず、臨時ボーナスみたいな扱いにするしかないです。子育てと無関係な、失業給付とか生活保護とかは安定的に運用されていて、いざとなったら頼るよねという感じで冒険もできる感覚は持っているんだけど、いざ子育て関係になると、児童手当とか学費の補助みたいなやつはどうもアテにして過ごすことができない。いつの間にか条件がついたり、改悪されたりするのよね。

諸葛孔明対卑弥呼 (町井登志夫)

例の「爆撃聖徳太子」の人の出世作(?)。同時代人が戦う。日本人にとっては夢の対決。躍動感がすごい。SF要素が強いかな。SF的な考証がなかなか楽しい。なるほどー、そういう解釈ならありうるなー! みたいな。

というわけで、かなりスペクタクルに楽しめた本だった。こういう趣の物語って、いろいろあるよね。源義経=ジンギスカン説とかさ。そういや長嶋茂雄=源義経=ジンギスカンだったという時代考証放棄の凄いやつも、若い頃に読んだことがあったなー。歴史SFはこういうのだから。

人は、なぜ他人を許せないのか (中野信子)

脳科学者が「正義中毒」に関して記述した本。まあ学術的な本ではないんだろうな。適当に殴り書きしたのかもしれない、と言ったら失礼になるか。もうちょっとエッセイ寄りにした方が読める気がしたな。軽く知識を得るという目的はそれでも達成されたはず。

正義中毒。

うーん、怖いねえ。私も正義に関する本はなんだかんだで好きではあるんだけれどもw、脳が快楽を感じてるんだろうなあ。恐るべき脳の反応。普通に考えて「どうでもいい」ことに熱くなってる人々の滑稽さが、実は中毒症状だったと。

闇に魅入られた科学者たち 人体実験は何を生んだのか (NHK「フランケンシュタインの誘惑」制作班)

NHKの番組の内容を書籍化したもの。だけど、すごい本だった。こういうのがあると別にNHKから救われなくてもいいよなーなんて思ったりする。そういや一人暮らし時代はNHKと契約してなかった日々が長かった。最後の方に地デジになった時にやっと契約したんだったかなw だって当時ってスカパー! 以外ほとんど見てなかった頃だもん。今はDAZNとYouTubeとAbema? 地上波/BSは家族がよく見てるから、いいけど。

むかしむかしあるところに、死体がありました (青柳碧人)

昔話をベースにしたミステリ。まさかあいつがあんなに悪いやつだったなんて! 短編集みたいになってるけど、よく語られる昔話、よくある本格推理のアングルで、一通りのバリエーションはやった感じかな。

まあこれ叙述トリックはどうかと思った。しかしこのフォーマットはいろんなことに応用できるよね。と思ったら続編も出ていた。続編も読みたいなー。別に昔話じゃなくてもよくて、よく知られている物語をベースに推理小説にすればいいんで、範囲は広いよね。

爆撃 聖徳太子 (町井登志夫)

聡耳のあいつ・聖徳太子と小野妹子が飛鳥を、高句麗を、そして隋を駆ける。世界を股にかけて暴れ回る痛快活劇…非常にバカっぽいけど楽しめた。娯楽。

戦う相手は史上最低を争う隋の煬帝だからなあ。一応今は賛否両論あるのか。強大極まりない帝国をあっさり自滅させた暗愚な皇帝だということが知れ渡っているから、読んでて戦力差も気にならないな。

唐突(でもないんだけど)に出てくる十七条憲法で機先を制する技(?)には感心した。

われらはレギオン (デニス・E・テイラー)

スタートレックのファンが宇宙を駆ける機械人(フォン・ノイマン探査機)になって増殖したらどうなるか? それがこの三部作のボブだ。

短い文章で各々の活躍を表現していく。凶悪な地球由来のレプリカントとの戦い、地球人の生き残りとのやり合い、異星人との出会い、アザーズとの決戦…息をつかせぬテンポでさまざまな物語が続いた。詰め込みがすごいね。ともあれ、楽しめたよ。

ただ私はスタートレックの知識が皆無なんで、その点は残念な読者ではあったなあ。

希望の一滴 中村哲、アフガン最期の言葉 (中村哲)

中村哲さんの書いた文章と写真を混ぜてまとめた本。医者が、たくさんの命を救うために治水に取り組む。遠くアフガニスタンの地で、故郷の知恵を使って。

本質的なゴールへの意識を忘れない話で、『ファクトフルネス』にも似た話があったけど、医者とは何か、が問われる話では、あるよね。もともとアフガニスタンは農業国だったのに、戦乱と気象変動のあおりを受けて荒廃、農地を失った人が生きるために武器を取り、何も理解しない西欧人が空から虐殺を降り注がせる。その終わりの見えない地獄の中で医者は多くの命を救うために…