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山椒の実

Category: Books

相続税が払えない 父・奥村土牛の素描を燃やしたわけ (奥村勝之)

画家の家族が相続税で大変な思いをする話。評価額のある絵画のようなものを相続すると大変だな、という話。住居になる土地についてはまあまあ常識の範囲内であれば減免されるんだけど、絵画は…この本が書かれたのは1990年代だけど、今は制度的には変化があるんだろうか。

それにしても、出てくるのはとんでもない金額。実際自分の人生に当てはめてみても、この額はきつい。

やっぱ現金に限るね。減免は期待できないにしろ、処理がしやすいよ。自分もこないだ相続の処理したけど、現金が一番面倒がないって分かったよ。分けやすいしね。

「ふつうの家族」にさようなら (山口真由)

家族の法律に詳しい個人が語る。ふんふん、なるほど…と思うところも多かった。アメリカと日本の親へのなり方の違いのくだりが一番面白かったかなー。

なんか装丁から小説だと思って読み始めたんだけど、違った。むしろ小説じゃなくて良かった。

自分は家族について深く考えることもなく深層心理だけしかない状態だったかな、結婚したのは。それから適当に流されて今に至る。それができたのは「普通」の枠を外れなかったからなんだろうな。まーとにかく、この方向の問題については何も考えない人生だったな。それは認識できたよ。

その農地、私が買います 高橋さん家の次女の乱 (高橋久美子)

愛媛の農家から東京に出ている文筆家/音楽家が、実家の農地が太陽光パネルで埋められると聞いて奮闘する話。コロナもあってなかなか帰れないという状況もあり。「高橋さん家の次女」と言いつつ、ググってみると割と著名な人ですね。

小規模農家だけど、農地の売買の制約などもあり、難しさはある。収穫にこぎつけるまでに、猿や猪、カメムシとも戦う必要がある。農薬に関する考え方もある。使用にあたって作り手への健康被害があるとすれば、確かに見過ごせない。

沖縄県知事 その人生と思想 (野添文彬)

日本復帰からの歴代の沖縄県知事の列伝。なかなか読み応えもあって面白かった。

とりあえず選挙は欺瞞だね。当選するためには基地反対しなければならないし、自民党の候補ですら基地反対で当選するわけだけど、実際には何をしても国は聞く耳を持たないし、当選後は言うことを変えないと党内で生き残れない。

それで、沖縄県知事ってのは基地問題ばっかだな。そこに沖縄の難しさがある。実際のところ、差別ではある。面倒を押し付けて、寄りかかっている。私は沖縄は前職の勤続10年のお祝い休暇の時に一度行ったことがあるきりだけど、確かに基地は不自然にデカくて、現地の発展を阻害していることを容易に察することができた。

トルコのもう一つの顔 (小島剛一)

トルコに魅せられた言語学者が、トルコ政府が存在を認めない少数民族の言語について長年に渡り調査する。公式にはトルコ人は皆トルコ民族でトルコ語を話す、と。しかし実際はいろんな民族がいていろんな言葉を話している。少数民族と言っても、クルド人は多いし非公式にもクルド人と思われている中にもザザ人がいたり、かなり入り乱れているようだ。多大な危険を冒して調査を進めて…

といった話。この種の真面目な本とは思えないほど、すごく面白かった。実体験、現地調査がとにかくすごい。すごい世界もあったものだ。これは日本に暮らしてるとわからないよ。日本にも少数民族はいるしその人たちの独自の言語もあるわけだけど、存在感の質・量ともにレベルが違う感じ。存在を認めてないクルド人…という印象からはせいぜい数%とかのレベルだと思ったら、1/3くらいがクルド人って。マジかよ。。。

犬がいた季節 (伊吹有喜)

捨て犬を飼って代々世話をしてきた高校生たちを描いた、連作青春小説。あんまりこういうのは好みじゃないんだよねー、と思いながらも最後まで読んでしまった。読んだ挙句、「たまにはこういうのもいいかも」なんて思ってしまったりして。

自分は男子校で陰キャだったから、あんましこういう青春は送ってこなかったなー。

中途の家 (エラリー・クイーン)

国名シリーズにぶっ込んできた非国名ミステリ。著者が気に入っているベスト幾つかに入っていたので、読んでみた。

まあ描写されるアクションやらには不自然さはあるけど、アクション小説じゃないからいいや。のっけからすごい設定と偶然だったけど、なかなか読ませるミステリだった。悪くない。

まあこういうのネタバレしたくないんだけど、これを書かずにおくのは無理かもしれない…序盤の人称への違和感が難しさを増していたかな。犯人の性別がいつ確定したんだと。

トリツカレ男 (いしいしんじ)

寓話か? と思いきや、もっと単純なハートウォーミングストーリー? だった。

得体の知れない、どんなことでも極められる顔のない男が主人公で、人語を操る異世界のネズミを相棒に起用。ロリコン教師の婚約者の謎めいた美女…設定書類だけ見れば、ホラーか。力石の亡霊がマンモス西に取り憑いてジョーを苦しめる、みたいなことを思わせる描写も。こえー。

この設定でよくハートウォーミングに仕上げたなー。それが小説家の力量か。

地下世界をめぐる冒険 闇に隠された人類史 (ウィル・ハント)

現代の奇書を読みたければコレ! 決定版かもしれない。地底人に関する本格的な書籍? かなり真面目だ。序盤の都市の地下に関する章が特に良かった。途中でスピリチュアルな方面に行こうとしてしまうのはちょっと脱線した感じがある。ニューヨークやパリの地下世界はすごいな。そして地下に魅せられた趣味人? みたいな集団がいたり。東京にもいるんだろうか。いたらいたで、面白いだろうな。

貧民が地下で暮らす、みたいな話も思い出したりした。安全度が地上より高いとは思えないんだけど、自然環境の影響を受けにくいという利点はあるのかもしれない。