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山椒の実

Category: Books

象は忘れない (柳広司)

2011年の震災と原発事故に関する短編集。なかなかシビれるものがあった。分断と孤立…なんつーか、あの時はいろんなものがぶっ壊れた。その時代の空気が、こういう小説の形で残されるんだなと思った。

同時期に読んだクリスティの同名の推理小説は全く関係なかった。まあ同じ諺を元にしたタイトルなんだろうけど。

盗まれた街 (ジャック・フィニイ)

ホラー系SF。理路整然としていなくて、納得いかない設定が多い。ちょっと自分向きではないな。例えばゾンビ映画みたいなね。ゾンビって設定があるじゃないですか。あんなに伝染しやすく繁栄しか望んでいないのに、動きが鈍すぎるっていう。もうちょっと抜け目ない生物である必要があると思うんだよね。

この小説はそれに近い。まあこの宇宙人は設定がまさにゾンビの亜種みたいな感じだけど、結末までもが納得いかない。この人ただ恐怖小説書きたかったんでしょ、それだけでしょ? っていう印象しか残らなかった。

象は忘れない (アガサ・クリスティ)

ポアロがインタビューで過去の事件をほじくり返して真相を解き明かす話。

途方もないおしゃべりが続いて、多くは無関係なんだけど事実もあって、徐々に真相が分かっていく。ちゃんと読者にも分かっていく構成はうまいなー。あとおばちゃん同士の会話のリアリティも。各人のおぼろな記憶が、重ねていくことでハッキリしてくる。解像度が上がっていくというか。

しかしこの真相も悲しくはある。正解を知っている奴がいる違和感はあった。いちゃいけない法はないんだが。ただ、その人物にたどり着くのも相手から来たってだけだからなー。結局偶然の必然というか。これならポアロじゃなくても、っていう。あのカップルが正攻法で迫ったら、ゲロってくれたんじゃないの?

蒼海館の殺人 (阿津川辰海)

葛城シリーズ。あの紅蓮館の事件から数ヶ月後、奴の実家で起きた恐るべき事件が…

ホームドラマの連続、多様などんでん返し。悪くない娯楽だった。主人公や探偵の苦悩は、強調すればするほど共感するところがなくなっていくのには困った。普通に謎を解けばいいのに。

ちょうど今、私は間取りに興味がある年頃なので、収納すくねーなとか、そういうところも気が散った。

チャイナ蜜柑の秘密 (エラリー・クイーン)

もはや古典のミステリ。作者は最も気に入っていたらしい、ということで読んでみた。普通に面白かった。外さないよね。

なるほどー。途中で読者への挑戦フェーズが用意されていたが、すっかり分からなかったぜ。詳細部分は現代人の常識で解くのは無理があるのかも。大枠は注意深く読めば対応できたのだろう。私はあんまりそういう読み方は好まないんだよなー。別にそこまで先読みする必要はないんだろうよという気もするんだ。まあ、分かっちゃった場合は逆に鬼の首を取ったかのように「俺ここで余裕で分かったしー!」って言うんだけどw

私は英雄じゃない ジェシカのイラク戦争 (リック・ブラッグ)

イラク戦争で捕虜になり救出されたジェシカ・リンチの話。いろんな思惑もあって虚実がないまぜになっていた。そこで、このような本を出して事実を整理する。

実際に捕虜になった経緯があり、謎があって、事実がある。正直あんまり深い話ではない。ただデタラメは正さないといけない、という思いがあるんだろうなー。連絡ミスによって、補給部隊が敵の拠点に突入してしまう。部隊の悲劇が始まる。一部は戦死、一部は退却成功、一部は捕虜になる。ジェシカ・リンチは重傷を負って捕虜に。医師は捕虜をどうにか生かして、返そうとする。米軍はその救急車に発砲して追い払う…その後、救出作戦が実行される。

紙魚家崩壊 九つの謎 (北村薫)

ちょっとひねって不気味な風味をつけている推理小説の短編集。

何らかの後味が残る感じではなかったし、全体的には、まあまあかな。中ではおにぎりのやつと「俺の席」の2つが良かったか。良かったってほどでもないか。

表題だけど、家で崩壊となるとアッシャー家とか芦屋家だろうと思ってしまう。で、紙魚なんて苗字あるのかな、と思って検索したけど…以下略

自分はバカかもしれないと思った時に読む本 (竹内薫)

うーん、読んだはいいけど、何とコメントすればいいのか…

学問的な裏付けは皆無で、老人が若ぶって軽いトーンで印象論と精神論で押し切る、みたいな文章がひたすら続くという…これ読まされんのは苦痛よな。しかもテーマがバカにならないにはどうしたらいいか、みたいな。小賢しいというか、くだらなさすぎる。しかしこれをよく本にしようと思ったよな。まあタイトル見た時に悪い予感はあったんだよ? 図書館で予約してしまった自分の判断が責められるべき。

なぜ、わが子を棄てるのか 「赤ちゃんポスト」10年の真実 (NHK取材班)

熊本の「こうのとりのゆりかご」(いわゆる赤ちゃんポスト)に関する取材を重ねた本。NHKらしく読みやすく書かれている。

全国に広まるかと思っていたけど、なかなかどうして最初の1ヶ所にとどまっている。需要はあると思うんだけどな。私としては子供の権利というものを考えてしまう。親となる側が深く悩んだり、無茶して育てて不幸を再生産したり、といったことなくそれぞれの子供が健やかに育てば、それでいいんじゃないのかと。親と一緒にいるってのはそこまで重要な要件じゃないんじゃないか。

結局、ウナギは食べていいのか問題 (海部健三)

表題に関わることについて、Q&A形式で記述していく。食用ウナギの扱いについては多くの未解決問題があり、解決はまだまだ先であろう、ということが分かった。

著者は結論を書いていないが、私はおそらく食べないだろう。安全で適法なウナギを食べたいが、それを選ぶ手段がないらしい。高級店でもチェーン牛丼屋の鰻でも、ルールに従って生産されたかどうかという点では変わらないみたい。

これでは食べる選択ができない。