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山椒の実

Category: Books

デス・レター (山田正紀)

不思議な人探しの物語。連作短編。第1話のインタビューのところがなかなかいい出来で、グッと引きつけられる。

問題はだ、手紙で、フリガナがあることだよ。青いインクの手書きの手紙。そこにフリガナふる? 人と書いてラヴ…この不自然さ。縦書きなの? 横書きなの? 気になってしょうがないよ。

転機になる、ヘミングウェイのやつが良かったな。あと高校生のやつもかなり良かった。

読んで思ったのは、無理にオチをつけなくてもいいのに。だった。どうしたって無理があるよねえ。まあ、これがストーリー的にメタな話になるのは、妥当なんだろうけど。

暗闇にレンズ (高山羽根子)

動画を映すレンズと、それにまつわる一族の物語を軸にして、Side AとSide Bの落差と、つながっていく過程が楽しめる小説。特に、Side Bのリアリティがいいね。まるで学術記事さながらだ。ちょっとした表現へのあこがれで「さながら」言いたいだけだが。文章はまさにプロだねえ。上手い。相当な達者と言えるだろう。

途中から様子がおかしくなっていくのがこういう、優秀なSFだよね。ABそれぞれで動く物語。ラストも淡々として、それでいてすごい。余韻がある。

民間人のための戦場行動マニュアル もしも戦争に巻き込まれたらこうやって生きのびる (S&T OUTCOMES, 川口拓)

危機的状況を生き延びるための知識を集めた本。著者は自衛隊の教官?

興味深い知識はあるし、自衛隊がどんなことを想定して守備しようとしているのか、窺い知ることができる。まあ実際は想定通りには来ないんだろうけど、前触れがあるだろう、という想定はどうか。ウクライナでのそれのような大規模な侵攻を考えれば、前もって危機の情報を得られるのは事実だろう。

それで、その情報を見てから準備していたんじゃ間に合わないことは想像できるよ。そこでこういう本なんだな。

走る奴なんて馬鹿だと思ってた (松久淳)

おっさんの文筆家がマラソンに目覚めて独りよがりの文章をねっとり書き連ねる話。自分でわかっていて、書かずにはいられないのが文筆家のサガか。うちの近所にも来てたんだな、この人。中目黒のくせに。いけすかねえ。

私は今はやめてるけど、走ってた時代がある。今は、単にブラブラ歩くだけですね。そんな徒歩も、コースによってはランナーと同じルートを通ることもある。たまに、遅いくせに抜かしてくるやつがいるんだよね。抜かしてちょっとしたらのんびり歩きやがるの。しょうがないから(同じペースで)歩き続けて抜かすんだけど、ちょっとしてから抜き返してくるわけ。こっちが走ってるならまだしも、自分としては普通の散歩の一定のペースで歩いててもそうなることがある。こういうオッサンがウザいんだよね。散歩に負けるなよ。いや、負けることを分かってくれ。分かってるなら抜かさないでくれ。ランナーを徒歩で抜かすのは気を使うんだよ。でも、遅すぎるんだ。こっちは徒歩で、スピードを変えてないんだ。

もう探偵はごめん (ウィリアム・アイリッシュ)

短編集。推理というわけでもなく、小噺風のものが多い。

中では、さわやかにオチをつけた、最初の紙幣アレルギーの話が良かったな。

裏のうちの子とペアを組むスピーディーなやつも良かった。イマイチなのも、あるね。現代的な価値観との相違が…

最後のブードゥーのやつは特に問題作だな。現代では発売できない内容だろう。さして面白くなってないし。

「消せるボールペン」30年の開発物語 (滝田誠一郎)

フリクションボールの開発秘話。断片的に知っていた、英雄達の物語。苦節30年。技術とアイデアで人類を良き方向に導いたその歩みは、まさに英雄伝説と言えるだろう。

温度で色が変わる温度計とか、子供の頃に持ってたなあ。その流れをくむのか、このフリクションボールは…

ちょっと高いんだけどね。あと署名するときとかに使えないから、そういう難しさはある。私はボールペンで書くときはそもそも消さないし。考えるときはvscodeやgoogle keepで書く。

放哉の本を読まずに孤独 (せきしろ)

どうせ読んでも孤独だろうが!

自由律俳句をもとにしたエッセイ集。かなり自由奔放に書き散らかしている。これがこの著者の本領か。楽しそうだなおい。郷愁の漂う、子供/学生時代の昔話みたいなのも多い。途中から中央線ポエムみたいになるのはどうかと思った。読む人を選ぶのでは? 私は中央線が実家で故郷だから、対象読者ど真ん中な可能性?

そして基本的に自分しか出てこない。他人が出てきたとして、無駄に他人に気を使って自問自答する自分という構図。これが孤独の側面だ。

屋久島トワイライト (樋口明雄)

屋久島でオカルト。まあオカルト小説はこうなるよなあ、という感じの展開。途中、人名を間違えたのではと思える場所があった。

屋久島の雰囲気を感じられるだろうか。将来行ってみたい島ではある。だがモンスターとの戦闘は俺のビジネスじゃないよなあ?

シリーズ第2作みたいなことがあとがきに書かれていた。意味深なエピソードはそれか。記述は露骨なのに、あとがき読むまで気づかない自分の鈍感さを自覚してしまった。

東方見聞録 (マルコ・ポーロ/青木富太郎訳)

自宅の近所に「丸子」という地名があります。そんな奇縁から読むことになったこの有名な旅行記は獄中で作家に語った内容が書物になった…らしい(獄中と言っても犯罪を犯したわけではなく、敵対国の捕虜になった)。だから、現代に起きたことであれば、著者はその作家ということになるだろうか。あるいはスポーツ選手の自伝のようにライター(インタビュアー)の名前は著者としては扱われないのだろうか。まあそんなことはどうでもいい。