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山椒の実

Category: Books

SPEED (金城一紀)

The Zombies Seriesと銘打ってるから、こりゃホラーかスプラッターか、と読み始めたところ。実際は疾走感のある青少年のアレで、思いがけなく爽やかな読後感だった。なんでズンビーニンジャ出てこないの?

主人公の印象的なシーンは映像化を念頭に置いたものか。どうしたって、映えるだろうねえ。文章だけですでに神々しいものがある。

しかしこれ、地名的には舞台のモデルは私の母校の可能性があるな。学生の当時は学園祭にはあまり参加しなかったが、一応は格闘系に分類される運動部だったから、警備側での参加というつもりで読むシーンもあった。まあボコされる側になるわけだが。

フランダースの犬 (ウィーダ)

アントワープのルーベンスのあれ。

以前に誰殺を読み、今回原作小説の訳を読んだからには、あのアニメ見てなくても語れるよね、パトラッシュ。もう遅いぜ。

犬の寿命と人間の寿命をうまいことミックスさせたところがミソなんだろうなあ。このわりとアッサリした作品を、よく論評したなあ、誰殺は…

影踏亭の怪談 (大島清昭)

怪談の短編集、呻木叫子シリーズ(?)。もうちょっとこう、夏に読んだ方が季節感が出たかな。まあそんなことはいい。

本格的な理論派のオカルト推理小説? って感じかな。この種の小説にあんまり手を出してこなかったから、どんな出来なのかはよく分からない。娯楽としては、なかなか悪くないと思う。推理小説だけに人は気軽に死んでいくのだが。

オカルトルポの原稿編と推理本編が散りばめられて、原稿では匿名、本編では実名という書き方の違いが文章のリズムになっていて云々…

親の家を売る。 (永峰英太郎)

相続した家を売った自分の体験をもとに、割と網羅的に必要事項を丁寧に説明した本。まあ、参考にはなるね。なるけどね。

幸か不幸か、自分も相続の処理をしたことがありますけど、なんだかんだで、カネを残すのが一番っすよね。面倒がない。

しかしですね、上場もしてない/電子化されてない変な端株だの、騙されて買った山林(しかも登記の処理を複数代に渡ってしていない!)だの…もう無視するしかないよ、こんなの。義務化は知ってるけどさ、何人の先祖の生まれてから死ぬまでの戸籍謄本を集めなきゃいけないんだっての。2人でも大変だったんだからさ。郵便局に通っては定額小為替を買ったり送ったり、コンビニコピー、封筒に詰めて、返ってきた謄本を読み解いて次の送り先を調べて…

デス・レター (山田正紀)

不思議な人探しの物語。連作短編。第1話のインタビューのところがなかなかいい出来で、グッと引きつけられる。

問題はだ、手紙で、フリガナがあることだよ。青いインクの手書きの手紙。そこにフリガナふる? 人と書いてラヴ…この不自然さ。縦書きなの? 横書きなの? 気になってしょうがないよ。

転機になる、ヘミングウェイのやつが良かったな。あと高校生のやつもかなり良かった。

読んで思ったのは、無理にオチをつけなくてもいいのに。だった。どうしたって無理があるよねえ。まあ、これがストーリー的にメタな話になるのは、妥当なんだろうけど。

暗闇にレンズ (高山羽根子)

動画を映すレンズと、それにまつわる一族の物語を軸にして、Side AとSide Bの落差と、つながっていく過程が楽しめる小説。特に、Side Bのリアリティがいいね。まるで学術記事さながらだ。ちょっとした表現へのあこがれで「さながら」言いたいだけだが。文章はまさにプロだねえ。上手い。相当な達者と言えるだろう。

途中から様子がおかしくなっていくのがこういう、優秀なSFだよね。ABそれぞれで動く物語。ラストも淡々として、それでいてすごい。余韻がある。

民間人のための戦場行動マニュアル もしも戦争に巻き込まれたらこうやって生きのびる (S&T OUTCOMES, 川口拓)

危機的状況を生き延びるための知識を集めた本。著者は自衛隊の教官?

興味深い知識はあるし、自衛隊がどんなことを想定して守備しようとしているのか、窺い知ることができる。まあ実際は想定通りには来ないんだろうけど、前触れがあるだろう、という想定はどうか。ウクライナでのそれのような大規模な侵攻を考えれば、前もって危機の情報を得られるのは事実だろう。

それで、その情報を見てから準備していたんじゃ間に合わないことは想像できるよ。そこでこういう本なんだな。

走る奴なんて馬鹿だと思ってた (松久淳)

おっさんの文筆家がマラソンに目覚めて独りよがりの文章をねっとり書き連ねる話。自分でわかっていて、書かずにはいられないのが文筆家のサガか。うちの近所にも来てたんだな、この人。中目黒のくせに。いけすかねえ。

私は今はやめてるけど、走ってた時代がある。今は、単にブラブラ歩くだけですね。そんな徒歩も、コースによってはランナーと同じルートを通ることもある。たまに、遅いくせに抜かしてくるやつがいるんだよね。抜かしてちょっとしたらのんびり歩きやがるの。しょうがないから(同じペースで)歩き続けて抜かすんだけど、ちょっとしてから抜き返してくるわけ。こっちが走ってるならまだしも、自分としては普通の散歩の一定のペースで歩いててもそうなることがある。こういうオッサンがウザいんだよね。散歩に負けるなよ。いや、負けることを分かってくれ。分かってるなら抜かさないでくれ。ランナーを徒歩で抜かすのは気を使うんだよ。でも、遅すぎるんだ。こっちは徒歩で、スピードを変えてないんだ。

もう探偵はごめん (ウィリアム・アイリッシュ)

短編集。推理というわけでもなく、小噺風のものが多い。

中では、さわやかにオチをつけた、最初の紙幣アレルギーの話が良かったな。

裏のうちの子とペアを組むスピーディーなやつも良かった。イマイチなのも、あるね。現代的な価値観との相違が…

最後のブードゥーのやつは特に問題作だな。現代では発売できない内容だろう。さして面白くなってないし。

「消せるボールペン」30年の開発物語 (滝田誠一郎)

フリクションボールの開発秘話。断片的に知っていた、英雄達の物語。苦節30年。技術とアイデアで人類を良き方向に導いたその歩みは、まさに英雄伝説と言えるだろう。

温度で色が変わる温度計とか、子供の頃に持ってたなあ。その流れをくむのか、このフリクションボールは…

ちょっと高いんだけどね。あと署名するときとかに使えないから、そういう難しさはある。私はボールペンで書くときはそもそも消さないし。考えるときはvscodeやgoogle keepで書く。