Skip to main content

山椒の実

Category: Biography

人生を変えてくれたペンギン (トム・ミッチェル)

私はこういう冒険系の人が書いた本って結構好きなんですよねー。

1970年代にタンカー事故で原油まみれになったペンギン(ファン・サルバドール/ファン・サルバド)を助けた著者が、ペンギンと過ごした当時の日々を綴った作品。

実話なんで終わり方は伏線もなくて唐突なんだけど、なかなか読ませてくれた。時代も感じさせる。イラストもいいですね。

東大卒プロゲーマー (ときど)

格ゲーの達人・プロであるときどがその半生をつづる。先日劇的な優勝を飾ったらしく、話題にもなりました。私は格ゲーは嗜まないんですけど、読んでみた。

なかなか良かった。情熱ね。自分に情熱は足りているか、子供たちはどうだ、と思いを馳せる。ウメハラの本も読みたくなったよ。まあ本人が言うように周りの人に恵まれたというのもあるんだろうけど、この人は能力が高いんだよね。

ある事件で研究者に情熱を持てなくなって大学院を去るところは残念に思った。それなりに優秀で情熱を持って成果を上げたが、研究ではなく試験で蹴落とされたっていうね。院試ってのがあるんですね。私は早稲田ですが同じ研究室に上がるときは試験というのはなくて、学部の成績で落とされたり、合わなくて移籍することはあったかもしれないけど、普通はフリーパスでした。東大は確かに院試があるって話は聞きましたね。

止まった時計 麻原彰晃の三女・アーチャリーの手記 (松本 麗華)

あのアーチャリーの半生をつづった自伝。この人の人生もかなりのハードモードですね。本自体はなかなか良かった。当事者の文章から、真実をどう読み取るか。

まーどうしてもこの人に何らかの責を負わせたい人がいるってことは知っているが、理性で考えてみようよ。当時年端もゆかぬいたずら少女に何ができたのか。そして、この人にしか見えなかった景色がこの自伝によって明らかになる。

度重なる入学拒否にめげず、裁判を起こして大学卒業までこぎつけた根性には恐れ入るよね。そして母親はクソだな。

徳は孤ならず 日本サッカーの育将 今西和男 (木村 元彦)

Jリーグにいるじゃないですか、広島系の優秀な人物たちが。川崎(フロンターレ)が最近までお世話になっていた風間さんとかもそう。

この、東京圏でも大阪圏でもなく、広島。割と多いんです。しかし、なぜ広島なのか? そのルーツとなった人物の伝記。著者があの木村元彦だけあって読み応えも満点で、なおかつ素直に読める。オシム本、我那覇本に引き続いてこれとは…ベストスポーツノンフィクション率が最も高い著者だね。少なくともサッカー系ではぶっちぎりだろう。

確率論を信じて世界50か国のカジノで計8億円を稼いだ僕の人生 (野口 健司)

プロのギャンブラーがカードカウンティングを武器に世界のカジノを荒らし回った話。名前と顔を出して著書を出しているからにはもう引退したんだろうと思ったら、そうでもないらしい。

ギャンブラーが一番恐れるのは出禁になること。出禁になると途端に稼げなくなるってわけ。甘いルール設定の賭場はまだ世界中に残っているらしく、ラスベガスみたいな本場では通用しなくなった手法も通用するとか。

前半生もなかなかのものだが、後半のアフリカや中南米でのギャンブルもかなりグイグイ読ませてくる。確率論ということだとかなり長時間、繰り返し賭け続けなければ儲けは出ないんだろうなぁ。私は飽きやすいからダメだろうな。この人はブラックジャックが本業だけど、小学生時代のビン集めやファミコンゲームの転売、違法コピーなども含めて、波乱万丈? の裏稼業の連続。痛快ですね。人生の参考にはならなさそうだけど、読み物としてはとても面白かった。

ジハーディ・ジョンの生涯 (ロバート バーカイク)

ISの、あの覆面の処刑人、モハメド・エムワジについて記した本。イギリス人ジャーナリストが、エムワジがシリアに渡る以前にインタビューしていたことが分かったので、取材をして本にした。

インタビュー時点のエムワジはイギリスの諜報機関から嫌がらせを受けていて、結婚や就職も邪魔されていた。それで絶望したことも、彼がシリアに渡って処刑人になった一因ではないかという印象を持たせる。実際に多くのムスリムが脅され、スパイとして勧誘されていた/いるようだ。

困難な選択 上 (ヒラリー・クリントン)

活動家、弁護士、知事夫人、大統領夫人(ファーストレディ)、上院議員、国務長官(日本でいう外務大臣)、そして今度はもうじき大統領になろうかというあの人の、国務長官時代のことについて述べた本。民主党の予備選でオバマ現大統領に負けて、国務長官への就任を依頼されそれを受諾してからの激闘の日々…なんだけど。

はっきり言うとつまらない本だった。この人にどの程度の意識があってこの本を書いたのか疑ってしまう。経歴からすると「ガリア戦記」を書いたカエサルと比較されるような立場ですよこの著者。真面目にやれよ。いや、真面目にやりすぎなんだよ。眠くなるよ。

つかこうへい正伝 (長谷川 康夫)

つかこうへいの評伝。つかこうへいの劇団員でライターで今も芝居に関わる仕事をしている著者が丹念に描く。結構長い本でした。

死んでたんですね、つかこうへい。私は芝居やら映像やらは見てないんですが、小説は読んでました。中学時代かな。その頃すでに代表作がいくつもあったと記憶している。そんなんで、私には小説家という印象しかないんです。何かの小説で早稲田のラグビー部と試合をすることになった主人公がボロボロになりつつ「オラァ、慶應よ」と啖呵を切るセリフが印象に残っている。あの頃は自分が慶應に行くのかと思ってましたが、自宅から遠いやら何やらで結局、早稲田に行くことに…。そんな私ももう40のオッサンですから、そりゃつかこうへいも死にますよ。

ヒキコモリ漂流記 (山田ルイ53世)

あのルネサーンスの人が波乱に満ちた半生を綴る。相方の樋口との出会いのあたりから先は随分あっさり書いてる。

その生い立ちは凄まじい。朝顔の話とか、ランドセルの話とかはとにかく凄い。まあでも「盛ってる」感もあるんだけどね。自己分析は割と正当なものかもしれないな。少なくとも間違っているという気はしなかった。頭は良かったんだろう。何が彼をそうさせたのか。慢心、環境の違い…

我が逃走 (家入一真)

あの家入さんの続編。ロリポップとかペパボの人ね。引きこもりから社長になり、最年少で上場、そして転落。振れ幅の大きい人生を振り返る。絶頂から2年でどん底だもんね。さすがだ。社長時代も打ち合わせブッチとかしまくっていたらしいという。おいおい。

飲食業にのめり込み、ペパボを追い出され、お金に困るようになって、離婚して…しかしこの人の凄いところはやりたいことはやってるんだよね。やはり家入一真。誰よりも繊細で、それでいて破天荒。そんな芸当、この人にしかできないよね。