問題の難易度

先日、会社の研修でテストみたいなのがあった。研修と言っても集まってやるわけじゃなくて、ある日教科書が送られてきて期限を切られて、それまでにWebで問題を見て回答を入力していけばいい。選択問題が20問、論述問題が1問。

だいたい選択問題は教科書にそのまんま答えが書いてあって、要するに忙しい社会人のために、テストを受けるときに教科書を開くことが学習である、というスタイルだ。論述問題もけっこう簡単なものだった。キーワードがやたらにたくさんある上に文字数制限がきつく、並べて間に言葉を入れて論理が通るようにすれば終わり。適当にやったから間違いも多いかもしれないが、設問はかなりバカバカしかった。あの教科書を使う限り、答えは一つしかない。教科書に索引をつけてない理由がよくわかった。索引つけちゃったらさすがに簡単すぎて問題にならないからだ。あざとい。

一方で私は簡単な経済学の通信教育を受けているのだが、その中間テスト(もう〆切は過ぎたから、書いてもいいかなと思う)。この問題の難易度がけっこう高い。1問目からしてすでに講義で出てこない用語が出てきて教科書を見ても埒が明かないのでぐぐり、問題は考えさせるものばかりで、一部の問題は教科書をよく読めば済んだが、ほとんどの問題にうなった。特に問題を見てから数週間ずっと悩んでいたのが、次の問題。

路上生活者をなくすために、ある地方自治体が検討している次のような対策1〜4のうち、パレート効率的な結果を導くと思われるもの1つを選択せよ。

  1. 路上生活者がどこかに泊まれるように、ホテルの無料宿泊券を配布する。
  2. 路上生活者の食料、衣料、住居サービスなどの購入を助けるため、それらの価格に上限を設定する。
  3. 路上で生活しないように、監視委員を増員し、厳しく取り締まる。
  4. 路上生活者に対して、生活費を分配する。

パレート効率性(Wikipedia)という概念は、簡単に言えば他人を犠牲にしなければ利益を得られないという状態のこと。他人に何も犠牲も与えずに利益を得られるかどうか、というのが問題を解くカギである。そもそも「パレート効率的な結果を導く」という表現がいやらしい。結果がパレート効率的であれば、その状態から別の状態に移行するにはどこかに犠牲が生じる。でも「導く」という言葉を使っているから、選択肢にある動作が誰にも犠牲を生じさせないかどうか、という点を問題にしているのだと思う。

私はまず、ひとつひとつの選択肢について、自治体、住民、ホームレス、その他の利益と犠牲を考えた。1,2,4はホームレスハッピー、2,3は住民ハッピー、1はホテルハッピー、3は監視員に採用される求職者ハッピー…って、この考え方をしはじめると、可能性は無限にあるんだが(笑)

で、選択問題の常として、選択肢を分類して答えを絞る、ということをやってみるわけだ。受験戦争を生き抜いた本能のようなものだ(私は大学受験は経験しておりませんが)。

選択肢のうち1と4は同じようなもので、自治体が納税者から受け取った税金か債務から(現金か宿泊券かの違いはあるが)路上生活者に分配する、アメ。3はムチ。2が別格だ。1と4は納税者に犠牲を与える。無料宿泊券と言えど、ホテルマンはボランティアじゃないから、何らかの対価を自治体が与えるのだ。対価を与えないならホテルマンに犠牲を与えるし。3は路上生活者に犠牲を与える。2は小売店に犠牲を与える。…答えがない!?

というわけで、出題者の意図がわからなかった。住民とホームレスの利害だけを考えればよいのか、そうでないのか。ムチというのも監視委員にホームレスを大量に雇えば逆に不利益はないのかも、とかいろいろ考えた。実は無料宿泊券というものが特別なもので、誰にも犠牲を与えないというケースが考えられるかどうかということも私には悩ましかった。だっておれ、バカだもん。で、私は2にマークしたが、2が正解かどうかはいまだに全く自信がない。小売店は神様だから、利害を超越していることにした。…いや小売店から見ればお客様が神様か(笑)。しかし住民とホームレスというよりも、現地の小売店とホームレスの対立のほうが深いかもしれないのだ。困ったよ。

他にも公共財の問題も難しかった。突飛な選択肢が1つあるのだが、論理としてどうなのかという話だから、結論が突飛かどうかは関係がない。結局その突飛な選択肢にマークしたのだが、これも正しいかどうかいまだ自信がない。問題は手元にあるので、いまでもどれが正解なのかを考える。提出する直前まで、かなり揺れた。だっておれバカだし。

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  1. 1.2.4.は該当の地方自治体の区域に路上生活者を留める形での政策だが、3.は該当の地方自治体の区域から追い出す形となる。このような政策は、該当の地方自治体からみて第三者にあたる他の地方自治体および他の地方自治体に住む納税者に被害が及ぶ、という視点から見てパレート効率的な結果を導くと思われる。

    こんなもんでどうでしょう?全然自信はありませんが。

  2. ああそうか、自分の自治体と他の自治体というのもあるんですね。それは考えませんでした。「路上生活者をなくすために」だから、お金云々じゃなくて路上生活者のいる/いないだけで効果を見たほうがよかったのかな。—–

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