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山椒の実

これが本当の「忠臣蔵」赤穂浪士討ち入り事件の真相 (山本博文)

浪人繋がりということで、日本史上で最も有名な浪人たちの本も読んでおこうと。

資料をもとに、あの事件を解き明かす。私は昔住んでいた場所が大石の基地や吉良の領地に近かったりするんで、何かと気になる事件ではあった。創作が氾濫して久しい状況で、創作と史実を分類して評価を加える。

よくまとまっていたと思います。当時の武士の価値観も理解が進んだ。喧嘩両成敗。

やはりこれは浅野が悪いな。その短慮に加えて、斬りつけておいて殺害できない不始末。せめてもう一太刀! それで家来に命賭けさしてケツを拭いてもらうなんて。それはともかく、浪士の立場による考え方の違いとか、吉良の若旦那の評価とかね。立派なやつも報われない。そんな世の中。

自分の中に毒を持て (岡本太郎)

言いたいことも言えないこんな…

川崎が誇る伝説の一人、岡本太郎。その代表著書の新装版の文庫を読んでみた。実績上、どうしてもアーティストという立場が強調されがちだが、彼に関しては思想家でもあるのだ。芸術ってこういうことなんだよなー。

なかなかいいことが書いてある。この人の文章は常に本気だし、小賢しくなくていいよ。芸術ってのはこうじゃなくちゃね。

こういうマジな本は知恵を持ち始めてひねくれたティーンエイジャーに読ませたいな。自分も読んで良かったと思う。そして真似して妙なことをし始めたら、その時は温かく見守りたい。

消え失せた密画 (エーリヒ・ケストナー)

ドイツの肉屋がデンマークで戦う。少年向けのような内容だが、主人公が間の抜けた肉屋のオヤジだからなあ。登場人物それぞれキャラは立っているし話は面白かったが、チグハグさは否めないな。ラストの展開も怒涛。

小道具の密画というのも良かった。高価っぽくて取り回しが良い。偽物の準備も万端で、物語もテンポが良くて引き込まれるし、電車の中の暇つぶしに読むのには手頃だった。

と言ったように、全体的には楽しく読めた、良い作品だった。

浪人回避大全 (濱井正吾)

9浪したという著者が教訓を語る。

多浪と聞いて感じるイメージと実際のものは異なるんだな。最初の著者の浪人年表を見て思う。この人は凄い。本物というか、浪人であって浪人でない、勇者とかヒーローの類の人物だ。

仮面浪人も、自分が見たことのある仮面浪人はすぐに大学来なくなったのでそういう感じかと思っていたのだが、ちゃんと単位とって卒業、就職までしてるんですね。編入試験受けて名の通った大学に移ったり。そして働いて学費を稼ぎながら勉強してさらに上の大学を受けると。それが浪人だと言われても、確かに受験を目指して勉強はしているから浪人なんだろうけど…

国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動 (伊藤祐靖)

能登半島沖の不審船事件で煮湯を飲んだ自衛官が、その経験を元にいわゆる特殊部隊の創設に関わり、退職後も技能を磨く人生を送る。その一端に触れることができる本。国とは。そのアイデンティティは。

火力のあるデカい本隊だけでは対応できないような、戦争未満の事態が念頭にあり、そのための技能を考えるとそれは特殊部隊、という単純な話ではある。だけどその特殊部隊も人間と道具で構成されているわけで、ではどんな技能を持つ人間達にどんな道具達を組み合わせればいいのかって話になる。特殊部隊は持てる火力も低く安全性が低い場所に行くから…

問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術 (安斎勇樹)

ミーティングのファシリテータが使う問いかけの技術を突き詰めた学者による本。学者らしく整理されて書かれている、良書だと思います。テーマもはっきりしていて変な思想もない。実戦的な、技術。

お通夜ミーティングを避け、チームのパワーを発揮させていく問いかけの重要性とそのテクニックを示しているわけだが、なぜ問いかけが重要なのか。それはこの本を読めば分かる。どういう技術で良いミーティングでメンバーの力を活かしていくのか。それもこの本を読めば分かる。

三多摩原人 (久住昌之)

何を隠そう私は北多摩南ブロックの小金井市出身なので(空白期間もありますが)、まさに地元の話が語られた散歩エッセイ。

三多摩…ありますよね、そういう言い方。軽く蔑視が入っている差別語という扱いだったはずだが、書籍のタイトルにしちゃって大丈夫かこの人?

中身は、まさにあるあるの宝庫で、懐かしく思った。私よりはだいぶ上かな、世代は。

創作するものに特有の? 観察力というか、そういうものも感じられた。著者はかなりいろんなことをやってきた人だから、そういう経験に裏打ちされたものがある。まあでも後半はダレたような気もした。しかしまあ、地元の人以外は読んでも楽しめないんじゃないかなとも思った。

時間とは何か (池内了)

時間についてうだうだ述べていく本。当代最強のイラストレーター、ヨシタケシンスケがイラストを担当している。さすが、味のあるイラストでそそられるね。

結局、分かったような分からないような話に終始した印象。まあ、そういう本なんでしょうね。もともと、身近ではあるが明快なテーマにはならないやつだ。

吉原花魁日記 (森光子)

父親が早死し、借金のカタに吉原に売られた女性の日記。まあ周旋人や周りの人を恨んでどうなるもんでもなくて、どう考えても母親が悪いんだけど、そこはなかなか恨めないんだろうな。最後の方は気づいているようだったが。

生々しくもひどい話だった。随分キツイな。こんな人生もあるんだな。全ての人が幸せになる世界はかくも遠いものか。この日記の冒頭が大正時代、1924年。今からちょうど100年前。100年経過して、今はどうか。どうなのか。たとえば当時と比べて教育や経済は進んだわけだけど。

蠟人形館の殺人 (ディクスン・カー)

またホラーかー。ミステリのつもりだったのに…まあ蝋人形でホラー要素ナシはさすがに無理すよね。だって蝋人形で、なおかつ館だもんね。

しかしこの探偵、最初からいろいろ知りすぎじゃないか? こんだけ知ってて手こずるのか。

まあ推理自体は大したことがなく、凡庸な警察官が普通に捜査していればこの探偵よりも早く解決できたに違いないし、最後のカード対戦は何なんだ? 何がしたいのか。思わせぶりな悪役も、退場はあっさりというか、「ついで感」が強いというか…これはどうなんだか。もうちょっと主役を張ってもよかったんじゃなかろうか。