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山椒の実

川崎警察 下流域 (香納諒一)

川崎でよくある殺人事件。今でもちょくちょく起きるよね。1970年ごろが舞台で、雰囲気がすごい。昭和後期どまんなか。文章だけで絵で見える。照明が暗い。風景が霞んで見える。空気が悪い。まさにそういう時代、しかも川崎深南部。これはアツいよ?

読んで確認、あーこれだよ。闇のフルコースだ。オンパレードだ。期待通りの。警察は肉盾を使って最強殺し屋のアタマを撃ち抜くし、バラバラ殺人とギャングバトルを始終やっていて、公害に差別と水商売、役人の腐敗…人を殺すかラップが上手くなるくらいしか、のし上がる道がないわけだよ、この街はさあ!?

縄文の森へようこそ モリと精霊のおとぎ話 (榛谷泰明)

想像上の縄文時代の物語。民話に残る(?)縄文の風が。スピリチュアル? 縄文を伝えるライフワークに出会ったTVマンは語りかける。歩きながら。ポエムだ。実際、想像で語っているに過ぎない部分も多い。が、職業柄か、活動の中で各国各地の伝承に関して多くの話を集めているのは良いと思った。

自分の認識では、地続きだった頃に大陸側から来て住んでいたのが縄文人で、島になって独自の生活を続けて定住。その後大陸から海を渡って大陸流の稲作中心の生活を伝えたのが弥生人。ニニギの人たちね。混血と駆逐が進み、現在の日本人は多くが弥生系が強いが、アイヌとか北の方は縄文系が続行していた時期が長いので文化的な摩擦がある、というもの。

心 (ラフカディオ・ハーン)

明治の頃の気風をよく伝えてくれる本。時期的には、日露戦争前って感じかな。示唆に富んでいると言える。ような気がする。私は懐古主義ではないし、昔のほうが良いとか、古きに戻るべきとか、そういう気持ちになることはないんだけど。興味本位?

まあ何かしらの教訓を受けて良い将来を作れればいいだろうし。世の中はガンガン良くなっているとはいえ、微調整も必要だろうよ。その学習データとして歴史は良いものだ。

最初の停車場が凄かった。全体の方向性を決める、その決め手になるような衝撃。その衝撃のまま、読み進めることになる。

うちの父が運転をやめません (垣谷美雨)

タイトル通り、田舎の老親が運転をやめてくれないという、小説。社会派?? っていう書きっぷりでもないけど、社会問題ではあるよね。自動運転で解決する、というわけにもいかない時代。まだ。

登場人物それぞれの親子関係を軸に、迫られる選択や希望を描いていく。どうしても離れられない自動車も、人々の断絶を促す存在だったのだった。ではどうする? 答えの見えない問いに、迷える中年男性が下した決断はいかに?

住宅については、確かに都会の住宅は狭い、と思う。長い期間を東京都・川崎市・横浜市で過ごしてきた自分もそう感じている。一人当たり、もうちょっと広い空間があってもいいと思う。古民家はそんなに住み心地が良いものではないんだけど。まあ、そのへんは手入れによるかな。うちの実家とかは…(略)

カラスは飼えるか (松原始)

鳥類の研究者の雑学文集。サルの話に始まって、鳥類、恐竜、そして専門のカラス。なかなか楽しめた。

専門的な話や自伝的な内容かと思っていたけど、一般向けの軽い小話を集めた感じで、暇つぶしの読書にはちょうど良かった。

キリンの話でも思ったけど、分子生物学の方面ではこういうシャレた雑文は書きづらいんだろうな。

日経テクノロジー展望2017 世界を変える100の技術

いやなんで2017年のを読んでんのよ。

と言いたくなるのだけど、最新のものではなく答え合わせの途中に近いような予測を見ることにも、意味はあるだろう。川崎が初めて大きなタイトルを取ったこの年を考えるのは、ほどよい感じではないかな。中村憲剛がグラウンドに突っ伏して泣いたあの日、俺たちが描いていた未来図。あの時J2に叩き落とした大宮がJ3まで落ちた挙句レッドブルに買収されたり、千葉はJ2に定着していまだに…

LLMという言葉はまだGPT-1も出てきてない頃。ベースになったTransformerが発表されたのが2017年と言えば感覚が掴めるかな? 機械学習だ、強化学習だ、囲碁将棋のAIだ、などと言われていた頃だね。

サリンとおはぎ (さかはらあつし)

異端の映画人の自伝。人の人生はそれぞれ違うといえど、ここまで通常から外れていると何の参考にもならない。ただ、面白い内容ではあった。なんかすごい人が歩んだ、その道なき道。切り開いて、続く人のない、唯一の道のり。学習障害を乗り越えてスキルを磨き、人脈と華麗な学歴と職歴を作ったものの。

サバイバーであるがゆえに、そこと関係ない物語が書けないという悩みは深いし、この人の場合は複数の事件や事故や事案のサバイバーで、後遺症もありさらに複雑で。普通はここまでの経験があるとなかなかポジティブになれないだろうな。そういう凄さもある。

キリン解剖記 (郡司芽久)

キリンの研究者の自伝。キリンの解剖を繰り返し、技術と知見を高めて首の構造の謎を解明する。胸の骨が動いて首の機能を果たし、可動域を高めるらしい。頭から見ると50cmも違うらしい。自身の成長と謎の解明。なかなか楽しい話だった。

自分からすると、学部1年からこんな学生であるというのがすでに凄い。研究者になるべくしてなった、研究するべくしてした、という感じ。前触れもなく生まれ落ちた野生の研究者、みたいな。少ない確率だが、こういうことが起きるのが人類なのだ。天職、というものは、ある。そして、さまざまな謎は少しずつ解明されていくのだ。

縛られたプロメテウス (アイスキュロス)

プロメテウスと言えば時系列DBで監視系のソフトウェアの名前ということになって久しいが、古くはギリシャ神話の登場人物で、人類に炎を渡したテクノロジーの化身と言える人物ですね。タイタン系なので、巨人なのかな。

著者は例の、アイスキュロスだよ。こういうのを読むのも良いだろうよ。ギリシャ好きにはたまらないんだろうな。

これは…劇の台本か。とにかく、、、

ゼウスはクソ! ゼウスはクソ!! ゼウスは、クッソ!!!

夜歩く (ディクスン・カー)

バンコランのシリーズ。ホラー味のある。ダメ、絶対。

この種の本では、言い回しがかっこいいことがあるんだよな。メモ帳を手に読みたくなる。序盤で早速、いつか言ってみたい言い回しを見つけた。

「ところで、この部屋は客を殺害する以外の何かの目的で使われているのかね?」

いつ使おうかな。ワクワクしてきたぜ。

しかし、フェンシングの達人が簡単に首チョンパされるとは信じがたい。最近では日本の選手も世界で活躍していて、ちょうど今やっているオリンピックでもすごいことになってますが。私の頃も日本代表に入るような選手は練習や試合で手合わせして、自分からするとすごい強かったですが、世界ではなかなか上には行けてなかったですね(一応経験者です…ガチ勢の底辺、くらいの)。その感覚でいえば、あの人たちが1回戦負けするような大会で優勝するのが世界チャンピオンだよ? そんなスキがあるとはとても、ねえ。