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山椒の実

洞窟オジさん―荒野の43年 平成最強のホームレス驚愕の全サバイバルを語る (加村 一馬)

親から虐待を受けて中学生で家出して、そのまま人間界を離れて洞窟に住んだ男が壮絶な半生を淡々と綴る。なんともすげー話。シロの話とか、サバイバル関連の知識を詰めた話とか、途中で優しかった兄に会う場面なんかもいいし、ドラマだよね。ただやっぱり人間界を離れて徒歩でいろんなとこに行ったり、自殺しようと思って失敗して富士山の樹海にも行くんだけど…

凄惨な話と思いきや、本人の資質か編者の特性か、暗さがあんまりないので普通に読める。悪人ではないんだよな。ただこの人相当汚かったろう。

審判 (田代まさし)

田代まさしが最初の出所後について記した本。まあ、割と元気に再起に向けていた頃の話で、その後また薬物で捕まっちゃうというオチがあるんだけど、出版時期から言ってそこまでは書かれていない。でもそれを知って読むと薬物の怖さがむしろ分かるというこのアングルね。絶妙なものがある。

この本の出版から次に薬物で逮捕されるまでに1年ちょっとしかかかってないわけだ。それも、無分別な若者ではなく、50過ぎて紆余曲折、酸いも甘いも噛み分けたはずの、いいオッサンがだよ? 割と寛大に仲間の支援も受けていた奴がだよ??

安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生 (安田 隆夫)

ドンキの創業者が引退に際して語る、その物語。割と楽しく読めると思う。まあ若い頃の麻雀の話とかも交えつつね。

ナイトマーケットの発見、深夜営業に圧縮陳列にPOP洪水でアミューズメント性が高い店作り。どうにもうまくいかないので権限を部下に委譲してゲームのように競わせてみたら好転したらしい。長崎屋を買収したのがドンキだったというのは意識してなかったな。あんまりドンキ行かないんだよねおれは。最後に行ったのはいつだったか…そういう、俺みたいなファミリー層向けの店舗も出しているみたいだ。

科学者は戦争で何をしたか (益川 敏英)

素粒子でノーベル物理学賞を受賞した学者で左派の闘士が語る戦争と科学者の関係。平易で読みやすい。深いことは言ってない。言ってるのは非常に単純な原理、「おまえら科学者である前に人間だろ!?」と。まあホント、大したことは言ってないな。誰もが思うことなんじゃないかという気もするし、そういうことを何にも考えてない人もいるんだろうなとも思う。

実際のところ、私も若い頃こういう類のことを考えていた。そして新卒入社して、最初に上司になった人に飲み会で聞いてみたことがあった。つまり、軍事関連の仕事があったらやるべきか否か。僕は敵を殺すために就職したわけじゃないから、やりたくないと思ってたんだよね。敵といえども命は重いよ。だから良心に聞いてダメなら会社辞めるしかないなコレ、と。

この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた (ルイス・ダートネル)

文明が消滅したあとのサバイバル術、及び文明の復活のさせ方について論じた実用書。非常に興味深い。著者の知識量に圧倒される。現代はThe Knowledgeというものらしい。知識、だけじゃちゃんと訳したとは言えない言葉らしくて、うまい日本語がなくてこういう邦題になったみたいだ。

この本の魅力は、この知識量の詰め込み方。とても一冊に収まる量ではなかった気がする。こういうコスパの良い知識のタンクは一家に一冊持っておきたい気分になるよね。まあ僕は大破局が起きたら生き残ってないんじゃないかと思うけどね。けっこう判断悪いからなー。

わたしを離さないで (カズオ・イシグロ)

クローン系SF。TVドラマにもなっていた(私は見てないですが)。ラストまで続く静かな進行が特徴的。こういうのも、いいよね。

臓器提供のために育てられたクローン人間の物語。まあよくあるテーマと言えばそうなんだけど、この設定でこうやるかー。というのは重苦しくも静か。無駄がなく、いやむしろ無駄しかなく? それでいてやはり悲しい。文章量も多く、リアルでいてなおかつ不自然なところがいい。このくらいディテールを書き込んでいてくれると安心して読める。いや、最後どうなるんだろうと思ってそんなに安心できなかったんだけど、この独特な読後感は万人にオススメできるだろうな。

誰がネロとパトラッシュを殺すのか (ディディエ・ヴォルカールト, アン・ヴァン・ディーンデレンら)

フランダース地方で起きた愛犬家殺人事件の全貌を追う探偵物語。

ではなくて、日本人ならば誰もが知っている「フランダースの犬」、その主人公ネロとパトラッシュ。私でもクタクタに疲れた時は反射的に「あー疲れた、パトラッシュ…」とつぶやきますからね。それについて論じた本。これは非常に良い本だった。

実際のフランダース地方(←ホントにあったんだ!!)ではこの物語は有名ではないし稀に読んだ人も嫌悪感しか持たないようだ。これ原著者はイギリス人の女流作家の女王みたいな人・ウィーダで、それでも晩年は落ちぶれていたらしいが、その人が後進国の田舎を見下して批判的に描いたフランダース地方の話なのだった。アメリカで何度か映画になったがエンディングがハッピーエンドに変更されたりしてやはり受け入れられず、日本でアニメになって受け入れられた。さすがにこの物語でアメリカンドリームを表現するのは無理ゲーだっただろうな。まあアニメは1年という期間に引き伸ばして膨らましているが、名作だよね、という。

怪奇四十面相 (江戸川乱歩)

二十面相シリーズ。二十面相が脱獄して明智・小林に戦いを挑む。大捕り物もあり、替え玉もあり、無人島にも行く。がんばれ僕らの二十面相。まあ、最後は負けちゃうんだけれども。でもまた脱獄して戦うんだ。二十面相は絶対に諦めない。

この本では二十では足りぬとばかりに四十面相を名乗る。早速のトリック、そして息をつく間も与えられぬ中、出来る限りの準備をして探偵に挑む。ここまでの悪条件でこれほど周到な段取り、準備ができるというのは超絶優秀なんだろうな、この人は。それを上回る明智・小林。二十面相という人は確かに部下を率いているんだけど、部下は名前がついているほどの大物がいないんだよな。そこが不幸か。ワンマンでは明智・小林のツープラトン攻撃に対応できないんだ。

赤ちゃんの値段 (高倉 正樹)

割と凄い話。日本の子供が海外に売られていくという話なんでね。

問題はいろいろあるけど、一番大きいのは日本では養子という制度があまり発達していない。そのため施設が預かった子供は9割方独立するまで施設で過ごすことになる。それよりは養子で家庭に入ったほうが幸せに人生を送れるんじゃないかというところ。そのへん発達している国は普通に養子に出したり受け入れたりする。ジョブズとかも養子なわけだしね。

そんな中でわざわざ海外から子供を取り寄せるというのはどうなのか。自分の子供として育てるからには返せと言われたくないし、生みの親とのつながりを持っていてほしくないという気持ちはわかるし、海外からもらってくればそういうトラブルが起きる可能性が少なかろうというのは、まああるかな。ただこれって完全に養父母側の視点でしかなく、子供視点で考えれば長じて実父母を探したいとなったときに海外よりは国内のほうがいいんじゃないかな。日本なんて基本言葉通じないし。それに割と裕福な日本から海外に貰われていくというのはやっぱり違和感があるよね。これも結局は貰い手がいないのが一番の問題。

熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録 (井川 意高)

あの100億スッて伝説になった不死身のギャンブラー、大王製紙の会長が書いた懺悔録(?)。懺悔録とは言ってもあんまり反省してない。正直そんなに悪いことしたわけじゃないと本人も思ってるだろうし、実際私も金持ちがギャンブルでスるというのは特段悪いこととは言えないと思うよ。

まあ100億という金額はスッた額で、自身が過半の株式を持つ子会社の余剰資金を借りたカネの総額は85億とかそのくらい。明るみに出た時点での残債は55億くらいだったらしいが。で、100億で何をしたかって、マカオに毎週末もうでてバカラに明け暮れていただけ、というね。ホント、他愛もない。摘発されたってゆうけど、それ悪事なの? っていうね。