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山椒の実

ガニメデの少年 (ロバート・A・ハインライン)

地球の人口が爆発し食糧難に苦しむ中、木星の衛星ガニメデへの移民に入った少年を描くSF小説。

開拓者というか、先に植民している人がいて、後から大量に送り出された人々。まあバラ色の生活のように騙されて来た、ある種の棄民? という地球でもよくあったやつね。ボーイスカウトの話とか、まあいろいろ話が出てきて。文体はハインラインだ。回想のように、解説的な進行。

隣人が強すぎた。死なないにも程があるな。父親も判断力が強い。人間とはかくありたいものだ。特に、大人の男ともなると。

傍聞き (長岡弘樹)

短編小説集。秀作揃いだった。文章の構成が上手いんだろうな。ストーリーとしては、職業に特有な出来事の中で小さな謎を解明する心理描写なんだけど、自然に引き込まれていく。

自分の職業で起きうる出来事で、こういう物語を書けるかなーと思いながら読んだ。前任者によって仕込まれたバグを運用でカバーしていたところ…嫌な話だなこれwww

ザリガニの鳴くところ (ディーリア・オーエンズ)

いいですか皆さん、ザリガニは…鳴く!

とても惹き込まれる文章とストーリー。もしさかなクンの実家がとんでもなく貧乏で、家族が次々に逃げ出してしまったら? みたいな話。

湿地で一人で生き抜く少女、近づく男たち。その観察力と執念深い収集癖。そして頭が良すぎるんだよな。小学校にすら通わず、他人との交流も限定的で、独学でそこまで行くものなのか。なんかすごい話を読んだ。なんて物語なんだ。結末がやばい、という謳い文句の通りではあったが、この物語の魅力はやはり途中までの展開だろう。全体的には、過去と現在が順番に描かれて最後は追いついて統合されていくわけだが、過去側の展開がすごいわけよ。

芥川賞候補傑作選 平成編① 1989-1995 (鵜飼哲夫 編)

水と空気と太陽はただ!

時代ですかね、なんか時間の流れがゆっくりしている。そして空気が暗い。平成初期ってこんな感じだったか。これで昭和じゃないのか。

現代と比べると、ストーリーの進みが遅い。これ読むのはダルいぞ。逆に、今の小説を平成初期の人が読んだらついてこれないのかも。ハイスピード超展開すぎて。ケータイ小説が進化して今があるのかも?

そういう意味では内田春菊だけは疾走感があった。しかし下品な作家だとは思ってたけど、やはり下品なエロ。こんなのをありがたがって読んでいたなんて。

プリンセス・トヨトミ (万城目学)

やっぱ名乗りが熱い話は傑作確定なんすよ。大阪城での、まさかの名乗り。ヤバかった。震えたぜ。これだから小説読むのはやめられねーんだよなー。

その後も熱い話が続いて、かなりとんでもない、良い話だった。大阪こえー。

昔の、いざ鎌倉、みたいなのってこんな感じだったのかな。

同姓同名 (下村敦史)

同姓同名のヤバい殺人犯がいた場合の話。大山正紀、出てきすぎだよ。だいたい少年法が…著者だって書き分けが大変…いやむしろ楽しんでいたのでは。

同姓同名の悪名が人生を狂わせるというのは、ありそうで怖い。悪名と無縁の著名人で考えても、鈴木イチロウなんて何人いるんだか。私ことわたなべはありふれた名前で、下の名前もかなりありふれている(非公表です。書きませんよ? 少しはバレたくないのでね!)ので、同姓同名は多いと思う。その中の誰一人として悪名を轟かせずにいてくれて、心底ありがとうと思った。

卒業のための犯罪プラン (浅瀬明)

いやー面白かったね。大学を舞台にしたことで半閉鎖系の世界を作れる。教授という少し浅ましい権威があり、実家があり、先輩後輩があり、他学部/学科があり…それを利用して作った仮想通貨のポイント経済圏で行われるビジネス。ありそうな通り名。それぞれ、魅力的な人物設計。

こういうのが読みたかったんだよな。そう思った。犯罪プランと言いつつ、犯罪らしい犯罪ではないんだよな。そこも良かった。なんせ学生だしね。

最初の章のフックもいいし、最後の結末も良くて読後感も良い。というわけで全体的にドキドキさせつつもかなり綺麗な出来に仕上がっている。結局これ最初のプラン通りに行ってもハッピーな結末じゃないわけだしね。2年で卒業して働いたところでその先にハッピーはない。

シャーロック・ホームズ対伊藤博文 (松岡圭祐)

つまりバリツを教えたのが伊藤博文で、彼は長州弁で武術と発音したんですな。それが人づてに口伝されるうちにバリツ…何だこの納得感は?(←この本の解釈とちょっと違います)

しかし伊藤博文か。絶妙な人選ではある。そこに大津事件に不平等条約と、すげーことになった。というわけで、とても楽しく読めた。一気読み必至だ。今日もまたオレの睡眠スコアが削られる…

この著者は多作のようだから、機会を作って他のも読んでいこう。

はるなつふゆと七福神 (賽助)

現代に舞い降りた七福神のスペクタクルな救済を描く叙事詩。最初に現れるのが、地味な方の2体というのがいいよね。福禄寿と寿老人て…区別つく人の方が珍しいやつ。初手で出てきていいメンツではないだろう。こいつらじゃ、フックにならねーんだよ。

まあそれはいいとして、全体的に楽しく読めた。良作でしょう。それぞれのシーンの絵が浮かぶのが最近の小説の特徴かな。実写版は難しいな。かなり大掛かりな特撮になる?

物語としては、主人公の成長と、終盤の主人公パワーが圧巻。八面六臂の大活躍じゃないか。オレたちにかかれば、$1+1+1+1+1+1+1$が八福神にも九福神にもなるんだよ! わかったか!!

年収崩壊時代を勝ち抜く方法 やめる (森永卓郎)

2004-2009年あたりに書かれた、みんな貧乏になるけど、幸せになるにはどうすんの、という本。この人はずっとこれ言ってますね。

15-20年経って、どうなったか?

現実になった。

まあこの種の本は、時間が経ってから改めて読んでも新規の知見が得られるものではない。あー20年前はこんな感じだったなあ、みたいな感じで読んだ。昭和か、と思えるような記述も…20年って結構長いんだよな。私はどうにか生きてます。