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山椒の実

恋愛の解体と北区の滅亡 (前田 司郎)

文章がうざい、長々しい独り言を連ねるスタイルのSF。短編の「ファナモ」も悪くない。ただちょっとうざすぎるよねこの独り言。ゴールドジムの下りは本当に必要なんだろうか。そして背景で爆発する扱いの北区が侘しい。北区民はどう思ってるんだろうねーこれ。

まあちょっと本当に、文章がだらだらしすぎているよね。ファナモの話はマジで悪くなかった。このくらいの長さがちょうどいいんじゃないだろうか。

ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女 (ダヴィド・ラーゲルクランツ)

あのシリーズの最新作。著者死亡で終わったと思っていたが、出版社が新たな著者を見つけてきた。ビジネス。

まず疑問に思うのが、楕円曲線でRSAの素因数分解を解けるものなのか? という話。私もこのへん詳しくないんだけど、楕円曲線暗号とRSAは互換性ないと思っていたので、楕円曲線を頑張って素因数分解の暗号を解けるとは思えなかった。まあ割と調べているっぽい著者ではあるから、問題ない記述なのかもしれないが。あとNSAの描写はダン・ブラウンの問題作「パズル・パレス」を彷彿とさせる。こういう人々の描くテクノロジーの記述に関しては割とトンチキな感じもするんだよねぇ。こんなやついねーよ。前著者のスティーグ・ラーソンはコンピュータに関してはここまで破綻せずに書けてたと思うんだが。

超能力のトリック (松田 道弘)

奇術をベースにしたトリックで人を騙す超能力の話。歴史を遡りつつ、色々なトリックを紹介していて、なかなか面白かった。僕は超能力と言えばエスパー伊東だなと思っていて、まあ彼は高能力ではあるんだけど、こないだ引退報道のガセネタで踊ったりもして。

いろんなトリックがあるもんだなぁと思った。そして、騙しのテクニックを考え続けてきた、これまでの人類の歴史について考えてしまう。すごいよね。こうやって人々は進歩してきたんだ。この本自体も初版1985年という、すごい古い本なんだけれども。

ムーンナイト・ダイバー (天童 荒太)

まず立ち上がりの書き込みの量・質を見て、こいつは本格的なやつだったか、と気づいてしまうよね。軽い気持ちで図書館で借りた本。そして最初の印象のまま、このハードボイルド小説はラストまで続くのだ。すげーな。まさしく著者の力量ですね。話の中身はともかく、まず最初に思うのは、こういう文章が書ける人はどういう頭の中身をしてるんだろうね、というところ。それほど良かった。

で、中身か。中身としてはシンプルな話でもあって、天災以外に誰一人として悪人は出てこないし、それでいて悲しさや優しさが絶妙な配分で詰まっていて、ラストへの展開もスッキリして、いろいろなことを考えさせられながらも読後感は良かったです。

ジハーディ・ジョンの生涯 (ロバート バーカイク)

ISの、あの覆面の処刑人、モハメド・エムワジについて記した本。イギリス人ジャーナリストが、エムワジがシリアに渡る以前にインタビューしていたことが分かったので、取材をして本にした。

インタビュー時点のエムワジはイギリスの諜報機関から嫌がらせを受けていて、結婚や就職も邪魔されていた。それで絶望したことも、彼がシリアに渡って処刑人になった一因ではないかという印象を持たせる。実際に多くのムスリムが脅され、スパイとして勧誘されていた/いるようだ。

Fランク化する大学 (音 真司)

大学の掛け持ち非常勤講師を5年間やった著者が、大学の問題について記した。著者は商社で働いていたのだが、ドクター取るために会社を辞めて、そして非常勤講師になった。給料は激減したらしい。

Fランクというとどうしても学生の質という印象が出てしまうのだが、この本は教える側のダメさ加減にフォーカスしている。考えてみれば、まあそりゃそうだよね。高校出たばかりというところからであれば、しっかり教育してモチベーションを与えれば化けるでしょう。首相の名前知らないとかバカにするけど、自分の若い頃の状況を考えてみても、大学入った頃ってのはやっぱり、幼いもんだよね。なんていうか、興味の対象が違うだけなんだからさ。

期待はずれのドラフト1位 逆境からのそれぞれのリベンジ (元永 知宏)

プロ野球のドラフト1位で大きな期待を受けた選手で、その大きな期待に応えられなかった、その後をレポートする。

まず思うのは、ドラ1ってそこまで期待値が高いものなの? という感想。この本で描かれている選手たちはそれなりに1軍での出場もあり、移籍して活躍したり、プロとしてまあまあ悪くない成績を収めていると思う。このレベルで期待外れと言ってしまうのはちょっと違和感を感じた。誰でも知ってる、桑田だの松坂だのダルビッシュだのは特別だとしても、ドラ1なんて毎年12人いるんだぜ。橋にも棒にもかからなくてあっさり解雇なんて奴もいただろ?

マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった (ジョン・ウッド)

まさに本の中の本、とはこのことか。あのスティーブ・バルマーが社会貢献活動に目覚めたらどうなるだろうか…そんな思考実験をするまでもなく、それはこんな感じになるだろう。なんとバルマーの弟子が実際にやってんだよ。

これは本との接点が持てずにいる途上国の子供達のために、図書館を建て続けた男の闘争に関する自伝。元々はマイクロソフトの上級幹部で、バルマーに怒鳴られる日常に疲れ、しかし心酔しつつも、現実に気づき、目覚める。その目覚めは衝撃的だ。ネパールの旅路で誘われて赴いた学校とその図書館。これまで旅人が置いていった、明らかに子供向けではない数少ない本(=難しく長ったらしくて大人の時間つぶしには良い類の本)。しかし希少なものなので鍵をかけられて子供たちが触れることはできない状況。つまりロクな本がなくて、ロクでもない本にすら触れられないのだ。これではどうにもならない。私も思うのだが、書籍こそが知の集積であって、子供時代に書籍に触れられないで立派な大人に育つのは難しい。かくして途上国と先進国の差は開き続けるのだ。現実。そして本を持って戻ってくると約束し、本を集め、それを実行した。実行し続けた。寝る間も惜しみ、カネを集め、そして実行する。

スタジアムの宙にしあわせの歌が響く街: スポーツでこの国を変えるために (天野 春果)

川崎のプロモーションの中核を担う天野さんがノーベル文学賞を狙ったこの一冊。「スタ宙」の略称が定着しつつある? まあノーベル賞にはちょっと遠いかな。でも読み応えのある一冊に仕上がっている。フロンターレサポの多くが知っている顔。誰もが一度は見たことがあるんじゃないかな。

以前は欠かさず通っていた等々力やアウェイにもなかなか皆勤賞とは行かなくなってきたし、趣向を凝らした企画を見て回ることも難しくなっているが、今でも川崎の試合にはできる範囲で駆けつけるようにしている。そんなこともあり、スポーツイベントには割と行っている方だと思うけど、川崎の試合って相当頑張ったなと思える本格的な企画も多いんだよね。その裏側を垣間見ることができる。こりゃ苦労してるわ。スポーツ屋、あるいは企画屋には必読書になるでしょう。思ったよりも低予算でやってんだな、という感想も。そこはこだわっているらしいが。

あなたのセキュリティ対応間違っています (辻 伸弘)

なんだかAmazonの書評で突出して評価が高い書評があることで一部に有名な本。買ってみたけど、話題の部分はまあそういうことだよね、という気がした。そういう個人的な事情に関してはあまり興味はない。

本の中身としては参考になる部分もあるし、専門的な本というよりは読み物として普通の人が読める本なので、私もそういう風に普通に読めた。一点ケチをつけるとすれば、脚注がうざいね。SNS…Social Network Serviceの略、って何回もうざいわ、っていう。最初につけるとか、全部のページのSNSに脚注を書くのであればひとつひとつ「Twitterみたいなもの」「Facebookみたいなもの」「Instagramみたなもの」って感じでずらしながら全部違う脚注にするところじゃないの?