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山椒の実

ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か (エリヤフ・ゴールドラット)

小説じたての教科書、みたいなものか。工場の最適化問題を解く話。長いけど、一気に読めた。かなり面白い。

全体的に見て非常によく考えられているし理論が練られていると感じる。ボトルネックを探す。ボトルネック以外はゴミなので暇になったらちゃんと休ませる。ボトルネック部分は必ずフル稼働。なるほどね。

問題解決が一本道なのは教科書だからか。現実は失敗も多いと思うし、そう都合よくボーイスカウトで事件が起きたりはしない。夫が息子のボーイスカウトに付き合って出かけている間に妻が幼い子を捨てて出て行ってしまうなんてことも、たぶん多くないだろう。子供連れて出てっちゃう、ならあるのかもしれないね。

東大助手物語 (中島 義道)

随分昔に東大助手だった人物が、当時の変な教授にいじめられたことを記した自伝。

うーん、この著者も相当な変人なんだというのは伝わってきたけど、教授も変人。まあ東大の教官なんて変人でなければ務まらないよね。結局教授の理不尽な要求に耐えかねて上の人に直訴して決着をつけるんだけど、学者の喧嘩ってのは学術的にどういう位置にいるかによるんだよね。この著者はカントの研究でそれなりに実績を積んだ優秀な学者という感じの立ち位置で、対する教授は大した実績がなく、地位はあるけども研究している風でもない。

ハダカデバネズミ - 女王・兵隊・ふとん係 (吉田重人, 岡ノ谷一夫)

奇妙なネズミを研究対象に選んだ物語。魅力に溢れている? まあ女王とオスと兵隊と労働者…ハチやアリのような集団生活をする哺乳類…ネズミで、土の中に暮らす。17種類の言葉を使い分けてコミュニケーションを取り、変温動物で、このサイズの動物としては異常な長寿…まあそりゃ奇妙ですよね。著者らが興味を持つのもうなずける。

読み物としての分量も適切で、イラストも良かった。

止まった時計 麻原彰晃の三女・アーチャリーの手記 (松本 麗華)

あのアーチャリーの半生をつづった自伝。この人の人生もかなりのハードモードですね。本自体はなかなか良かった。当事者の文章から、真実をどう読み取るか。

まーどうしてもこの人に何らかの責を負わせたい人がいるってことは知っているが、理性で考えてみようよ。当時年端もゆかぬいたずら少女に何ができたのか。そして、この人にしか見えなかった景色がこの自伝によって明らかになる。

度重なる入学拒否にめげず、裁判を起こして大学卒業までこぎつけた根性には恐れ入るよね。そして母親はクソだな。

刑事ファビアン・リスク 顔のない男 (ステファン アーンヘム)

北欧系のミステリ。まあちょっと後味も良くなかったし、中身もちょっと緻密さに欠ける部分があったように思う。そしてこの無意味な設定はなんなんだ。その設定いる? みたいなのが目立つんだよね。

まあでも文章量も多く、しっかり書き込まれているし、雑さも気にならないレベルなのかも。シリーズ物っぽくもある書き方だけど、これがデビュー作なんだってね。まあ今後に期待できるかもしれないが…読まないだろうね次は。

富士山噴火 (高嶋哲夫)

噴火のクライシス系の小説と言えば「死都日本」。あれは九州の山体崩壊だが、これは富士山。ただ結果だけ見れば九州よりも規模は小さいのかな。それでもかなりのもの。

両方読んだ感じとしては、どちらも自衛隊が噴火対応の装備を持っているというのが前提になっているのが気になるところ。小説の都合で実際は持ってないんだろうとは思うけどね。

あとは記述としてはリアリティはどちらも差はないような気がする。主人公の知り合いしか登場人物に出てこないというのは気になるんだけど(そう都合よく行くわけないよね)。実はこれはシリーズ物で、シリーズの登場人物が普通に出てきていただけらしい。ただこんな災害がシリーズになってたらやばいよね…まあ、暇があったら他のやつも読みます。

犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼 (雫井脩介)

あの巻島が帰ってきた! このシリーズいいですね。

今回は振り込め詐欺+営利誘拐。振り込め詐欺をする奴らが誘拐にも手をつけるとどうなるか。両者は水と油みたいな感じで導入に苦労している感じがあるけど、さすがにこの著者の序盤は素晴らしく引きつけられる。

さらにこの本に限っては結末も綺麗で、読み応えもあって悪くない。犯人側の描写がかなり多く、それも良い。どっちも頑張れーと応援してしまうんだよね。設定的にもなかなかありふれた悲劇の人物で、感情移入してしまう人は多いのでは。「自分も一歩間違ったらこの犯人と同じ境遇になっていたとしてもおかしくない」感が非常に強く感じられる設定なのよね。

仁義の報復 元ヤクザの親分が語る埼玉愛犬家殺人事件の真実 (髙田燿山)

世間を騒がせた殺人鬼に幹部を殺されたヤクザの親分が真実に迫る。すごい話だな。チャクラが開いてるだけあって書くことがすごい。ゾクゾクするよ。

まー書けないこともあったんだろうな、というのと当事者ならではの脚色が入っていることは想像できる。サイコキラーともなるとヤクザをも殺せるもんなんだな、と思った。結論としては…ユンケルが悪い。そして山崎。普通は死ぬよねこいつ。死刑を免れたとしてもヤクザが殺しに行くだろうけど…。しかし本を出してるとかいう話で、ググってみたら確かに出していた。しかもTVとかにも出て、元気じゃねーか。

徳は孤ならず 日本サッカーの育将 今西和男 (木村 元彦)

Jリーグにいるじゃないですか、広島系の優秀な人物たちが。川崎(フロンターレ)が最近までお世話になっていた風間さんとかもそう。

この、東京圏でも大阪圏でもなく、広島。割と多いんです。しかし、なぜ広島なのか? そのルーツとなった人物の伝記。著者があの木村元彦だけあって読み応えも満点で、なおかつ素直に読める。オシム本、我那覇本に引き続いてこれとは…ベストスポーツノンフィクション率が最も高い著者だね。少なくともサッカー系ではぶっちぎりだろう。