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山椒の実

同姓同名 (下村敦史)

同姓同名のヤバい殺人犯がいた場合の話。大山正紀、出てきすぎだよ。だいたい少年法が…著者だって書き分けが大変…いやむしろ楽しんでいたのでは。

同姓同名の悪名が人生を狂わせるというのは、ありそうで怖い。悪名と無縁の著名人で考えても、鈴木イチロウなんて何人いるんだか。私ことわたなべはありふれた名前で、下の名前もかなりありふれている(非公表です。書きませんよ? 少しはバレたくないのでね!)ので、同姓同名は多いと思う。その中の誰一人として悪名を轟かせずにいてくれて、心底ありがとうと思った。

卒業のための犯罪プラン (浅瀬明)

いやー面白かったね。大学を舞台にしたことで半閉鎖系の世界を作れる。教授という少し浅ましい権威があり、実家があり、先輩後輩があり、他学部/学科があり…それを利用して作った仮想通貨のポイント経済圏で行われるビジネス。ありそうな通り名。それぞれ、魅力的な人物設計。

こういうのが読みたかったんだよな。そう思った。犯罪プランと言いつつ、犯罪らしい犯罪ではないんだよな。そこも良かった。なんせ学生だしね。

最初の章のフックもいいし、最後の結末も良くて読後感も良い。というわけで全体的にドキドキさせつつもかなり綺麗な出来に仕上がっている。結局これ最初のプラン通りに行ってもハッピーな結末じゃないわけだしね。2年で卒業して働いたところでその先にハッピーはない。

シャーロック・ホームズ対伊藤博文 (松岡圭祐)

つまりバリツを教えたのが伊藤博文で、彼は長州弁で武術と発音したんですな。それが人づてに口伝されるうちにバリツ…何だこの納得感は?(←この本の解釈とちょっと違います)

しかし伊藤博文か。絶妙な人選ではある。そこに大津事件に不平等条約と、すげーことになった。というわけで、とても楽しく読めた。一気読み必至だ。今日もまたオレの睡眠スコアが削られる…

この著者は多作のようだから、機会を作って他のも読んでいこう。

はるなつふゆと七福神 (賽助)

現代に舞い降りた七福神のスペクタクルな救済を描く叙事詩。最初に現れるのが、地味な方の2体というのがいいよね。福禄寿と寿老人て…区別つく人の方が珍しいやつ。初手で出てきていいメンツではないだろう。こいつらじゃ、フックにならねーんだよ。

まあそれはいいとして、全体的に楽しく読めた。良作でしょう。それぞれのシーンの絵が浮かぶのが最近の小説の特徴かな。実写版は難しいな。かなり大掛かりな特撮になる?

物語としては、主人公の成長と、終盤の主人公パワーが圧巻。八面六臂の大活躍じゃないか。オレたちにかかれば、$1+1+1+1+1+1+1$が八福神にも九福神にもなるんだよ! わかったか!!

年収崩壊時代を勝ち抜く方法 やめる (森永卓郎)

2004-2009年あたりに書かれた、みんな貧乏になるけど、幸せになるにはどうすんの、という本。この人はずっとこれ言ってますね。

15-20年経って、どうなったか?

現実になった。

まあこの種の本は、時間が経ってから改めて読んでも新規の知見が得られるものではない。あー20年前はこんな感じだったなあ、みたいな感じで読んだ。昭和か、と思えるような記述も…20年って結構長いんだよな。私はどうにか生きてます。

川崎警察 下流域 (香納諒一)

川崎でよくある殺人事件。今でもちょくちょく起きるよね。1970年ごろが舞台で、雰囲気がすごい。昭和後期どまんなか。文章だけで絵で見える。照明が暗い。風景が霞んで見える。空気が悪い。まさにそういう時代、しかも川崎深南部。これはアツいよ?

読んで確認、あーこれだよ。闇のフルコースだ。オンパレードだ。期待通りの。警察は肉盾を使って最強殺し屋のアタマを撃ち抜くし、バラバラ殺人とギャングバトルを始終やっていて、公害に差別と水商売、役人の腐敗…人を殺すかラップが上手くなるくらいしか、のし上がる道がないわけだよ、この街はさあ!?

縄文の森へようこそ モリと精霊のおとぎ話 (榛谷泰明)

想像上の縄文時代の物語。民話に残る(?)縄文の風が。スピリチュアル? 縄文を伝えるライフワークに出会ったTVマンは語りかける。歩きながら。ポエムだ。実際、想像で語っているに過ぎない部分も多い。が、職業柄か、活動の中で各国各地の伝承に関して多くの話を集めているのは良いと思った。

自分の認識では、地続きだった頃に大陸側から来て住んでいたのが縄文人で、島になって独自の生活を続けて定住。その後大陸から海を渡って大陸流の稲作中心の生活を伝えたのが弥生人。ニニギの人たちね。混血と駆逐が進み、現在の日本人は多くが弥生系が強いが、アイヌとか北の方は縄文系が続行していた時期が長いので文化的な摩擦がある、というもの。

心 (ラフカディオ・ハーン)

明治の頃の気風をよく伝えてくれる本。時期的には、日露戦争前って感じかな。示唆に富んでいると言える。ような気がする。私は懐古主義ではないし、昔のほうが良いとか、古きに戻るべきとか、そういう気持ちになることはないんだけど。興味本位?

まあ何かしらの教訓を受けて良い将来を作れればいいだろうし。世の中はガンガン良くなっているとはいえ、微調整も必要だろうよ。その学習データとして歴史は良いものだ。

最初の停車場が凄かった。全体の方向性を決める、その決め手になるような衝撃。その衝撃のまま、読み進めることになる。

うちの父が運転をやめません (垣谷美雨)

タイトル通り、田舎の老親が運転をやめてくれないという、小説。社会派?? っていう書きっぷりでもないけど、社会問題ではあるよね。自動運転で解決する、というわけにもいかない時代。まだ。

登場人物それぞれの親子関係を軸に、迫られる選択や希望を描いていく。どうしても離れられない自動車も、人々の断絶を促す存在だったのだった。ではどうする? 答えの見えない問いに、迷える中年男性が下した決断はいかに?

住宅については、確かに都会の住宅は狭い、と思う。長い期間を東京都・川崎市・横浜市で過ごしてきた自分もそう感じている。一人当たり、もうちょっと広い空間があってもいいと思う。古民家はそんなに住み心地が良いものではないんだけど。まあ、そのへんは手入れによるかな。うちの実家とかは…(略)

カラスは飼えるか (松原始)

鳥類の研究者の雑学文集。サルの話に始まって、鳥類、恐竜、そして専門のカラス。なかなか楽しめた。

専門的な話や自伝的な内容かと思っていたけど、一般向けの軽い小話を集めた感じで、暇つぶしの読書にはちょうど良かった。

キリンの話でも思ったけど、分子生物学の方面ではこういうシャレた雑文は書きづらいんだろうな。