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山椒の実

諸葛孔明対卑弥呼 (町井登志夫)

例の「爆撃聖徳太子」の人の出世作(?)。同時代人が戦う。日本人にとっては夢の対決。躍動感がすごい。SF要素が強いかな。SF的な考証がなかなか楽しい。なるほどー、そういう解釈ならありうるなー! みたいな。

というわけで、かなりスペクタクルに楽しめた本だった。こういう趣の物語って、いろいろあるよね。源義経=ジンギスカン説とかさ。そういや長嶋茂雄=源義経=ジンギスカンだったという時代考証放棄の凄いやつも、若い頃に読んだことがあったなー。歴史SFはこういうのだから。

人は、なぜ他人を許せないのか (中野信子)

脳科学者が「正義中毒」に関して記述した本。まあ学術的な本ではないんだろうな。適当に殴り書きしたのかもしれない、と言ったら失礼になるか。もうちょっとエッセイ寄りにした方が読める気がしたな。軽く知識を得るという目的はそれでも達成されたはず。

正義中毒。

うーん、怖いねえ。私も正義に関する本はなんだかんだで好きではあるんだけれどもw、脳が快楽を感じてるんだろうなあ。恐るべき脳の反応。普通に考えて「どうでもいい」ことに熱くなってる人々の滑稽さが、実は中毒症状だったと。

闇に魅入られた科学者たち 人体実験は何を生んだのか (NHK「フランケンシュタインの誘惑」制作班)

NHKの番組の内容を書籍化したもの。だけど、すごい本だった。こういうのがあると別にNHKから救われなくてもいいよなーなんて思ったりする。そういや一人暮らし時代はNHKと契約してなかった日々が長かった。最後の方に地デジになった時にやっと契約したんだったかなw だって当時ってスカパー! 以外ほとんど見てなかった頃だもん。今はDAZNとYouTubeとAbema? 地上波/BSは家族がよく見てるから、いいけど。

むかしむかしあるところに、死体がありました (青柳碧人)

昔話をベースにしたミステリ。まさかあいつがあんなに悪いやつだったなんて! 短編集みたいになってるけど、よく語られる昔話、よくある本格推理のアングルで、一通りのバリエーションはやった感じかな。

まあこれ叙述トリックはどうかと思った。しかしこのフォーマットはいろんなことに応用できるよね。と思ったら続編も出ていた。続編も読みたいなー。別に昔話じゃなくてもよくて、よく知られている物語をベースに推理小説にすればいいんで、範囲は広いよね。

爆撃 聖徳太子 (町井登志夫)

聡耳のあいつ・聖徳太子と小野妹子が飛鳥を、高句麗を、そして隋を駆ける。世界を股にかけて暴れ回る痛快活劇…非常にバカっぽいけど楽しめた。娯楽。

戦う相手は史上最低を争う隋の煬帝だからなあ。一応今は賛否両論あるのか。強大極まりない帝国をあっさり自滅させた暗愚な皇帝だということが知れ渡っているから、読んでて戦力差も気にならないな。

唐突(でもないんだけど)に出てくる十七条憲法で機先を制する技(?)には感心した。

われらはレギオン (デニス・E・テイラー)

スタートレックのファンが宇宙を駆ける機械人(フォン・ノイマン探査機)になって増殖したらどうなるか? それがこの三部作のボブだ。

短い文章で各々の活躍を表現していく。凶悪な地球由来のレプリカントとの戦い、地球人の生き残りとのやり合い、異星人との出会い、アザーズとの決戦…息をつかせぬテンポでさまざまな物語が続いた。詰め込みがすごいね。ともあれ、楽しめたよ。

ただ私はスタートレックの知識が皆無なんで、その点は残念な読者ではあったなあ。

希望の一滴 中村哲、アフガン最期の言葉 (中村哲)

中村哲さんの書いた文章と写真を混ぜてまとめた本。医者が、たくさんの命を救うために治水に取り組む。遠くアフガニスタンの地で、故郷の知恵を使って。

本質的なゴールへの意識を忘れない話で、『ファクトフルネス』にも似た話があったけど、医者とは何か、が問われる話では、あるよね。もともとアフガニスタンは農業国だったのに、戦乱と気象変動のあおりを受けて荒廃、農地を失った人が生きるために武器を取り、何も理解しない西欧人が空から虐殺を降り注がせる。その終わりの見えない地獄の中で医者は多くの命を救うために…

IQ (ジョー・イデ)

雰囲気のあるハードボイルド系の推理小説。登場人物が多くてついていけないやつだな。もうちょっと減らしてほしい。

まあ、人物の描写も深いし、エピローグもなかなかの切れ味があって、なんかシリーズになるような感じですね。状況よりもキャラクターの描き込みに寄っていて、その種のことが好きな人には、このほうが良いんだろうな。計算されている。まー終盤の相方に関しては少しガッカリしたけど。そういうキャラじゃなくなかった? っていう。

第八の探偵 (アレックス・パヴェージ)

あのグラント・マカリスターをめぐる推理小説。罪深い男よ。「あの」って誰だよ…

それはともかく、かなり楽しめたね。非常にこう、工夫が凝らされていて。劇中劇、そして著者グラントへの尋問が連続して。とにかく最後まで目が離せない。読ませる。いやー、いい本を読んだね。どういう頭してたらこういう本を書けるんだろうね。

悪魔と呼ばれたヴァイオリニスト パガニーニ伝 (浦久俊彦)

とりあえずヴァイオリンがとんでもなくセクシーだってことがマン・レイの「アングルのヴァイオリン」を紹介した一節と画像で分かった。なるほど。

それはいいとして、ヴァイオリンという楽器の特質を大いに語ってくれる、大ヴァイオリニストとして歴史に君臨するパガニーニの伝記。真面目な歴史の話でもあるが、記述に勢いがあって面白く読めた。思い入れが強くて知識が豊富な文章ってのは、読んでて面白い。

悪魔云々はどうでもいいけど、健康と衛生の発展というのは人類の歴史にとって非常に重要だということを認識させられたなあ。メチャクチャな医療の時代だったこともあって、信じがたい治療を受け続けた天才が健康を損なって生涯を終えてしまうというのは悲しいよね。もちろん天才でなくても悲しいことだけど。