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山椒の実

大日本帝国の銀河 (林譲治)

第2次世界大戦の直前に宇宙人がやってきたら? というSF。あの「星系出雲」を書いた人だから、凝った設定、手探りの理解、本格的な考察が続く。これも全5巻と長いが、飽きずに読める。

しかし5巻は急転直下だったな。宇宙という設定上、時間軸はバグっているが。

ただこれ、登場人物がちょっと覚えるのが難しいよね。シンプルに数と役割が多いのと、久しぶりの登場が多いので。

スルガ銀行 かぼちゃの馬車事件 440億円の借金帳消しを勝ち取った男たち (木下英治)

最近の話だけど、なかなかすごい話だったよ。

「悪の平行四辺形」…すごいなこの言葉を考えたやつは。四角形でも台形でも菱形でもなく、平行四辺形というセンスが良い。「不動産屋はたいがい悪人」つまり「悪そうなやつはだいたい不動産屋」?

この本は弁護士側のライターが書いたようだけど、主人公となるリーダーの人も自ら本を書いてるみたいですね。そっちを読めばよかったかな。

不動産投資は会社とかによく電話がかかってきてたやつの一味ですよね。都内のワンルームの話が多かったかな。私の頃は日本プロパティとかニッテイ(日経と聴き間違える)とかが多かった記憶が。私は不動産投資には興味がなかったなあ。自宅のためのローンなら組んだが。

看守の流儀 (城山真一)

刑務所を舞台にした推理小説。

刑務官の階級が分かりにくい。「ナントカ部長」はそれほど上じゃないの? 「部長」は結構上の役職だよなこの描写は…みたいな。難しいな。

この本自体は張り巡らされた大小の謎と伏線、その効果がズバッと決まっていくのが気持ち良いというか、すごくいい出来だった。続編があるらしいので、いずれ必ず読む。

狭小住宅 (新庄耕)

城南エリアの中小ブラック不動産屋に勤める若者の話。この物語がリアリティを持っているという事実こそが恐ろしい。この救いのなさは何だ。まさに現代の闇…

私もそれなりに人生経験を経て、優秀っぽい不動産屋に接したことはあるんだよねー。そしてあっさり「殺された」りもした。私は、基本的には一発勝負みたいに思っている。ぐだぐだ考えずに、序盤(というかほぼ「しょっぱな」)にいいと思ったものに決める。どうしても予算以上になりがちな価格については…どうにかなると信じる。自分の稼ぎで。

象は忘れない (柳広司)

2011年の震災と原発事故に関する短編集。なかなかシビれるものがあった。分断と孤立…なんつーか、あの時はいろんなものがぶっ壊れた。その時代の空気が、こういう小説の形で残されるんだなと思った。

同時期に読んだクリスティの同名の推理小説は全く関係なかった。まあ同じ諺を元にしたタイトルなんだろうけど。

盗まれた街 (ジャック・フィニイ)

ホラー系SF。理路整然としていなくて、納得いかない設定が多い。ちょっと自分向きではないな。例えばゾンビ映画みたいなね。ゾンビって設定があるじゃないですか。あんなに伝染しやすく繁栄しか望んでいないのに、動きが鈍すぎるっていう。もうちょっと抜け目ない生物である必要があると思うんだよね。

この小説はそれに近い。まあこの宇宙人は設定がまさにゾンビの亜種みたいな感じだけど、結末までもが納得いかない。この人ただ恐怖小説書きたかったんでしょ、それだけでしょ? っていう印象しか残らなかった。

象は忘れない (アガサ・クリスティ)

ポアロがインタビューで過去の事件をほじくり返して真相を解き明かす話。

途方もないおしゃべりが続いて、多くは無関係なんだけど事実もあって、徐々に真相が分かっていく。ちゃんと読者にも分かっていく構成はうまいなー。あとおばちゃん同士の会話のリアリティも。各人のおぼろな記憶が、重ねていくことでハッキリしてくる。解像度が上がっていくというか。

しかしこの真相も悲しくはある。正解を知っている奴がいる違和感はあった。いちゃいけない法はないんだが。ただ、その人物にたどり着くのも相手から来たってだけだからなー。結局偶然の必然というか。これならポアロじゃなくても、っていう。あのカップルが正攻法で迫ったら、ゲロってくれたんじゃないの?

蒼海館の殺人 (阿津川辰海)

葛城シリーズ。あの紅蓮館の事件から数ヶ月後、奴の実家で起きた恐るべき事件が…

ホームドラマの連続、多様などんでん返し。悪くない娯楽だった。主人公や探偵の苦悩は、強調すればするほど共感するところがなくなっていくのには困った。普通に謎を解けばいいのに。

ちょうど今、私は間取りに興味がある年頃なので、収納すくねーなとか、そういうところも気が散った。

チャイナ蜜柑の秘密 (エラリー・クイーン)

もはや古典のミステリ。作者は最も気に入っていたらしい、ということで読んでみた。普通に面白かった。外さないよね。

なるほどー。途中で読者への挑戦フェーズが用意されていたが、すっかり分からなかったぜ。詳細部分は現代人の常識で解くのは無理があるのかも。大枠は注意深く読めば対応できたのだろう。私はあんまりそういう読み方は好まないんだよなー。別にそこまで先読みする必要はないんだろうよという気もするんだ。まあ、分かっちゃった場合は逆に鬼の首を取ったかのように「俺ここで余裕で分かったしー!」って言うんだけどw