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山椒の実

僕らはまだ旅の途中 (NIRU)

ゲーム動画配信の人気ストリーマーNIRUの、ぼんやりとした自分語りの本。

あーごめんなさい、実はこの人の動画は見たことないんです。家族がこの人の動画が好きみたいで、本を買ったのを横から読んだ。なるほど。

特に感動することもないし、説教臭くもない。素直な言葉が素直に並んだ感じ。物議を醸すような内容は皆無で、読んでて全く不快感がない。さすが炎上対策で訓練されてるストリーマーと言ったところか。

素直な感想としては、自分もこういう文章書いてみたいなーと思った。つまり、「まだスプリントプランニングの途中です」「普通レベルのサラリーマンエンジニアwtnb75の神commitの原点」みたいな。で、子供の頃から若い頃の一人旅の話とか、送ってきた短い人生を振り返りながらぼんやり語るという。

消えた子供 トールオークスの秘密 (クリス・ウィタカー)

小さな街の神隠し事件、目撃されたピエロ、そして…ミステリですね。

あとは、あれだ。「ためつすがめつ」の用法をマスターしたいなと思った。序盤になかなかの頻度で出てきた「ためつすがめつ」。私はこれまで「ためすがめつ」だと思っていた。ググって意味を知る。なるほど…こういう小説でしか使わない表現で、自分がこの語を使うイメージは、ないんだが。英語だと「scrutinize(精査する)」? 初見の語だなあ。

内容は少しずつ読者に衝撃を与えていくスタイル。なかなか狂気的でもあり良かったが、人物の名前が覚えにくい。何度も登場人物リストを参照するはめになった。似た名前もいるし、性別とかも混雑している。だいたい皆さんおかしなことになってるし。

血を分けた子ども (オクテイヴィア・E・バトラー)

SF短編集とエッセイ。全体的には、人間の体がテーマかな。なかなか良かった。とは言え、気持ち悪さはすごくある。昔読んだ、樹上生活するSFを思い出した。なんと言ったか…

途中に挟まれたエッセイを読んで意識したけど、黒人女性なんですね。SF作家は白人男性が圧倒的に多く、今でも非常に珍しいらしい。けど。実際SFには和モノ洋モノの区別はあるし、それこそチェコSF集なんかにも手を出したこともあったけど、性別や人種はあんまり気にしないで読みたいものだな。特にSFというジャンルはそうなんじゃないかと思う。地球の人類は種族としては1つで、人種という区別はそれ自体が科学的なものではないわけだし。その外側に意識を向けるような内容のSFであれば、なおさら。

食べるとはどういうことか (藤原辰史)

若い人との座談会を本にしたもの? かな。小学生から大学生までを相手に京大の先生が指揮を取って、食べるということに関する哲学的なことを語り合う。

さすがにまとまりはないけど、割と面白かったな。大学の先生らしく、いろんな本の紹介があったりして、興味深いものがいくつもあったので、いずれ読む本リストの拡張がはかどったよ。たまにはこういう本もいいよね。

私たちはどこから来て、どこへ行くのか (森達也)

現代日本でトップクラスにやばい奴の本。そういえばおれはAとA2は見たしA3も読んだんだよなー。下山事件のやつも。けっこうファンなんじゃん…あとプロレスのヒールの本もこの人のやつを読んだ気がするな(あるいは違う人の本だったかも?)。良い著者に特有の、醒めた狂気を感じさせてくれる。そういう雰囲気をまとう人物たちがいて、その中で森と名のつく3大人物が森勇介と森達也、あと一人は?(元首相とか?)

そんなことはどうでもいい。この本だよ。生命とは。人類とは。謎だらけの糸をたぐり寄せようとしてさまよう。一線級の研究者にインタビューを続けていく。

火星の虹 (ロバート・L・フォワード)

ハードSF。火星と地球を舞台にした、対照的な双子の兄弟の話。都合の良すぎる設定もあったが、なかなか良かった。30年前にこれが書かれているとは、すごいな。

ちょっとキャラクターが一方的に過ぎないかな、というのはあったが、ハードなSFとしてはかなり出来が良かった。しかし、この本が書かれた頃も私はSFは少し嗜んでいたはずで…若い頃に読みたかったな。

この部屋から東京タワーは永遠に見えない (麻布競馬場)

あの本ですね。Twitterのタワマン文学系というか、東京と慶應のすごい人ね。(←っていう紹介が合ってるかどうかはアレだけど)

熱心な読者でもないので、どれが書き下ろしかはよくわからない。前提知識がなくても楽しめるけど、紙の本にすると不自然さはあるかもね。段落の長さとか。

最後の方の東京の土地を毒舌で語り続けるところで唐突に自分の家の近所の話が出てきて笑ってしまった。慶應なら東急線で川崎市が出てきてもいいだろうと思ったんだけど、そこでオチに使うかな。俺たちのホームタウン、新丸子を。川向こうだと思ってバカにしやがってw

みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 (日経コンピュータ)

当時たいへん話題になっていた、MINORIの本。魔境ですね。ハラハラドキドキ、ワクワクが止まりませんね。

みずほに送られてた人っていうエンジニアも見たことがありますけどね。規模を考えると、この業界でみずほのアレと関わったことがある人を一度も見ない、ってのが逆に珍しいのかもね。まあ、思い出したくないっていう雰囲気は感じましたが。みずほ帰りの男は自分からそうとは言わないもので。

なぜそこまで難易度の高い仕事になってしまうのか。コンウェイの法則を顧みるまでもなく、組織の編成がおかしいんじゃないか? という推測は当然出てくるわけだが…そしてその問題点が改善されたという記述はこの本にはなかった。