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山椒の実

辞書になった男 ケンボー先生と山田先生 (佐々木健一)

新明解国語辞典と三省堂国語辞典。両巨頭はかつて同じ辞書を作った仲の同僚だった。二人の男が袂を分かつ時、奇跡は起きる。お前が辞書になるんだよ!?

NHKの番組を本にしたシリーズ。毎度のNHKっぽさがあるが、まあ読みやすいし取材もNHKらしくやってるから、そんなに嫌いじゃないですね。お金と人が潤沢だからなあ。

しかし数々の辞書の著者というか編者、監修者として有名な金田一さんが名前貸ししてただけなんて、ちょっとしたショックですよね。良くない商習慣だと思う。欺瞞だ。もっとこう、顧客を騙す行為に慎重にならなければ。私も金田一京助と春彦はとんでもない偉大な(イカレ)辞書マニアの学者親子だと思っていたんだ。その実態がこれか。このザマか。

蹴りたい背中 (綿矢りさ)

この本のためにkick backを作曲したやつは誰だ。

しかしまあこのタイトルは、部屋の中で一人シャドーキックボクシングしたくなる、その欲望が抑えきれないよね。キックキック、左右に上下に打ち分けて! 続けて! 休まないよ!!

しかしタイトルとか紹介文は知ってたけど、こういう話だったとは。なかなかな感じだった。つまり感想としては…こいつ「蜷川」の字くらいは書けたほうがいいね。もう高校生なんだから。自覚を持って!

いつかパラソルの下で (森絵都)

相川のヤスというローカルヒーローが撒き散らした騒動? エキセントリックとも言える厳格な父親が死んでから起きたあれこれ。なかなか良い物語だった。最終的には、イカイカ祭りに持ってイカれた。

あれだね、構図としては私が語りはじめた彼はに近い。あの本もかなりの良作だったなあ。ドキュメント寄りなら、ネット右翼になった父か。

本書の方は、兄弟の距離感が良い。親の人生なんて、よく分からないんだよね。死者ならなおさらだ。

出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記 (宮崎伸治)

英語の本を日本語に翻訳する翻訳家が遭遇したトラブルの数々。ベストセラーも持っているし、多くの本の翻訳、著書も多い。主にビジネス書の系統かな。優秀な方だったんでしょうね。

そして翻訳業から足を洗うに至った経緯が描かれている。厳しいもんだね。単独で本人訴訟やった話はかなり凄かった。これでは精神が削られるのも道理だ。終盤はどうにも壊れていく過程がよく分かる。これは書いてて辛かったかもしれないね。まるで魔境だ。

かがみの孤城 (辻村深月)

名作だった。ストーリー、登場人物、文章のうまさ。圧巻の展開は度肝を抜かれ、そして震えた。こういうのがあるから読書はやめられねーんだよなー

まさかの異世界宝探しリーグ。girl in the mirrorのシーズンを通してどれだけのお宝を集められるのか。しかも中1とは。若すぎないか。中学生ってこんなに悩みが深いものでしたっけ? 私が幼かっただけかな。のほほんとボンヤリ生きていたような記憶があるが、この記憶も偽物を植え付けられたものだったりして。

ある誘拐 警視庁刑事総務課・野村昭一の備忘録 (矢月秀作)

被害者との接点なしの難事件に、久々の現場に出る。現実世界でも、虚構世界でも、なかなか成功しないよね、誘拐って。作中にあるようにランサムウェアのほうが成功率が高い。まあその場面は、だいぶ非現実的な描写だったが。

描写を見るに、身代金の受け渡しを考えると犯人を捕まえるのはイージーだと思った。シンプルにビットコインでも要求すればいいのにな、という感じがする。やっぱ時代はマルウェアだよな。物理人間の誘拐なんて割りに合わないよ。

はじめてのガロア (金重明)

流れ星のような伝説的な数学者、ガロアね。GFと言えばガロアフィールドだよね。計算機科学でもお馴染みで、RAID6のQパリティとかでも出てくる。普通のパリティでもそうなんだけど、XORってだけだとありがたみがないからなぁ。

それにしても、これを17歳から20歳まででやってのけて死んでいくなんて、すごい人生。20歳で死ぬのはなかなか勇気のいることなんだよ。オレも死ぬ時に言いたくなった。私の場合はすでに20歳はだいぶ過ぎたが。

きみはサイコロを振らない (新名智)

タイトル出落ちのような開幕に度肝を抜かれながら。まさか本当にサイコロを振れないとは。思わんよそんなこと。普通は比喩表現だろ? いやむしろそこは、振れよ!

量子の話は三体〇からの続きとしても読める可能性がある。量子将棋なんてものがあるんですねえ。思わず探して遊んでみたり。

倉田秋なんてガンバにいたサッカー選手かと思ったらあだ名だった。そして死の香りを漂わせすぎた主人公が、人生という名のクソゲーを舞う。

うーん、なんかかわいい女の子たちに囲まれた主人公が、勝手に友人の死を納得するみたいな話になっていたのはどうかなと。ややこしい育ちの文系の女子大学院生というのも、かなり攻めた設定で現実感が薄いんだよな。総合的には、もののけ姫でアシタカを主人公に持ってきた? みたいな話だった。謎解きも独りよがりで、ラストもあざとい。設定上、こうなるのは分かってたんだけどな。こう、ひねりもなくやられると。

名探偵の生まれる夜 大正謎百景 (青柳碧人)

近代日本の人物や故事を元に探偵物語が繰り広げられていく。この作者はこういうの好きですよね。持ち味を存分に発揮した作品が続く。中村屋のボースで開幕しつつ、ラストの衝撃もしっかり確保。これは期待できる。思わずWikipediaを読みふけってしまう。なるほど史実ベースでひねりを加えて、こうなるのか。新解釈というか。

まあ、そういう話です。この著者らしいあっさり感。意外な悲劇も起きないし、爽快感もあり、こういうのも悪くないね。ただ、もうちょっとネットリ書いたやつのほうが好みというひともいるだろうね。

戦力外捜査官 姫デカ・海月千波 (似鳥鶏)

活躍の余地がなさそうなキャリア警察官とカラテマンの刑事が西東京を走り回って犯人を追い詰める。最後は東京駅から皇居に突入(してない)か。割と楽しめた。

個人ブログとかもう死に絶えてるんだよなあ、と思うシーンもあった。なんに殺されたのかは議論の余地がある。まあオタクならしょうがないか、などと納得するのだが。あと今は自動制御のドローンだから、犯人もこんなことする必要がない時代になった。犯罪もはかどる技術革新。