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山椒の実

お天気ハンター、異常気象を追う (森さやか)

アルゼンチン生まれにより外交官になれずに気象予報士になった人物…というだけでお腹いっぱいだけど、かなりの才人が異常気象を解説する本。

博識のご隠居様が書いたかのような文章が並ぶ。次から次へと。なかなか凄かった。豊富な知識量を感じさせる、流れるようなエピソードフロー。基本的な数字も豊富で、内容もわかりやすい。

こりゃー人類は滅ぶね。だいたい、人類は傲慢なんだよ。謙虚に行こうぜ。

ロウフィールド館の惨劇 (ルース・レンデル)

洋物小説。モダンホラーに近いのかな、これは。結論から始まって、狂気が場を支配していく。ゾクゾクするね。なかなか最高だったよ。気づいたら読み終わっていた明け方。翌日仕事ある中年がやることじゃなかったな。

あんだけの闇を抱えた人間と設定しても、とんでもない狂人と組まなければ成し遂げられない蛮行だったか…という感想を持った。シンプルに、暴走した狂人に反応しただけじゃん、と。反応の仕方が怖かったわけだけれど、比較で言えば、狂人の方が怖いよね。

美しい日本の歴史 (吉川英治)

歴史漫談みたいなエッセイ集。著者自体がすでに歴史の中にある。なかなか楽しく読めたな。

しかし吉川英治の作品が無限に無料で読めちゃう時代。なかなかすげーよな。三国志あたり、行きたいところよ。ただあんまり長いのは時間の溶け方がやばすぎるかもなあ。まあ適度な分量のやつから行こうかな。

孤島の鬼 (江戸川乱歩)

子供の頃に読んでかなり強烈な印象を受けた怪奇的な小説。青空文庫であったので改めて読んでみた。

子供に読ませていい内容じゃないな。印象に残るのも頷けるくらいには、面白かったけどさ。まー当時、子供向けに少し改変があったのかも。

あとどうでもいいけど、先祖から受け継いだような、結婚前からの資産は共有財産にはならないんじゃないかな。戦前の制度は知らないが。まー妾腹の子の扱いは違ったんだろうな。

もし現代の話だったなら、どう書くだろうか。障碍者の描きかたからして、無理だけど。

おっさんの掟 「大阪のおばちゃん」が見た日本ラグビー協会「失敗の本質」 (谷口真由美)

ラグビー協会の理事に担ぎ出され、プロリーグ創設に尽力した挙げ句に追放された著者による暴露本?

普通に面白かった。ヤバいねラグビー。私がラグビーの試合を見に行ったのは1度か2度か…とにかくその程度だが、そんな私の偏見によれば、ラグビー人というのは選民意識が高いというか、横浜市民のマリサポだけしかいないみたいな世界? という印象だ。

競技としては実力が試合結果に現れやすく、偶発性が少ないというのが一般的な評価か。それが影響しているのか、どうなのか。

法医学者の使命 「人の死を生かす」ために (吉田謙一)

以前に読んだ本だと画像診断を増やしたらどうか、という感じだった。この本は解剖してきた人の著書だけに、ひたすら解剖。

死因をちゃんと調べましょうよ、という方向は共通か。

しかし、医療事故に関するものが多いね。医療事故は基本的に免責した方が幸福な社会を築けるんじゃないのかな。そのかわり、ちゃんとポストモーテムやって原因を分析、共有して再発を防ぐ。責任追及してなくなる事故は多くない。

と、いうのが現代科学技術の常識だ。

だからしっかり死因を明らかにするべし、という方向に関しては非常に納得感がある。犯罪性を持たせるにしてもそうでないにしても、まずはそこからだよね。

ワニと龍 (青木良輔)

龍は実はワニのことだった、という歴史考察をフックにして、ワニについてとんでもない知識量を持ったワニマニアが語り続ける。絶え間なく。恐竜との関係とその考察とか、かなり深いものがある。なかなかすごい本だった。学術的な面をしっかり出しつつも、テンポも良い。

わーにの、おとうさん、わーにの、おとうさん、おっくちっをあっけってー♪

ドレスデン・ファイル 魔を呼ぶ嵐 (ジム・ブッチャー)

現代シカゴのハードボイルドで、アクションで、ファンタジー。家賃に悩まされ、警察に睨まれ、ヤクザに殴られながら謎を解く。これはいい話だなあと思って。

いきなりの魔法使いを自称してそのように振る舞う主人公だが、途中までなかなか魔法を使わない。これはラストで一発魔法を決めるだけで、その過程は普通に推理小説なんだと早合点していたんだけど、途中からバンバン魔術を決めるようになっていった。そうでしたか。

シリーズになって、続編も出ているらしいな。割と良かったけど、謎解き要素が薄れて魔法対決になってしまったのでちょっと趣向が変わったかなと思ったので、続きを読むかどうかは分からない。気が向いたら。

寄生虫館物語 (亀谷了)

目黒の寄生虫館の創始者が平易な文章で語りかける。

寄生虫館、こないだ行ったんだよね。もう1年くらい経つか。なかなかユニークでそそられる施設。実際、かなり面白かった。コロナもあってあんまり人はいなかったし、私設の博物館で研究所だから、こじんまりしていた。ただ面白さはあった。そういえば、来日したビル・ゲイツもここを訪れて楽しんだらしいというニュースも見たな。

この本はそんな寄生虫館がどうやってできたのか、寄生虫とはどんな存在なのかを示してくれる、いい本だった。読んでよかった。とりあえず今後できることは…野菜は洗うし肉は加熱して食べよう。そしてキタキツネには触らない。