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山椒の実

巨神計画/巨神覚醒/巨神降臨 (シルヴァン・ヌーヴェル)

いいSF。逆関節ロボ。ロマンの塊のような存在。その逆関節の問題を物理で解決するやつがいるとは思わなかったな。構造上は、つま先立ちの長さ調節で解決できると思うんだけどな。人類の適応能力は凄まじい。SFだけど。

衝撃の展開が続き、続編への期待を持たせる部ごとのラスト、適切な分量の3部作。

インタビュー記録という構成も凝っていて、謎も作り込まれている感じ。退場すべきでない人が思いがけず退場していき、しかし物語は動いていく。一気に読めて、良い週末を過ごせた。

普通の若者がなぜテロリストになったのか (カーラ・パワー)

なかなか、示唆に富んだ本だった。主観強めだが、読み取れることは多い。急進化って言うんですね。分断が悪い。奴らと俺たち。いろいろなものを分ければ分けるほど、危険が増える。悪者の多くは生粋の悪者ではないというわけか。あのジハーディ・ジョンもそうだったのだろう。

教育と希望が大事なんだろうな。若者が、自分の人生のロールモデルをどこに置くか。みたいな。

あの頃な (マンボウやしろ)

コロナ小説の頃な。短編集みたいな感じだけど、連続性も多少は…著者は主にラジオの人なのかな。まあ広く浅く、みたいな本だったな。

たとえばこれを10年後に読んだら2020年代前半の空気感が伝わるか、と思うとそんなでもないような。まあそんな感じ。文章は読みやすいけど。

しかしこの心肺停止シリーズ(?)は、どうなんだ。汎用性のあるオチ? 議論の余地がある。

美貌格差 生まれつき不平等の経済学 (ダニエル・S・ ハマーメッシュ)

何気なく書いたと思われる、「差別が社会に利益をもたらすことはない」という言葉が印象に残った。これはブサイクを差別することは許されんよなあ。

美しい人とブサイクな人に関して収入の差があるということを調べ上げて、その上でどうするのか、という本。いろんな要素を排除して、見た目の美しさの要素だけで結構な収入の差が出ているらしい。それで、障碍者を守る制度があるように、いずれブサイクも保護の対象になるのでは、と。

なかなか面白い本だった。文章はやたらに長い。もっと簡潔に伝えられると思う。さっきから何度も同じこと言ってない? って。

まとまらない言葉を生きる (荒井裕樹)

障害者の運動家に詳しい文学者が言葉の刃を語る? 悪いがウチではチクチク言葉は禁止されているんだ。

誰しも基本的人権は持つべき。でも実際は金次第という面はあるね。23区内に庭付き一戸建てが基本的人権だとすると、だとするなよ、という声が聞こえそうだが、その環境はまさに金次第なんだよね。人権をどのラインに設定するか。そこの齟齬があるから対立が起きるんだと思う。世の中のラインは低すぎる。私はハイプレスハイラインを志向する。我々の社会ではそれが許されるはず。

自由研究には向かない殺人 (ホリー・ジャクソン)

女子高生探偵が颯爽と殺人事件を解決だ。と書くとふざけた内容だと思ってしまうのだけど、真面目に若者向けミステリだった。しっかり書かれていて、かなり面白かった。若い頃に読みたかったな。

色々と悲しいことが起きるのはちょっときつい部分もあるな。犬が死ぬのは受け入れられない。死ななくても物語は成立したはずだ。

パンドラの匣 (太宰治)

病棟の文通物語。結核で隔離かー。元は新聞小説だったのかな。長い在宅が明けて通勤生活が始まったから、電車でこういうものも読んでいる。

いろいろすったもんだがありつつ、まとめた感じ。分量もちょうどいいし、普通に悪くないのではと。終盤の高速展開は小説っぽい。まあ、小説そのものなんだけどね。人の心の動き。

文通相手の友人が聖人でしたな。

約束してくれないか、父さん (ジョー・バイデン)

現在の米国大統領が、苦難を受けた経験と出馬を断念した(ヒラリーが民主党の候補になって、本戦でトランプに負けた)経緯を記した本。かなり良く書けている。まあ自分の実績自慢もあり、家族自慢もある普通の政治家の本という面もあるわけだが、悲劇の人だから山場はすごいことになっている。

それで、序盤から、えー、こいつが死ぬのかよ、と思って気が重かったが、最後まで読んだ。

エルトン・ジョンのくだりと、ウェイ・タン・リューのあたりはとりわけヤバかったな。泣ける。あとは、オバマ(大統領)の熱さ。なかなかできない。

むき出し (兼近大樹)

お笑い芸人の自伝的小説。今般の詐欺で捕まったやつ関係で名前が出てきた。内容はかなり凄い。北海道なまらやばい(?)

淡々とリアルな描写が脈絡も薄めで続いていく。この経験でお笑い芸人に行くのか…芸能人の自伝は何冊か読んできたけど、かなり上のランクに入るねこれは。

街への鍵 (ルース・レンデル)

最初の公園のやたらにねちっこい描写を読んでってゲンナリしそうになり、多様な登場人物を覚えるのに苦労しつつ、群像劇のような形で物語が進む。だんだん視点となる主要人物が分かってストーリーが動き出すと、楽しく読めていく。

なかなかこういうのもいいですね。ただ序盤で心が折れて読めなくなる恐れはある。恐れたものの、前の悲劇がなかなか良かったので、私は信頼して読み進めた。

ともかく、殺人犯が捕まってよかったな。死体の発見状況はそれぞれ巧妙なトリックかと思ったけど、最終系としては筋肉トリック(?)か。力づくか。