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山椒の実

実力も運のうち 能力主義は正義か? (マイケル・サンデル)

「トロッコ問題おじさん」と呼ばれる可能性があった著名な教授による本。かなり話題になっていた。

学歴面でもそうだが、宗教的価値観というか。この人が引き合いに出すのはキリスト教だけど、我々も因果応報とか、そういう言い方がある。良いor悪い偶然をそれまでの行いと関連付けて評価することの是非。実際はランダムな偶然に過ぎない。偶然の勝者が正義を称して優越に浸るための理論。理論通りのような優越感。それが問題になる。謙虚であれ、と。

陸橋殺人事件 (ロナルド・A.ノックス)

「10戒」のノックスですね。古典的名作ということで、読んでみようと思った。今まで読んでこなかった、著名作家。読んでみると、割とふざけた話なんですね。ノックスってこういうのが好きなのか。とにかくセリフが長い。

冒険あり、勘違いあり、時刻表のトリックあり、暗黒日記あり、カーチェイスあり、ドロドロの愛憎劇あり、宗教論ありと多くの要素をはらんだ作品だった。登場人物も多すぎず、程よい謎、現代的でもあり、古典的でもある。改めて並べ上げていくと側面が多いな。

パンク侍、斬られて候 (町田康)

タイトルで勝確の時代劇。時代劇っつーか、まあ時代劇か。時代設定があるようなないような劇ね。冒頭で殺害された罪なき民草に涙を禁じ得ない。そのラストは美しい。

不思議に引き込まれる支離滅裂なセリフ。意味が分からないが一字一句読めてしまうリズム。書くも狂気、読むも狂気? といった様相だった。ここまでやっちゃうと映像化は無理だよな。…と思ったら映画化されていた。ちょっと頭おかしいね。

日本庭園殺人事件 (エラリー・クイーン)

異国情緒にあふれたニューヨークの日本で起きた事件を解決していく推理小説。日本っぽさがあらわれている。なかなかの解像度だ。途中で評価がガタ落ちする人物が悲しいな。途中まですごくいい人が…化け物扱いかよ。少ない手がかりであやふやな推理を当てていくクイーン氏。

ヒロインは幸せでありながら、かわいそうな感じになったよねえ。その辺の二面性も読む人と感傷的にさせてくれる。

社史の図書館と司書の物語 (高田高史)

川崎にある県立図書館で社史を集めている。その話。どこで読んだんだったかな。まあ、場所は知ってるんだけど、県立図書館は収蔵する本が自分向けとは思えないラインナップなので貸出カードも作っていない。社史ねえ。これは面白くも役に立つ活動だと思った。こういうのが公立の施設のあるべき姿なんだよ。

社史編纂室なんて、左遷の代名詞? みたいな勝手な印象も受ける文字列ではある…んだけど、会社のことを歴史に残す活動には重要性もある。

息が詰まるようなこの場所で (外山薫)

おーし、みんな、息詰めてこーぜ!!

あの英傑・窓際三等兵さんが別名義で物理本だ。それがこの本、タワマン文学の金字塔。これはもう、事件ですよ。「この部屋から東京タワーは永遠に見えない」と同時期に発売されて話題になったような気もする。

とある湾岸のタワマンを舞台に繰り広げられる群像劇。どこかコミカルで、どこか物悲しくて、というやつね。普通に生きる難易度が高くて。全員がそれぞれの地獄を生きながら、希望を見つける。子育てという正解のない作業の連続があり、格差社会を生きる大人にも心情がある。

私も普段はちょっとタワマンをバカにしているところはあるんだけど、土地代が異常に高くなって空間効率を求めると、ああなるんだよなぁ。地下掘ったら生活には向かないし工事も難しくなる。したがってスペースを上に求めることになる。狭小住宅か、タワマンか、長時間移動の不便か。いずれも天国ではない。

刑事何森 孤高の相貌 (丸山正樹)

これはスピンオフなんですね。ワケアリげな背景が語られながら、ハードボイルドな刑事が事件を解決する。それぞれの事件では障碍を得た人が大きな役割を担う。

キャラクターの魅力とプロットがちゃんとしているから安心して読める推理小説になっている。質は高いし、空気感がいいよね。この人のシリーズ、これから読んでいこうかな。そう思った。

臨床探偵と消えた脳病変 (浅ノ宮遼)

医療ミステリ? という区分でいいのかな。診断をつけて事件を解決していく。主人公の視点がなくて、周囲の医師が謎を解こうとしていい線いくんだけど、最終的には主人公が解決してしまうという。

専門用語は分からないながらも、練られている感がしっかりあって、論理も理解できる。だから読む楽しさがある。かなりの良作だった。

ハンガー・ゲーム FINAL レジスタンス/レボリューション (映画)

ついに完結。けっこう長かったな。そして、けっこう死んだな。でかいネコが死ななくて良かった、とすら言えないほどに死んだ。人口減少社会で、ちょっと命が軽すぎないか?

1作目からそうだけど、超自然のゾンビみたいなのが出てきてキルしていくのはちょっと萎えるなあ。あれがありなら兵士なんていらないじゃん。

あと、割と不自然に感じる描写も多い。映画だからかな。まあいいけど。

ファミコンの驚くべき発想力 (松浦健一郎, 司ゆき)

ファミコンについて語る本。ハードの特徴から始まって、そのハードで戦うためのソフトの作り。当然だが、今考えると凄い世界だよね。計算機の技術が進んで、いい世の中になったものだよ。開発者にとっても、利用者にとっても。

内容は昔の計算機に明るくない人でもわかるように書いてある。実際に対象読者に理解できるかどうかは不明だが、変なことは書いてないように思えた。

自分のことを言えば、小学生時代にFamilyBasicに触れたことが今の仕事(ソフトウェアの開発者)に進む最初のきっかけになった。そのため、この本の内容にはいろいろと懐かしく思う部分が多かった。