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山椒の実

朝ごはん (川上健一)

朝が好きな女性が主人公の小説。こんな現実感がない浮世離れしたやつにどうやったら感情移入できるんだろうか。

不意に始まる早朝から人数の読めない食事会、しかも薪や炭で作るなんて地獄のようなシチュエーションで無邪気に楽しむ描写を見て、私は何を思えばいいのか…これシャケ足りるわけねーじゃん? コメは、パンはこの人数に足りるくらい持参したのか? まさに化け物級だ。しかも、そこからは怒涛の展開。殺人事件も起きるし!

つまりこれ「読んだ」くらいの感想しか書けねえ…異様な世界の異様なセリフがひたすら続いて、恐怖をも覚えた。もしかして、これが異世界転生ものってやつか? そう考えると、結構怖かったな。

歴史の本棚 (加藤陽子)

新聞の連載で近現代史に関する名著を紹介したものを本にまとめたもの。のっけから全5巻だか6巻だかの長編従軍小説を出してくるのはもう、読ませる気ないだろこの人。そんな時間は残されていないなあ。いや、もっとヒマになればあるいは?

本体の論ではなく書評で、しかも新聞連載でおそらく字数も決まっていたんだろう。1つ1つの紹介は短くまとまっていて、すっきり頭に入ってくる。そこは良かった。

まあ、軽そうなやつはいくつか読んでみるよ。読みたいリストには、何冊か追加された。はける間もなく追加され続けてきた、長大なリストに。

さかなクンの一魚一会 (さかなクン)

昨年、館山に行ったときにさかなクンの展示があったんです。無料だったので入って鑑賞させてもらいまして、なかなか楽しかった。いいモノを見せていただいたと。それでこの本を読むことにした。館山在住なんですね。いいところだ。

しかし魚屋とか寿司屋、水族館とか魚に関する職業も一通り試して向いてなかったなんて、意外だったな。魚に関してはスーパー高校生だったのに、魚のことにしか興味を持たず勉強してなかったから魚系の大学も行けなかったなんていう話も。

宇宙に花火を。 (松井尚斗)

YouTuberの、YouTuberによる、YouTuberのための小説。まーそれだけなんだけど、なんで見たこともないYouTuberの本をオレは読んでいるのか…視聴者でない一般人中年男性が読むに耐える内容なのか。

…と思っていたけど、読んでみると、なかなかいい小説を書くじゃないですか。すごい。普通に引き込まれて眠れずに一気に読んでしまった。思った以上に心が動かされた。こういう本を読むのは気分がいい。

それにしても、GWなのに、読み急いだなー。ペース配分をちょっと反省するくらいに読んでしまった。残り時間は何を読めばよいのやら。

思考のトラップ (デイヴィッド・マクレイニー)

31,32,33のカタルシス、誤情報効果、同調あたりが印象的だった。

フラストレーションは無理に発散させないほうが消えやすい。そうだったのねー。台パンして何かが収まるわけではない。無意識に嘘の記憶を作ったり、権威に良心が負けたりする。

…というように、心理学上のいろいろな意外な挙動を説明していくのだが、似たような話も多くて、けっこう重複してるんじゃないかと思った。48は分類にしては多かった。しかし、自分の心ほど信用できないものもないね。

司政官 全短編 (眉村卓)

短編集ですよ。時系列で並んでいる感じで、作中世界の変遷が感じられる。楽しくも、物悲しい。それぞれの話の長さが、ちょうどいいように思った。

最初の方の話が良かったな。後半はだんだんキツくなってくので。

無理を押し通して、それを続けることはできないんだよねぇ。

消滅の光輪 (眉村卓)

司政官シリーズの長編。少ないイベント、長い独白、限られた人々との会話。

このシリーズ初めて読みましたが、面白さはありました。設定も魅力がある。ただ、思考をたどる文体がどうも気にかかるという面があるかな。短編の方が楽しめるんじゃないかと思う。

エクソダス症候群 (宮内悠介)

鬱のようなものが薬によって克服、根絶された世界で、精神科医が…というSF。それでも減らない自殺率。舞台がいいですね。火星唯一の精神病院。これだよ、これ。本格的な書き込み情報量、不安定な主人公、人類の精神病治療の歴史をなぞり、そして…

いいSFを読めて、気分がいいよ。こういう本を読みたかったんだよ。

これが本当の「忠臣蔵」赤穂浪士討ち入り事件の真相 (山本博文)

浪人繋がりということで、日本史上で最も有名な浪人たちの本も読んでおこうと。

資料をもとに、あの事件を解き明かす。私は昔住んでいた場所が大石の基地や吉良の領地に近かったりするんで、何かと気になる事件ではあった。創作が氾濫して久しい状況で、創作と史実を分類して評価を加える。

よくまとまっていたと思います。当時の武士の価値観も理解が進んだ。喧嘩両成敗。

やはりこれは浅野が悪いな。その短慮に加えて、斬りつけておいて殺害できない不始末。せめてもう一太刀! それで家来に命賭けさしてケツを拭いてもらうなんて。それはともかく、浪士の立場による考え方の違いとか、吉良の若旦那の評価とかね。立派なやつも報われない。そんな世の中。

自分の中に毒を持て (岡本太郎)

言いたいことも言えないこんな…

川崎が誇る伝説の一人、岡本太郎。その代表著書の新装版の文庫を読んでみた。実績上、どうしてもアーティストという立場が強調されがちだが、彼に関しては思想家でもあるのだ。芸術ってこういうことなんだよなー。

なかなかいいことが書いてある。この人の文章は常に本気だし、小賢しくなくていいよ。芸術ってのはこうじゃなくちゃね。

こういうマジな本は知恵を持ち始めてひねくれたティーンエイジャーに読ませたいな。自分も読んで良かったと思う。そして真似して妙なことをし始めたら、その時は温かく見守りたい。