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山椒の実

B.LEAGUE誕生 (大島和人)

バスケのゴタゴタを収めた川淵さんの豪腕と活躍を記した本。私はbjリーグ見に行ったり、東芝の地元で見に行ったりしていたので、関心はあった。

反発はあったようだが、Bリーグのホームアリーナの条件とかはよく分かる。観客は聖地というか、拠り所というか、本拠地ってのはそういうたぐいの存在であって、ホームがあちこち転戦して出前のような状態にしてしまっては応援の継続が困難になるのだ。たまになら我慢できるんだけど。そこに、体育館の管理者じゃなくて首長に話を通せばいいよ、こうするんだよというノウハウが経験者からもたらされれば、動き出すのは必然。というあたり、有明好きだったなーと思い出して読んでいた。とどろきアリーナもいいんだけど。

記憶翻訳者 みなもとに還る (門田充宏)

過剰共感と珊瑚たちの物語。ビギンズナイト?

後半は謎施設でキャピってるだけだったが、前半は悪くなかった。前のやつの方が良かったな。全体的には、あんまりパッとしなかったような気がした。期待値が高すぎたか。途中で提示された関西弁の謎は、結局なんだったんだろう。

龍の耳を君に デフ・ヴォイス (丸山正樹)

スピンオフと知って、元のやつを読もうと。

しかし、シリーズの途中だったのね…なんか最初から前作のエピソードの続きっぽい記述があって焦った。前作も次作も読まないとな。宿題が増えていく。それが生きる楽しみでもある。

この作品は完成度は高いし、何森も出てくる。言うことなしだね。手話の奥深さが物語によく溶け込んでいた。

エスキモーに氷を売る (ジョン・スポールストラ)

うーん、どうすっかな。売りをどうするか。透明度か、味か、色か、封入物か、造形か…そんなことをぼんやり思わさせられるタイトル。しかし中身はそういうものではなかった。

NBAの不人気弱小チーム、ニュージャージー・ネッツを手がけた著者による、ジャンプスタートマーケティングの話。それまでいたチームとは全く違う最悪な八方塞がりな事情を前に、何をしてどうなったか。弱小は変わらないまま、高収益チームにしてしまう魔法のメソッド。

嘘の木 (フランシス・ハーディング)

hideの曲にあったなー。花はいつしか毒を吐き出し、嘘を語るだろう。いや、調べるとだいぶ違う歌詞だったな…そんな、視界ゼロの海に出るかのような冒頭から、引き込まれてゆく。騙し合い、推理、各階層での生存を賭けた戦い、そしてド迫力アクション。まるで映画だ。

時代設定に影響されながらの進行で、いろいろな思いの渦巻きを感じさせてくれる。

そして、問題の木ですよ、木。こいつヤバいね。おどろおどろしい。こんな植物、どうやって繁殖するんだ、という謎はどうなるんだろう。

記憶翻訳者 いつか光になる (門田充宏)

過剰共感をテーマにしたSF。他者への共感が強すぎて自分の感覚と区別がつかなくなる。そこで記憶を再生するビジネスが実用化されたという世界。

記憶や意識に関するSFで、キャラクターの作りもあって突拍子もない設定と思った。あとモンスター討伐的な話はどうかと思ったが、読み進めていくとしっかり書き込まれている優秀なSFだと分かる。社長をはじめとした登場人物のバックグラウンドもアツいし、ビジネスモデルの構築とかの側面もあるのが深みを増しているんだろうな。

大はずれ殺人事件 (クレイグ・ライス)

マローン弁護士のシリーズ。っつっても今まで読んだことがなかったのだが。酒ばかり飲んでいる、メチャクチャ感のある登場人物群。それなりに謎があって、マローンがしっかり謎を解いていくのだが、ひねりも効いていていい感じ。古典的な秀作と言えるだろう。というわけで割と楽しめた。

登場人物の名前が分かりにくいけどまあ、この種の推理小説として仕方ないのは常のことか。

しかし新婚の奥さんは運転しすぎだ。やめてあげて…

まず牛を球とします。 (柞刈湯葉)

容疑者探偵の話が良かったな。深いような、深くないような。広島の話も綺麗な話ではあった。

タイトルの物理学ジョークはFedora18のコードネームにもなっていたことを思い出す。あれも10年以上前なのか。時の経つのは早いもので。今やredhat系はずいぶん減って、debian/ubuntu系ばかりになってしまった。rpm/yum(dnf)の方がdeb/aptより好きだったんだけどな。それはともかく。

タイトル作の牛球もそうだけど、リアリティのある導入部からの、流れるようなトンデモ展開。私はかなり好きで、これはクセになるかもしれない。